2022-23 年末年始 酒。読書。観劇。それだけ in 京都

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年12月29日~2023年1月3日にかけての京都にて……

2022年12月29日(初日)

13:00 東京駅

帰省ラッシュとの報道もあり激混みでの移動を覚悟したが、13時ちょうど発ののぞみ号の乗車率は100%を少し超えるくらいで、すんなり座れる。
本を読み始めるがすぐに寝落ち。
15時過ぎの京都駅も何年かぶりに大賑わいの状態。地下鉄で京都市役所まで行き、その北側にある「タッセルイン河原町二条」へチェックイン。

サービスのお水が6泊分まとめて置いてある(感謝!)

16:00 ひっとぽいんと

荷ほどきもせず、すぐにホテル近くの「ひっとぽいんと」に向かう。

(毎度の使い回し)

年末恒例のサービスチケットを購入。6枚3000円と10枚5000円(要するに1枚500円)のどちらかで迷うが、とりあえず6枚の方を購入。500円のチケットで1000円までのドリンクが飲めるらしいが、いつものとおり600円のビールを2杯飲む。
粕汁かすじる飲む?」
マスターの安原氏が仕込み終わった粕汁を勧めてくるが、断る。
不意に安原氏のスマホが鳴る。
「バイトからおもろいLINEが来た。『スキーで怪我したからバイト休みます』やて」

17:30 一政

開店時間に合わせて「一政」へ行く。
今日あたりは予約で満席だろうが、開店直後であれば1席分くらいは空いているだろうという目論みは、見事的中。
「つきだし」は、まさかの粕汁。「ひっとぽいんと」で頼まなくて大正解。
ビールは飲んできたので、いきなり日本酒からスタート。

『六歓』(京都・東和酒造)
6つの歓びなんて年末に相応しい

ほたての刺身を注文。
お店のオーナーシェフの篠さんが「このほたてはヤバイ!今までで最高のヤバさ!」と大絶賛。
ワクワクしながら、食べる……本当にヤバイ!

19時が近づき、続々とお客さんが入店してくる。
後のお客さんに席を譲ることにする。

19:00 和鉄板ぞろんぱ

賑わっているところを、何とかカウンターに潜り込ませてもらう。
ここでも日本酒を注文。

『奥播磨 強め』(兵庫・下村酒造)

「今年は『シャンパン合戦』ができそうですよ」
店員さんがニヤリと笑う。
まだコロナなんて存在していなかった数年前の大晦日、このお店でカウントダウンしていた。新年を迎えるにあたり、常連のお客さんがシャンパンを注文し、カウンター席のお客さん(私以外は皆さん常連さん)と店員さんに振る舞った。
そこから常連さんたちが、次々とシャンパンを開け始め、私はそれら全てをご馳走になった。
とうとうお店のシャンパンが尽き終了かと思われたが、ワイン好きの常連さんが「あずまに持ってこさせよう」と言い、連絡を受けたこのお店のオーナーで系列店「串鉄板ぞろんぱ」の店長でもある東さんが事情もわからずシャンパンを持ってきた。
これまでさんざんご馳走になったので、最後のシャンパンは私が支払うと申し出たら、お店の人たちが慌て始めた。
後から聞いたところによると、東さんはお店で一番高いシャンパンを持ってきたらしい(ということで、後日、お店の人全員に謝られた)。
※詳細はこちら↓

それ以降は常連さんが揃わなかったり、コロナ禍になったりで、『シャンパン合戦』は開かれなかったが、今年は常連さんが揃いそうだと言う。
席は空いているか聞くと、店員さんがまたもニヤリとして「22時以降なら空いてます」。
とりあえず席を確保してもらい、お店を出る……いや、出たはずだ。
初日21時前に既に記憶がない。気がついたら、ホテルで、ちゃんと着替えて寝ていた。

2022年12月30日(2日目)

6:00 起床

朝食の買い出し。酔っ払った「ひっとぽいんと」のマスター安原氏と遭遇しないかドキドキしたが、当然そんな偶然は起こらない。
テレビもつまらないので、自宅で録画していた劇作家・宮沢章夫氏の追悼番組を見る。スマホと自宅のビデオ録画機がネット接続できる時代なのである。
10時半過ぎにホテルを出発。

