2020年7月10日の朝日新聞朝刊「文化・文芸」欄に、「note」についての記事が掲載されていた。
課金などと言われても、誰にも読まれない記事を嬉々として投稿し続けている私には全く関係ない話だが、まぁそれでも、ネット技術によって、クリエーターが作品発表の場とともに作品に対する正当な評価・利益を得られるというのは、とても良いことなのだろうと(他人事ながら)思うわけである。
課金と無縁な私は、実際に「note」がどういう仕組みでクリエーターと購入者を(金銭的な意味で)仲介しているのかは知らないし興味もない。そういった課金などはやっぱり、最近(でもないが)話題の「仮想通貨」や「ブロックチェーン」などの技術が使われているのだろうか?
とはいえ、技術的なことにも興味がないので、実際のところ、それらがどういうものなのかよくわかっていない。そんな情報はインターネット上…それこそ「note」にも数多転がっているのだろうが、やっぱり読む気はない。
技術的な理解を省略して、純粋にそれらの技術が課金やコンテンツ管理に使われている(あるいは使える)のかを知るために、オリバー・ラケットとマイケル・ケーシー著(森内薫 訳)『ソーシャルメディアの生態系』(東洋経済新報社。以下、本書)を開いてみた。
クリエーターにとっての「ブロックチェーン」
本書によると、ブロックチェーンによって「コンテンツの使われ方や収益方法を、製作者自ら決定できる」というのである。
我々は「見たいものを自由に見ている」わけではない
この先の引用に当たり、まずは前提の説明を。
何かコンテンツにアクセスする場合、GoogleやYahoo!などの検索サイトもしくはSNSを経由することが多いが、我々はそれらで表示されたコンテンツを「自らの意思で」選択していると思っている。何かコンテンツにアクセスする場合、GoogleやYahoo!などの検索サイトもしくはSNSを利用することになるが、我々はそれらで表示されたコンテンツを「自らの意思で」選択していると思っている。
確かに表示されたものを選んでいるのは自分自身だが、選択肢を与えているのはプラットフォーマー側である。で、プラットフォーマーは「検閲」と「選択」によって、ユーザーの選択肢をコントロールしているのである。そして、「プラットフォーマーの収入源は、主に広告料」である。ということは、プラットフォーマーによって選択されるコンテンツは、つまり…
ブロックチェーンによるライセンスモデルの転換
著者は、これらを解決する技術こそが「ブロックチェーン」だという。
ライセンスモデルの転換について、著者は「2つの道」を提示している。
1つ目は、「コンテンツの制作者に代金を支払う新しい方法を作る」こと。
2つ目は、「デジタルコンテンツ制作者にとって、彼らだけが、永久に自身の作品の所有者であると証明可能になった」こと。
製作者が購入者から直接代金を受け取る
著者によると、『とりわけ重要』な点として、『少額決済を簡易化することだ』と指摘する。現状では、例えば一つの記事に対して数十円の代金を支払うのは事実上不可能である。なぜなら、『仲介者に支配された非効率的なバンキング・システムやクレジットカードのシステムでは、少額決済は利益を生むことができない』からである。
ブロックチェーンによるコンテンツの保護
さて、コンテンツ制作者にとって、少額決済で手軽に購入してもらえるようになったが、ここで新たな心配事が出てくる。それは、コンテンツが「デジタル」であるが故、「コピーや改竄、無断配布が容易にできてしまう」ことである。
この心配事に対して著者は、ブロックチェーン技術に加え、
と、デジタル技術によって解決できると説明する。
コンテンツ制作者が自分で管理できる世界が来ると
さて、そうしたデジタル技術によって、製作者がコンテンツの収益と使われ方の管理ができるようになる時代が、そこまで来ている。
こう疑問を呈した著者は、しかし、そうはならないだろうと予測している。
果たして、どういう世界が来るのだろうか?
と、投げやりな感じで終わらせてしまう私は、結局、収益とか考えたこともなく(そんなものが得られるとも思ったことはない)、嬉々として誰にも読まれない記事を投稿しているだけで、十分楽しいのである。