【感想・紹介】あなたのクラスはノアに選ばれました!「さすらい猫ノアの伝説」
こんにちはモノノケです。
今回読んだのは「さすらい猫ノアの伝説」という本です。
以前、Twitterで黒猫について好みかどうかで議論されていたことがありましたね。
どちらかといえば不吉といわれることの方が多いイメージの黒猫ですが、実は日本では昔から幸運のモチーフとしても人気があったようです。
夜目が利くことから、暗闇でも物事を見通す。転じて商売繁盛や困難を避ける・魔除けになる。という風に考えられてきたとのこと。
そう思うと宅急便のクロネコヤマトさんの先見の明もそういう面があったのかな?と思えますよね。
あの時、みんなで解決できた人も、もめにもめた学級会があった人も、助けてほしかった人も、今は大切なものを忘れてないですか?
ある日やってくる猫の手
ノアがどのように選定しているのかわかりませんが、こどもたちでなんとか解決できるラインを超えないところがすごい。
まさに、神は乗り越えられる者に試練を与える。という体現のようなさじ加減です。
おそらく同じ学校の中にも他にも困っている人はいるんでしょうが、そちらは大人や友達がうまくフォローできたり、もっと深刻なら警察など解決するための機関が動いているんだと思ってます。
自分たちのために誰かが、自分が、動かないといけない。
けど、どうしたらいいんだろう…。
という見守る側ももどかしい、成長の段差の前で悩む姿は、はじめてのおつかいを見るような気持になりました。
プロデューサーノア敏腕すぎる。
愛と勇気
物語の舞台の片方、星ヶ丘市立東小学校五年一組のクラス目標は元気ハツラツ・勇気リンリン・努力コツコツ。
うちのクラスにもこんなの書いてあったわー。
どうせ大人の理想だろ…とあんまり真面目に考えてなかったモノノケでしたけど、そりゃそうよ。
共通の目標とか価値観って集団生活で大事なんだから、そこにスレられるほど早熟ならそのまま円熟しといてくれよ自分。
閑話休題。
3つの柱のうちの、勇気リンリンがこのクラスにおけるキーワードでした。
健太・リリー・亮介・メグ・ユッコ先生。
それぞれ痛みを伴いながら勇気を出して状況を変えることができました。
ちなみに、個人的に一番キツいと思ったのはメグですね。
自業自得なところがあるとはいえクラスメートに断罪されるのもキツいし、賛同者が無理やり言わされた被害者ヅラのみで離れていくところもキツい…。
これって誰かひとりだけが悪いんか?って学級会開きそうになりました。
でもメグの賢いところは、ちゃんと自分でリカバリできるところです。
反省するだけでなく、好転するように立ち回れる、痛い思いしただけいい女になるんだろうな。
誰かのための勇気、自分のための勇気。
どの勇気にもその根底には愛があると思います。
誰かを守る気持ちとか、大事にしてくれる気持ちに応えたいとか、頑張っている自分への誇りとかそういう愛。
自分を通して誰かと愛はつながっている。
愛と勇気はハブったらあかん。
転校生のテク
二つ目の舞台もみじ市立もみじ小学校六年二組では、転校生のもとにノアが現れます。
転校生の宏美は、自身の蓄積された転校スキルによってソツなく転入先のクラスになじんでいく、はずでした…。
しかし、誰も悪くないのにクラスの空気が悪くなってしまいます。
宏美は実際かなりうまくやっていたと思いますが、解説するパターン分けされた経験豊かな転校生スキルに、今まで経験した苦労や寂しさを垣間見て悲しくなったのは自分だけでしょうか。
ところどころである両親との会話でも察せられますが、宏美はいろんなことを我慢したり、あきらめてきています。
仲よくなればなるほど別れはつらいものですし、連絡をとれても実際会って話すわけにもいかなかったり、自分だけ友情が続かない孤独感もあったでしょう。
親の都合はこどもの宏美にはどうにもならないし、建設的な検討の結果生み出されたスキルだと思うとなんてできた子なんだとたくさんお菓子あげたいです。
つらいことは慣れてもつらいよ。
でも親のことも大好きなんだろうなー。
この転校がなかったら全部しまい込んでただろうし、そうするとお母さんの「いつか話してね」も引き出せなかったかもしれません。
人が得た経験や判断は最後の日までそれがどういうものか分からない。
いつかの自分がこのためだったのかと思えるその時までただの事象です。
その時が来たら、転校たくさんしたのもいいことあったと振り返ってほしいです。
読み終わって
二つの物語を読み終わって、満足感と充足感につつまれ…るよりも気になる点が!
美和と春香の仲直りは?!
まあずっと一緒にいたら同じパターンのケンカもしてるだろうし、何でもない感じで顔を合わせてってオチ。かもしれませんけども、自分が宏美なら美和に連絡する時絶対ちゃんと仲直りできたか聞きます(笑)
ともあれどちらのクラスもみんな大人になってから、同窓会でノアの話題が出て当時を思い出したり、先生になった子がいたら別の学校でウワサ聞いたよーとかいうのかなと想像して物語のその後も楽しめています。
荒ぶるスレ小学生だったので、たぶん健太と春香にイライラして、こんな気持ちで読み終えられなかった(笑)
児童書系で珍しいかもしれないけど、この本には大人になってから出会ってよかったです。
それでは、この辺で。
今回読んだ本
さすらい猫ノアの冒険 重松清 著
講談社 講談社文庫 ISBN 978-4-06-515242-3