ある夏の情景。
エアコンの効いた部屋でごろごろしていて、ふと、過去に書いた小説のことを思い出した。
新幹線がキンキンに冷えてるのは、人間を腐らせずに運ぶためだ、みたいな感じの短い話。
田舎育ちなので、腐敗は日常的で、実家の庭には生ごみを捨てるコンポストがあったし、友達の家は農家で大きな穴にいろいろな有機物を捨てていたし、道端で死んだ動物はそのまま毛皮と骨になっていった。
夏は腐りやすい。
でも、腐って土に還るのは、けっこう分かりやすい。
火葬って、かなり暴力的なのでは?
強い意志を感じる。
衛生的に仕方がないのかもしれないけれど。
人間を腐らせないよう。
火葬場の甘いにおい。
つかんだ骨の脆さや、硬さ。
お菓子のような。
夏は死に近づく。
子犬を助けるために蹴られた犬は、翌朝死んだらしい。
意図せず虫を潰してしまった彼は、小さく顔をしかめた。
私は黙ってそれを見ていた。
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