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もっとも良いデザインはデザインしないこと

当たり前を疑う

僕はどのプロジェクトでも一番最初に、必ず「そもそもこの機能を作る必要があるのか?」を考えます。

たとえ全員がこの機能が必要だと、「当たり前」に思っていたとしても、デザイナーだけは「当たり前」を疑う必要があります。デザイナーの一番の役割は「頭の中の枠組み」を外して常識を問い、疑うことです。

これを、クリティカル・シンキング(批判的思考)と呼びます。
クリティカル・シンキングとは物事や他者の言動を客観的かつ批判的に捉え、本質的な課題や問題を解決するための思考法です。

例えば昔は音楽や映画は購入することが当たり前でしたが、今ではSpotifyやNetflixによって所有する代わりに、定額で利用できる仕組みに変わりました。今は冷蔵庫やレンジを購入するのは当たり前ですが、サーキュラー・エコノミーの時代になれば、定額で利用することが常識になるでしょう。

今の常識は未来の非常識です。僕たちが当たり前として考えていることは、今でしか通用しない習慣でしかありません。
デザイナーはプロジェクトの一番最初に、プロダクトのありたい未来から逆算して作る価値があるのか?他に代替手段はないのか?そもそもの顧客の課題を解決しているのか?を問う必要があります。

作った時点で負債になる

プロダクトは作った時点で負債になります。デザインには耐久年数があり、事業のフェーズやデバイスの進化によって負債になっていきます。また、システムのライブラリも新しくなり続けるため、3-5年後にリアーキテクチャするということも想定されます。

何も作らずに顧客の課題を解決し価値を届けることが、至高のビジネスです。だから、モノを左から右に動かす商社や、お金を動かす金融や、戦略やアイデアを企画するコンサルが儲かります。

SaaSであっても、いかに作らずに顧客に価値を提供できるか?をファーストステップで考えることが重要です。その中で、顧客体験や事業の未来や実際のリソースを複合的に考慮した結果、本当に必要な機能を開発していくことになります。

やることを増やさない

プロダクトで新しい機能をリリースして、顧客のやることが増えていたらそれは良い機能&デザインではないかもしれません。
直感と矛盾しますが、良いプロダクトは機能が増えれば増えるほど、顧客のやることは減っていきます。

今の流行りで分かりやすいのは、AIアシスタント機能でしょう。記事や企画や議事録を作る手間を、この機能は劇的に減らしてくれます。

機能が増えることで、顧客のどんな用事を減らせるのか?を問うこともクリティカルシンキングの一つです。特に日本のSaaSは驚くほどあれもこれもと機能を追加して、カオスなプロダクトを作るのが得意です。そうならないようにするのが、デザイナーの大きな役割です。

デザイナー発信で
もっとも良いデザインはデザインしないこと
を共通認識として持てる組織にしていきましょう。

プロダクトデザインの行動指針

最後に僕がいつもプロジェクトのFigmaに貼っている「プロダクトデザインの行動指針」3ヶ条を紹介します。プロダクトデザインの参考になれば嬉しいです。ちなみに全て前職のSTORES, inc.で学んだことです。
ここではクリティカル・シンキングをゼロベース思考に言い換えています。


01. ゼロベースで考える
はじめてプロダクトを使う人になりきって検討する。
本当に必要か?課題を解決しているか?わかりやすいか?

02. 小さくはじめる
大きな課題は分割して、小さくはじめる。小さく作って短期間でリリースすることで、成功と失敗のフィードバックを高速で回す。

03. 複雑性に逃げない
顧客に価値を届けようとすると必ず要件が複雑になる。それでも、UIと体験を複雑にしない。簡単に使えるシンプルな体験が、驚きを与える。

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