11:00 京都御苑

寺町通を北上して、京都御苑まで歩く。
いつもは丸太町通に面した南側の堺町御門から入るが、今日は寺町通に面した東側の寺町御門から入る。

京都御苑はとにかく広い。
朝早いからか寒いからか、はたまた年末だからかはわからないが、人が閑散としていて、さらに広く感じる。

11:30 カプリ食堂 Lemone Verde

京都御苑を出て、近くにある「カプリ食堂 Lemone Verde」に入る。

(2020年6月撮影。毎度の使い回し)

「いやぁ、年末が来た、って感じしますね」
オーナーが迎えてくれる。

2022年12月30日の1杯目
この後、ハイボールを4杯飲んだ

「カプリ食堂、6周年だって?」
このお店は烏丸五条の交差点近くにある「カプリ食堂」の2号店になる。
「そうなんですよ。おかげ様で……。その頃からのお付き合いですよね」
知り合いの紹介でオープン直後の「カプリ食堂」にお邪魔してからもう6年。月日の経つのは本当にはやい。
あの時は、オープン直後でテイクアウトもやってなかったのに、無理を言って持ち帰らせてもらったのだった。その目的は……
「今年『ガキ使』やらないじゃないですか。どうするんですか?」
そう、私は「笑ってはいけない」をホテルで見るために、おつまみをテイクアウトしたのである……というのは置いておいて、それにしても「笑ってはいけない」がないのはショックだ。
大晦日、22時に「和鉄板ぞろんぱ」に予約は入れているが、それまでの時間をどう過ごすか、悩んでいる。

15:00 ひっとぽいんと

14時過ぎにお店を出て、明日の夜どう過ごすかを思案しながら京都御苑を歩く。日差しが暖かいからか、朝よりも人が多い。
15時に「ひっとぽいんと」に到着。
「今年も『ガキ使』ないやん?」
何故かここでも話を持ち出される。そんなに大晦日に京都のホテルで「笑ってはいけない」を見ながら一人飲みするのは珍しいのか?
「普通、わざわざ大晦日に京都に泊まりはる人たちは、そんなことせぇへんやろ?」
そんなことはないはずだ、などと反論しながらビールを飲んでいると、みるみるドリンクチケットが減っていく。仕方がないので、6枚セットを追加購入。
17時開店のお店に行くために、お店を出る。
「予約すればええやん」
安原氏の言葉は全くの正論だ。
しかし、予約したらお店に行かなければならず、その「行かねばならない」と自分で自分を縛るのがとても嫌なのだ。
断られたら次のお店を探すのもまた楽しからずや……なのだが、その後、そんなお気楽な考えを後悔することになる。

17:00 大八寿司

そんなわけで、四条通から室町通に入って少し上がったところにある「大八寿司」に開店時間に合わせて入店。開店時間を狙うと入れる確率が少しだけ上がる(個人的見解)。
大将の今宿さんと奥様で営む小さなお店。
お寿司をつまみながら、昨日私が早い時間から記憶がなかったという話から、無駄に元気だった若かりし頃の話で盛り上がる。今宿さんが、私の1歳年上の53歳だということが判明。
そうこうしているうち、予約のお客さんたちが次々来店。それを機にお店を出る。
今度は室町通を四条通を抜けて少し下がったところにある「串鉄板ぞろんぱ」に行ってみるが、満席で断られる。
まあ19時という時間ではそれも仕方がないことで、一旦ホテルに戻り、頃合いを見てどこかお店を探すことにする……が、気がついたらホテルで寝ていて日付が変わろうとしていた……

2022年12月31日(3日目)

5:00 起床

そんなこんなでメチャクチャ寝たので、5時に目覚めてしまう。
自宅で読めていなかった新聞の切り抜きなどを読んだり、持参した『現代思想』をパラパラ捲ったりする。

『現代思想』(青土社) 2022年9月号の特集は「メタバース」

「メタバース」というものが全くわからない(だからこそ本書を読む)のだが、「プラットフォーム企業による個人情報の商品化」というイメージも強い。たとえば……

社名をメタに変えたザッカーバーグ氏は、仮想空間「メタバース」に突き進む。彼が描く仮想現実(VR)は、私たちの膨大な非言語のデータがやりとりされる世界だ。
米スタンフォード大の18年の調査では、VR空間で20分間過ごしただけで、目の動き、手の位置や歩き方など約200万ものデータを残すという。目だけでも、視線の位置や瞳孔の開き具合などの詳細な生体識別データから、心理状態、年齢、地理的出自などが推測できるとされる。悪用されるリスクは計り知れない。

