『キリスト教とシャーマニズム なぜ韓国にはクリスチャンが多いのか 』K-POPはシャーマニズム(世界の歴史)
副題が「なぜ韓国にはクリスチャンが多いのか」となっており、李朝時代に儒教の一派である朱子学が浸透した韓国で、30%ものクリスチャンがいる(世界でもっともキリスト教化が進んだ)理由を知る日本人は少ない。この本は、その理由に韓国にはシャーマニズムの土壌があるという驚くべき内容なのだ。
韓国には「ムーダン」という職業的宗教者(シャーマン)が「クッ」という神を憑依させ、個人の幸福を祈ったり、病気の治療、死者の供養を行う風習がある。 朱子学が国教とされた李氏朝鮮時代はムーダンが賎民とされるなど蔑視されていたが、戦後に韓国で国家主義的価値観とも連動し、巫俗こそが朝鮮固有の宗教であるという思想が生まれた。 戦後のムーダンは女性が多く、降神巫と世襲巫がある。(刑法で禁止されている北朝鮮にもシャーマニズムはあるようだ)
古代の日本において、人間関係と天気を予測できる人はシャーマンとしてリーダーとなった。卑弥呼がその代表的存在だ。その後、青森のイタコ、沖縄のユタなどのシャーマンがいる。あるいは仏教の一派である密教にもシャーマン的な儀式がある。しかし、韓国ほど日常社会に定着していない。
イスラームにスーフィズムという一派がある。これで有名なのはトルコの観光名物のセマ(スーフィーダンス)だが、白いスカート状の服を穿き、音楽に併せて1時間以上くるくるくるくると回り続けることは神に近づく(合一)の手段のひとつだとしている。同じように神に近づく(合一)の手段で、「アッラーハ!」「アッラーハ!」と休みなく呼び、瞑想三昧に入るもの(ズィクル)もある。イラクのクーファで生まれたスーフィズムは各地に広がり、オスマン帝国時代にトルコで一大勢力となった。つまり、トルコ民族はイスラーム以前はシャーマニズムが浸透していたため、現象的に似ているスーフィズムに強く共感したのだ。
このようにイスラームは、土着のシャーマニズムと融合しスーフィズムを生み出したが、逆に韓国は、キリスト教をシャーマニズムに変化させたのだ。例えば、キリスト教の礼拝である祈り、賛美、説教、献金などは「クッ」の祭次と相応し、祭次をひとつの礼拝とみなしている。シャーマニズムの口寄せは、聖霊を受けて宗教的恍惚境におちいった人が語る異言(イゲン)と似ている。韓国ではシャマニズムが職業、結婚、留学、出国、離婚、事業、健康などの生活全般に深く関わっている。韓国シャーマニズムを最初に受け入れたのは、アメリカ人のジェームズ・スカルゲール牧師で、彼がキリスト教を土着宗教に昇華させた。(1888年から40年間)
そして著者は、韓国のシャーマニズムの儀式は音楽の伴走でリズミカルに行われるが、K-POPの激しい歌や踊りはこれを引き継いでいるというのだ。韓国における統一教会の浸透もそこに理由がある。