商人のDQ3【81】ヒデヨシという男
「おキクしゃん、今晩いいでちか?」
「お嬢様?」
宿の一室でダーマスパイこと、クワンダの姪っ子ミキから。ジパング軍がダーマ神殿を攻める狙いについて聞いたシャルロッテ。どうしたものかと考えていると、不意にメイドのおキクさんの方を見ます。
「夢渡りでジパングに飛んで、大公ヒデヨシしゃんと商談したいでち」
「なるほど。そのために、私の協力が必要なのですね」
ルーラと似ていて、明確にイメージできない場所へ狙って夢渡りするのは困難です。無意識の夢渡り中、意図せぬ場所へ迷い込むことはありますが。
魔法使いだけでなく、すべての夢を見る者が毎晩無意識にやっている自然現象。それが夢渡りです。ベナンダンティなど訓練を積んだ者は、夢渡りを明晰夢として意識的にコントロールできます。
バハラタでバスコダのメイドをしていたおキクさんは、実は若くして命を落としたとされているヒデヨシの孫でした。
菊(きく、文禄4年7月2日(1595年8月7日) - 元和元年6月6日(1615年7月1日))は、豊臣秀次の娘。母は淡輪徹斎隆重の娘の小督局。
「農夫に変装して密書を運んだとき、オオサカ城に入ったことがあります」
この世界でのおキクさんは、敵方に捕まって処刑される前に何かがあって奴隷商人の手で海外に売り飛ばされ、アジア人の奴隷を珍しがったバスコダに拾われたようです。
その先で、バスコダに捕まり愛人にされたシャルロッテの世話係を命じられるなんて。数奇な運命ですね。
※ ※ ※
夜になりました。シャルロッテとおキクさんは同じベッドで添い寝して、夢の中でオオサカ城へ。
「ヒミコの危険性を語るなら、元魔王軍のおばばも必要じゃろ?」
アミダおばばも、付いてきてくれました。
「ありがとでち! おばばしゃん」
ちなみに、南米縦断の旅でデチュ・マチュ遺跡へ向かっているアッシュとマリカのところへは。クワンダとミキが夢渡りしたようです。いまごろは、マリカとミキがアガルナの塔で知り合って以来、思わぬ再会を喜んでいるでしょう。
「私も城内の全ては知りませんが、ヒデヨシ様の寝所なら見当はつくかと」
要人警護の観点から、警備の厳重な場所で城主は眠っているはず。おキクさんの言う通り、寝所で横になっているヒデヨシ本人を見つけるのはさほど苦労しませんでしたが。
「ヒデヨシしゃん、どっかへ夢渡り中でちね」
すべての夢を見る者は、毎晩無意識に夢渡りをしていますから。そういうこともよくありますね。
「こういうときは、本人から出ている『糸』をたどるんじゃ」
夢見の技の達人でなければ見ることの難しい、眠っている人の身体と精神をつなぐ糸のようなものを頼りに。シャルロッテたち3人は、ヒデヨシの見ている夢の中へダイブします。
「ふむ、ダーマスパイか。面白そうな娘がおったものじゃな」
「他にも、ダーマ神殿の武僧たちは思いの外手強く。まるで猿のように飛び回り、鉄砲や弓では狙いがつけられませぬ」
どうやらヒデヨシも、どこかで夢渡りのコントロールを身に付けて前線の指揮官とやり取りしていたようです。戦国のIT革命!
それにしても猿とあだ名されたヒデヨシが、まるで孫悟空のようなダーマの武僧たちにほんろうされるとは。何とも痛快ですね。
「ここは、ダーマの山奥じゃな。ジパング軍の野営地かのう?」
「おばばしゃんは、前に来たことあるんでちね」
これまで、ダーマ神殿に来る機会の無かったシャルロッテがもの珍しそうに、あたりを見回しています。バハラタでは、ポルトガ兵に捕まって牢屋の中でしたものね。
「ヒデヨシしゃん! ヴェニスのびしょうじょシャルロッテちゃんと、孫のおキクしゃんが会いに来まちたよ!!」
いったい何事かと。大公ヒデヨシ本人と、話をしてた現地の指揮官が後ろを振り返ると。異国の装いに身を包んだ小さな女の子と、死んだはずの孫がメイド服姿で立っているではありませんか。あと怪しそうな魔法おばばも。
「おぬしら、いったいどこから!?」
「ヒデヨシ様、こやつらは?」
少しの間、ヒデヨシが三人の姿を見ます。特に幼い容姿のシャルロッテをなめ回すような視線で。
(…ロリコンのヘンタイオヤジでち!)
「おじいさま。相変わらず、女遊びが激しいと聞きました」
「まあまあ、ジパングにはヒカルゲンジという先例もあるではないか」
その気の強さ、間違いなくおキクじゃなと。ヒデヨシが孫との思わぬ再会に警戒を解いてニコニコしました。ちょっと本心が読めません。
(おばばが若い姿に化けて、色香でたぶらかしてやればよかったかの?)
アミダおばばも、内心そんなことを考えていました。英雄色を好むのは大いに結構ですが、孫のように思っているシャルロッテにまで下卑た視線を向けられてはいい気分がしません。
「単刀直入に言うでち。祖国を守るため、列強諸国にジパングは強いぞって言いたいなら。対魔王軍の諸国連合に参加すればいいでちよ」
「ほう、海外の情報か。わしも商人の出じゃ、詳しい話を聞こうか」
何とも食えぬ男ですが、戦国の世を制した天下人だけあって情報の価値は誰より理解しています。いまここに、天下分け目の商談がはじまります…!
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