朝日新聞2022年2月7日付朝刊「フェイスブックの内幕」

まだ本書の最初の寄稿「メタバースによる人の意識の変容」(三宅陽一郎)を読んでいるのだが、それでも別の側面が見えてくる。

メタバース空間はオンラインゲーム空間と似ているが、オンラインゲームから物語と役割を抜いた空間である。(略)動き回ることができる空っぽの三次元空間(略)それが素のメタバースである。素のメタバースには目的がない。(略)
しかし、素のメタバースは人類史上、画期的な空間であった。(略)現代のメタバースには何があるか。それは経済とソーシャルである。経済という物語がメタバースを支えている。そしてSNSから持ち込まれたソーシャルな空間が人をメタバースに引き留めている。

興味深いのは「ソーシャル」の面で、たとえば、現在個々の研究室で行われているような研究は『クラウド・メタバース上に大きな予算と巨大なシミュレーション・パワーを持つようになれば、メタバースが巨大な(略)実験場になる』という。
また、現代のロシアによるウクライナ侵攻や世界中の戦争・紛争では、各種の「司令塔」が攻撃対象となることが多い。しかしメタバース上に「司令塔」を置くことによって、状況は一変するという。

物理的実体を持たない司令塔というのは、サーバーが攻撃される脆弱性を除けば、むしろ極めて堅牢性が強い。バーチャルな司令塔は、物理的な攻撃が有効ではなく、むしろ、参加者の位置も特定できない。たとえば、電力中央指令室、警察本部、国会など、要となる施設は、メタバースにバックアップ施設があれば、どんな非常時にも駆動することが可能である。

「なるほどなぁ」と感心しながら読んでいると、部屋の内線電話が鳴り、びっくりする。
昨日、31日の室内清掃を12時までに終わらせてほしい(通常は15時まで)とお願いしたのだが、そのために10時までに退室してほしいとのこと。私が無理にお願いしていることなので、当然承知する。

9:45 外出

大晦日、10時前の寺町通を歩く。
すでに「スマート珈琲」の前には長蛇の列。大きなスーツケースを持った人も多い。
少し下がって三条通との交差点にある「三嶋亭」にも長蛇の列……
時間があるので八坂神社まで足を延ばす。この時間、参拝客は少ない。
西門から続く参道と円山公園の縁日屋台の人たちが賑やかに準備をしている。コロナ禍でかなりの苦境を強いられていたのだろうが、今年は制限がないので、準備の様子からも、喜びがあふれ出ているのがわかる。

11:30 出石庵

ホテル近くまで戻り、「出石庵」で年越しそばを食べる。
「出石そば」は兵庫県・但馬地方に伝わるお蕎麦で、1人前5枚の小皿に乗せて提供されるスタイル。

メニューには「おせっかい」ながら、食べ方が記されている

「年越し」ということで、天婦羅のセットを注文。

もちろんビールも注文(2022年大晦日の1杯目)
なんと豪勢な!

「おせっかい」な食べ方指南に従ってお蕎麦を食べ、お店の人たちに「よいお年を」とご挨拶して(別に常連ではないのだが、この挨拶は年末の風情があって個人的に好きなのだ)、お店を出る。

12:10 ホテル

12時過ぎにホテルに戻ると、室内清掃は完璧に終わっている(我儘を聞いていただきありがとうございました)。
何故12時までに戻りたかったのかというと、テレビ番組「探偵ナイトスクープ」の大晦日恒例の総集編が放送されるからだ。
たっぷり3時間超、爆笑したり感動したりして過ごす。

15:30 ひっとぽいんと

テレビを見終わり、日課となった「ひっとぽいんと」に出かける。
朝見た寺町通の行列の話をする。
「スマート珈琲はわかるけど、三嶋亭は何?地元の人が肉買いに来るわけ?」
「んなわけあるかい!……ところで、今日、どうすんの?」
「UPLINK京都で映画でも観ようと思ってるけど、イマイチ決心がつかなくて……」
「なんで?」
「ネットの予約画面見たら、チケット購入した人が一人もいないから……」
安原氏爆笑。
「ええネタやん!観に行った方がええで。大晦日に観光客が独りぼっちの映画館で映画を観るなんて!」
16時半、結果は後日報告することにして、お店を出る。

