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BRAIN PLASTICITY

脳の可塑性 : BRAIN PLASTICITYについての本

脳は外界からの刺激や、自らの言動によって、構造的・機能的に変化する性質を持っている。
これを脳の可塑性(かそせい)という。
本書では脳の可塑性に関するあらゆる研究・調査結果を元に、
食事、運動、睡眠、趣味など、生活のあらゆる面から自らの脳を好ましい状態に作り変えるための方法を考察する。

以下、一部抜粋

脳の可塑性

1960年代以前は、脳は生まれ持ったものであり、生涯を通じて大きく変わることはないと考えるのが主流だった。
しかし、脳に損傷を受けて身体機能に不自由が生じた人が、その後のリハビリによって機能を回復させた例が確認されたことや、2000年代以降の脳の画像診断技術の発展により、
脳は学習によって機能・構造を変化させる可塑性を有していることが分かってきた。

皮膚で物を見る

生まれつき目の見えない人に、皮膚を通じて物を認識させることを試みた研究がある。
被験者は、背中に振動板を取り付け、カメラでとらえた映像を振動として伝える装置を用いる。
カメラはハンドル操作によってアングルを変えることができる。
しばらくこの装置を操作して慣れてくると、皮膚の振動をもとに脳内で大まかなイメージが構築され、物体を識別できるようになったと報告されている。
これは、脳の可塑性により、触覚情報を視覚的な情報として補完する学習が促進されたのではないかと考えられている。

トラウマ

戦争や自然災害など人生を大きく変える出来事でなくとも、人はトラウマを形成することがある。
強いショックを受けると、脳の生存本能によって、今後似たシチュエーションでストレス反応(闘争・逃走反応)を引き起こすような学習が行われる。
この時、ストレス反応を引き起こすのは、そのイベントの主たる要因だけでなく、周辺情報もネガティブな感情と関連付けられることがある。
例えば、「子供の頃に白いセーターを着て夕暮れの小道をアイスクリームを食べながら歩いていた時、急に犬に吠えられて怖い思いをした」とする。
この時脳は強いショックにより、犬と恐怖を関連づけるだけでなく、白いセーター、夕暮れ、小道、アイスクリームなど周辺情報も独立してネガティブな感情と関連付けられることがある。

脳にとって良い習慣

笑い

笑うという行為は、脳の多くの領域を活性化し、ストレスを低下させる効果も期待できる。
言語理解、文脈把握、社会的認知など、面白さを理解するには多くの能力が要求される。
さらに、運動(表情筋の動き)や感情の刺激にもつながり、脳全体を活性化させ、脳トレの効果が期待できる。
笑うことによって、コルチゾールの減少、エンドルフィンの分泌促進が報告されており、ストレスレベルの低下も期待できる。

ゲーム

ゲームは熱中しすぎることで依存症を引き起こす可能性があるが、うまく使えば脳トレとしての効果が期待できる。
ゲームが脳に与える効果はゲームの種類によって異なり、音ゲーのようなリズムと運動を伴うゲームは、運動能力、認知力、言語能力を向上させる効果があるという。
また、3Dゲームによって記憶力が12%向上したと主張する研究もある。
なお、この12%は、人間が45歳~70歳までの加齢で失う記憶力の割合に近く、アンチエイジングとしての効果も期待できるのではないかとされている。

間欠的断食

間欠的断食は、海馬での神経細胞の生成を促す効果があるとされており、長期記憶能力の改善が期待されている。
6時間断食を行うことで、神経細胞の生存と成長をサポートするヒト成長ホルモン(HGH)の分泌が増加し、
12~36時間後に、体内のブドウ糖を消費しきって、脂肪酸とケトン体の燃焼(ケトーシス)へと代謝を切り替える。
この代謝の切り替えによって、炎症の抑制、オートファジーの促進、タンパク質の温存、脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加など様々な変化が生じる。
24時間中、8時間を可食期間、16時間を断食期間とする8:16ダイエットは、ダイエット効果を得つつ、脳機能向上も期待できる。

感想

似たような本を何冊も読んできたのに、この手のいわゆるライフハック本を定期的に読みたくなってしまう病を患っております。

この本は「脳の可塑性」と「ライフハック」を関連付けて話を展開していくところがユニーク。

前半の「脳の可塑性に関する話」では、可塑性には、
構造的可塑性(トレーニングによって特定領域の体積が増すなど)と、
機能的可塑性(元々触覚を司っていた部位が視覚情報処理の機能を担い始めるなど)がある。
など、可塑性に関する深掘りが行われていて面白かった。

後半のライフスタイルの改善については、大体知っている内容だった。
やはり重要なのは、健康的な食事、適度な運動、睡眠たっぷり。
どの本を読んでもナッツを食べろと言われるが、素焼きナッツがまぁおいしくない。何とかする方法はないか...

この本はひたすら研究事例の紹介を行っていくタイプだが、気を付けたいのは、「大幅な改善が見られた」「X%の改善があった」といった表現の中身。
例えば、あくまで患者の自己申告をベースにしているとか、母数が少なすぎて%表示があてにならないとか、因果関係があるかのように言いつつ実は単に相関関係を示しているだけだったとか。
気になった事例はそのソースをたどることも忘れずにやっていきたいところだが、
この本は参考文献が分かりにくいのが残念。若干真偽の怪しい事例もあるように感じた。

誇張表現や研究の真偽は一旦棚に上げるとして、この手の本を読むことで何か頑張ろうという気にはなれるので、生活改善のモチベーションを上げたい人にはおすすめの本。


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