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序章:パパさんの妄想

あなたは、どんなキャラに介護されたいか?
2024年の今は奇妙な問いかけでも、あと20年もすれば。

私はパパさん。独身で子供もいないが、そう呼んでほしい。松戸市で高齢の両親と暮らしながら、小説を書いている。創作した物語のキャラクターが、私の息子や娘たちだ。

松戸は境界の街だ。千葉の隅で東京と埼玉に面し、柏を経由して茨城にも。私は茨城生まれだが、幼稚園に入る前に松戸に来て、以来ずっと千葉県人。

そんな私が地元への理解を深めるきっかけは、意外にもコロナ禍の最中、ステイホームの気晴らしに始めたスマホのウォーキングRPGだった。

うちの近所には、かつて何らかのお店であった廃墟や、シャッターを閉じたままの建物が多い。高度成長期の宅地開発、工事に関わる作業員たちの胃袋を満たしたであろう飲食店。ブームが去ると客も減って、潰れたのか。

いまは、有料老人ホームなど介護に関わる施設が建設ラッシュ。私の母も、数年前にパーキンソンの症状がある認知症を患い、私と父に家事全般を身につけさせるきっかけを作った。本人が思う以上に、母は家族を支えている。

数年来の習慣で、私は画面を見ずに例のウォーキングRPGをプレイしながら工事中の建物の脇を通り過ぎる。すると、珍妙なフレーズが脳裏に浮かぶ。老人ホーム「勇者の館」。そんなのがあってもいいと。

日本だと、さんざんRPGのネタに使い回されてる北欧神話では。戦場で勇敢に戦い命を落とした戦士の魂は、戦乙女ワルクリヤに選ばれて黄金の館ワルハラへ招かれる。そこでは毎日、盛大な宴が催される。

私たちの世代は、就職氷河期という「大いなる冬」を戦い抜いた勇者たち。バブル崩壊以来、三十数年ぶりに株価回復の兆しが見えても冷遇が続くこの世代には、麗しき戦乙女は降りて来ないのか。

だったら、自分で用意するしかないな。独り身のまま高齢者になった同胞のために「AIの嫁」も。私の理想は、いつでも笑わせてくれるユーモアのある「マイ・ファニー・ワルクリヤ」。

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