17:00 JAM

四条通から川端通を少し上がったところにある日本酒バー。
年末年始はここにお邪魔することが多い。

『あべ』(新潟・阿部酒造)

お酒を飲みながらUPLINK京都のサイトをチェックすると、なんと1人購入している。それに勇気を得て、チケット予約し、映画館へ向かう。

18:25 映画『ゆめのまにまに』@UPLINK京都

大晦日の映画館は閑散としている。
観客は1人増え、結果3人での鑑賞。

映画『ゆめのまにまに』(張本香織監督、2022年)

21:00 串鉄板ぞろんぱ

20時過ぎ終映。烏丸通を西に入り、室町通を通って「串鉄板ぞろんぱ」へ向かう。当然、予約はしていない。
オーナーの東さん曰く「ちょうどお客さんが入れ替わるタイミングなので、もうちょっとしたら入れると思います」
ということで、時間つぶしに烏丸五条の「カプリ食堂」に行ってみるが、目の前でカップルが入店しすぐに出て来るのを目撃。9割方諦めたが、カウンター席に座れるかもと1割の希望を託してドアを開けるが、「すいません。満席なんです」と女性店員さんに断られる。
仕方がないので、綾小路通にある「五黄の寅」まで行ってみるが、ドアの前に長蛇の列……
諦めて、既に席が用意されていることを願って「串鉄板ぞろんぱ」に戻る。

串鉄板を注文(食べてから思い出したので、こんな写真)

「こんな時にしかお会いできなくて」
と言うのは、東オーナーの奥様。かなり忙しいので応援に借り出された模様。
本当に厨房もホールも休む暇がないくらいの忙しさで、注文するタイミングが計れない。
物欲しげな瞳で店員を見つめること数十秒……
「ゆってくださいよ!」

『よこやま』(長崎壱岐・重家おもや酒造)

あまりの忙しさに、「焼きは時間が掛かるって(お客さんに)言って」という声が飛び交う。あまり手間が掛からないようにと、アオリイカのお造りを注文。

「今年は六角(「和鉄板ぞろんぱ」のこと。ちなみに「串鉄板ぞろんぱ」は「室町」と呼ばれる)に行かないんですか?」
東さんが聞く。
「もう、22時に予約取ってある。もし、『シャンパン持ってこい』って電話があったら、一番安いシャンパン持ってきて!」
「了解しました(笑)」
そんなことを言っている間に22時を超えてしまったので、「今、室町にいる。これから向かう」と六角に電話しておく。

22:30 和鉄板ぞろんぱ

和鉄板ぞろんぱ」のカウンターは既に大盛り上がり。
なるほど、あの時『シャンパン合戦』のきっかけを作った「師匠」と呼ばれている常連さんがいる。
ところで、何故「師匠」なのかというと、このお店をオープンするに当たって当時の店員全員が、お客さんへの「つかみ」として彼に簡単なマジックを習ったそうで、「やから、僕らにとっての『師匠』なんです」。
輪ゴムを使った簡単なマジックで習った成果を見せてもらう。レベルは、「……お、おーっ……凄い(半笑い)」と皆が御愛想で言う程度。
「年越しなんで、『一文字いちもんじ』(お好み焼きなどで使う"ヘラ"のこと)、でっかくしときました」

年越し焼きそば。奥に見えるのが、通常の小さい一文字

2023年1月1日、午前零時ちょうど。粛々と『シャンパン合戦』が始まったのであった(店員さんが気を遣ってリーズナブルなシャンパンを用意してくれた)。
25時前に「今年も宜しく」と言って退店。

2023年1月1日(4日目・元日)

7:00 起床

元日早々、ホテルのコインランドリーで洗濯。

洗濯 30分・300円。乾燥 30分・100円

朝から何故か、買い置きしてあった「どん兵衛」を食べる。

10:15 松尾大社~梅宮大社

阪急電車でお酒の神様・松尾大社へ向かう。
去年の「服酒守り」をお返しし、お参りをしてから新しい「服酒守り」を購入。
恒例のお神酒を購入(ではなく、一応「お布施」のお礼としてお神酒と升が供されるていになっている)。

