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大企業の新規事業で成功したいなら、ジョイントベンチャーしかない理由 1。

大企業の新規事業の成功率はだいたい10%程度と言われています。


私は、NTT西日本という企業で3社の戦略的子会社を立ち上げてきました。「NTTソルマーレ」「NTTスマイルエナジー」「NTT PARAVITA」です。

そのうち2社は業界NO.1となり10年企業になりました。3社目はつい先月、立ち上げたばかりです。企画からシェアNO.1に至るまで、一貫して現場でやってきました。

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そんな大企業の新規事業を知り尽くした身として、ジョイントベンチャーという方法が最も成功確率が高い!ということを皆さんに伝えたいのです。

そもそも、新規事業が成功するとかしない以前に、新規事業は世に出さないことには何も始まりません。

世に出す前(承認される前)に、ほとんどの新規事業プロジェクトは消滅します。その理由と解決策について整理してみました。


■新規事業が実行されるプロセス

新規事業実行には、以下の3つのステップがあります。

1.事業構想
2.事業承認
3.事業化


大企業の新規事業は、2の事業承認に至るまでにほぼ全滅してしまいます。

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■なぜ、承認までたどり着けないのか?


理由は、2つあります。

1.大きすぎる既存事業の存在が邪魔をする

2.リスクに対する過剰な反応が邪魔をする


1つずつ説明します。


大きすぎる既存事業の存在が邪魔をする

大企業は大企業になれた非常にすぐれた既存事業が存在します。既存事業は常に売上・利益目標の達成に駆り立てられています。

四半期毎に報告を求められ、息つく暇もなく目標を追い求めます。

そうした状況における「新規事業」というのは、既存事業にいる側からみると、「道楽」や「博打」のように見えるのです。

我々が、「爪に火をともすような努力」をして稼いだお金を、よくもまあこんな「不確実性が高い事業」に投資するもんだな。

我々も、いろいろやりたいことがあるが、それを我慢してコスト削減しているのに、呑気なものだ。

という、反応ですね。

既存事業の立場からすると、当然な反応です。

新規事業が持つ不確実性を低減させようとすると、既存事業の強みを活用するという考え方が一般的です。当社の強みを生かすが故、競争優位が確保でき、事業の成功確率が高まるという理屈です。

しかしながら、既存事業から見た新規事業は上記の通り「道楽」や「博打」という扱いですから、既存事業からの協力やサポートは得にくいわけです。

経営者が新規事業に前のめりでも無理な理由

経営者が中長期的な目線で新規事業をいくら推進しても、売上・利益目標を下方修正してまでそれに取り組むことは極めてまれです。

そのような状況の中、既存事業の責任者は、新規事業を立ち上げる責任を負わないので、目標を達成するためには「道楽」や「博打」は極力排除すべきという、当たり前の対応をするのです。

具体的には、新規事業が既存事業のリソースを利用しようとすると、「既存事業とのカニバリ」や「既存顧客の信頼性の低下」「既存製品・サービスのブランドの毀損」というような、さも最もらしい理由をつけて、新規事業の実行性に異を唱え、それらを滅ぼします。

しかも、巧妙にそれを実行するので、経営者からは、それが問題に見えず、新規事業担当者の調整力のなさのように見えることすらあります。

既存事業から離れることが難しい理由

では、既存事業の強みを利用しない場合はどうでしょうか?既存事業から距離を置き、新規事業会社を設立して、新規事業を推進するような場合です。

このパターンは、経営者からみると、博打に見えます。

自らの強みを活用するからこそ、新規事業のリスクを低下できるのに、それを利用することなく、新規事業を行うなど、ありえない。という感性です。一理あります。(強みなどない創業時にはそうして事業を起こしてきたのですが、、、)

このように、強みを利用しようとすると、既存事業の抵抗に会い、強みから離れると、経営者から承認されない。

出口のない葛藤が新規事業担当者に生まれ、「結局どうしたいんだ!」というやり場のない怒りが、生まれます。

■両利きの経営は困難な理由

「両利きの経営」というビジネス書があります。

既存事業と新規事業は全く異なるものという認識のもと、それらが共存できるマネジメントを実行すべきだという趣旨の提言が見られます。

大企業における新規事業の現場に20年間いる身としては、天敵であるハブとマングースを同じ檻に入れて飼育するスーパー調教師が求められます、、、と言われても、再現性高くそれを実行することが、異常に困難であり、時間の無駄のように感じられます。

ハブとマングースは、別々の檻に入れるべきです。

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つまり、新規事業は既存事業と離し、子会社化して取り組むのが自然だということです。

ただし、ジョイントベンチャーというスキームを入れて取り組むことが、10年以上成長し続ける大企業の新規事業をつくるためのとっておきの方法です。

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ジョイントベンチャーで子会社化するメリット


ジョイントベンチャーというのは、複数の企業が資金を拠出して、1つの会社をつくることです。

子会社をジョイントベンチャーでつくることは、それを承認する側からすると、投資額を減らせるだけでなく、相手の強みを活用できるというメリットがあります。

例を挙げて説明します。

10億円の資本金で、新規事業会社を設立するときに、自社だけとジョイントベンチャーの場合に分けて考えてみましょう。


自社だけの場合

 自社で100%出資

ジョイントベンチャーの場合

 例えば、協業相手が34%出資し、自社は66%出資


自社だけだと、10億円出して、自社の強みがあまり利用できない会社ができる可能性がありますが、ジョイントベンチャーだと、6.6億円しか出さずに、協業先の強みも利用できる会社ができるのです。


どっちがいいですか?


しかも、相手がお金を出すということから、3つの良いことがあります。

①出したお金を回収するために相手は本気でこの事業を成功させようとする
②自分たちだけではなく、相手もこの事業に可能性を感じていると、自社の経営者に言える
③自社と相手の強みを持ち寄れば、強力な競争優位を築ける可能性が生まれる

自社だけで子会社化するとなると、

「せっかく既存事業の強みがあるのに、それを利用しないなんてもったいない。普通にやっても失敗する確率の方が圧倒的に高い新規事業であるのに、さらにリスクを増やすことに何の意味があるのだ!」となる経営者でしたが

資金を拠出しても良いという協業相手がいるだけで、経営者からすると、リスクが低減した感じるだけでなく、相手の強みという武器も加わり、圧倒的に承認しやすくなるのです。

また、既存事業に携わる社員にも良い変化が生まれます。

子会社という形態で既存事業と分離さることによって、責任の所在が明らかになり、自分たちに悪影響を与えない存在としてそれを許容するようになります。

そうした責任の所在を明らかにして困難に挑もうという潔さに対して、親会社として子会社をサポートしてやってもいいなという、前向きな感情が生まれてきます。既存事業に組み込むときの感情とは正反対のものです。


■まとめ

大企業の新規事業はジョイントベンチャーで子会社化することが最も承認とサポートを得やすい!


次回は、ジョイントベンチャーで参入する領域は「サスティナブル市場が最適」というお話をしたいと思います。



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