呪われし社員編(11夜〜15夜)
11夜:許してくれよ!
「もう勘弁してくれ! グオォォォ!!」
夜の街を震わす、恐竜の咆哮。みんなの呪いが、彼を怪物に変えた。
ここは、現実に投影された悪夢のRPG。
現実を直接壊せないが、相互に影響し合う一種の仮想空間。
人々は眠りの中で無意識にログインし、朝まで冒険する。
「今、助けますの!」
12夜:社員Aの独白
レックス社に入ってから、憧れは恐怖に変わった。
俺はあまりに知らな過ぎた。ファンからの憎悪。
大体、勝手な期待をし過ぎなんだ。勝手に持ち上げて、勝手に落とす。
この会社は、呪われてる。同僚たちも夢の中で怪物になってたのに、誰一人覚えてない。
また、夜になれば。夜が怖い。
13夜:奇妙なメール
今日は、ユーザーからの「ご意見ご要望」に目を通す日。罵詈雑言が多くて精神を蝕むので、年間の被曝量を減らす為の当番制だ。
「呪いの原因は、ふくびきですの。ガチャによる搾取は、植民地主義的な慣行。日本人の根っこは、助け合いですわ」
何だこりゃ。ユーザー名の欄には「ユッフィー」?
14夜:炎上する街
街が怒りで燃えていた。悪夢のRPGが、リアルの炎上騒ぎと連動。
幻の炎だが、熱気は凄まじい。
国民的RPG、ドラグーンジャーニー。就職氷河期のおっさんたちの郷愁は、黒く歪んで溶岩の如く。
「ポリコレなんか、クソくらえですの!」
今夜のユッフィーは、ビキニアーマーで竜退治。
15夜:(社員として)選ばれし者
今夜は、まだ夢の中。俺は人間に戻って?
「気がつきましたのね」
「いらっしゃいませぇ♪」
冒険者の酒場で、身の上を語った。
「なりたくても、なれなかった人がいます」
彼女は辛辣だった。
「あなたは選ばれた。責務を果たすのです、勝手にやめたら許しませんの」
やれやれだ。
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