2023年は癸卯みずのとう
通常は升にお神酒を注いでくれるが、コロナ禍なのでカップ入り

おみくじを引くと「末凶」。

すえついにおのがねがひりぬべし。
たヾけよひと正道まさみち

『たヾ踏み行けよ人の正道』。胸に染みるなぁ。

その後、近くにある梅宮うめのみや大社まで歩く。ここもお酒の神様。

快晴の元日

お参りをし、小さな紙コップに注がれたお神酒(こちらは無料)もしっかりいただく。

12:00 カプリ食堂

阪急電車で烏丸まで戻り、烏丸通を五条通近くまで南下して、大晦日に断られたリベンジで、「カプリ食堂」に入る。

以前は、良く知って下さっていた男性店員さんが2人ほどいたのだが、共に各々の事情で辞めてしまったので、今日は話しかけられることもなく静かにビールを飲む。

以前、この辺りはオフィス街で休日や年末年始は落ち着いていたのだが、近年、烏丸五条付近に大資本のホテルが乱立し、いつでも混雑するお店になった(いつもオーナーと話しているのが、ホテルが乱立したのに加え、たぶん、四条辺りからお店を探して南下してきた人の「最後の砦」になっているのでは?ということだ。確かにこの先、京都駅までチェーンのファストフード店が数軒あるだけだし)。
この日もひっきりなしにお客さんが入店するのを見ながら、独りカウンターで飲み(ビールからハイボールに切り替えた)、13時前に退店。
帰り際に「昨日はお断りして、すみませんでした」と挨拶される。
……バレていたのか……

13:30 八坂神社

京都のお正月といえば、八坂神社へ詣でなければ気分が出ない。
というわけで八坂神社へ向かうが、四条大橋を越えたあたりから流れが悪くなる。といっても、大きな混雑ではなく、ゆっくり歩いている人がいるだけのよう。
お馴染みの西門へはすんなり入れたが、そこからいきなり牛歩になる。
何年かぶりに混雑している模様(この後色々なお店で、「今年の八坂さんは久しぶりにヤバイ」という声を聞いた)。
何とかお参りだけして、丸山公園を抜け、祇園北の歓楽街(お昼、しかも元日は静かだ)の狭い路地を抜けて、川端通の「JAM」へ到着。

14:00 JAM

「早速、松尾大社帰りですね」
店主の池田さんが、私の升を見て言う。

お正月限定の「干支飲み比べセット」を注文。

左側から『田酒でんしゅ』(青森・西田酒造)、『田光たびか』(三重・早川酒造)、『ダルマ正宗 令和5年 卯年限定ブレンド』(岐阜・白木恒助昇天)。
『ダルマ正宗』の蔵元さんは、古酒に力を入れておられて、このお酒は、過去の卯年(昭和50(1975)年、昭和62(1987)年、平成11年(1999)年、平成23(2011)年)に造って寝かせておいたお酒をブレンドしているという、とても変わった(趣向だけでなく味も)お酒になっている。
今年が令和5年だから、このお酒は、3つの元号を経て造られたというのは感慨深い(ブレンドされた最古のお酒が造られる前に生まれていた私、というのも感慨深い)。
年始のご挨拶などして、退店。
年始のご挨拶といえば、忘れてはいけないのは……

15:00 ひっとぽいんと

そんなわけで、今日も(今年も)、「ひっとぽいんと」で飲んでいる。
年始なので、マスターの安原氏にもビールをご馳走し、2人で乾杯。
お店の恒例行事なのだが、年始のカウントダウンの後、安原氏を含め常連客たちと八坂神社へ初詣に行く(私は参加したことがない)。
「今年はヤバかった」
人が多くて歩けなかったのに加え、寒さがヤバかったらしい。
「爪先から凍っていくのがわかった」

16時にお店を出て、一旦ホテルへ帰り、休憩。
休憩は大事だ。居酒屋探訪家の太田和彦氏も、こうおっしゃっている。

旅に出た夜は夕方から飲み始めるが、この頃は体がもたず合間にコーヒーブレーク、またはいったんホテルに戻って一時間ほど寝てまたご出勤というパターンも増えた(ご苦労なこってす)。

太田和彦著『ひとり飲む、京都』(新潮文庫) 夏編 4日目

一昨日の教訓から、ちゃんと目覚ましをセットしておく。
19時過ぎに起き出し、ゆるゆると身支度してお正月の街へ、震えながら出てゆく。

年末年始にやっている飲食店は、私が京都で過ごすようになった10年前からはずいぶん増えたが、それでもお休みのお店の方が断然多い。
逆に、10年前に比べて年末年始を京都で過ごす観光客は格段に増えた。
そんなわけで、結局、営業しているお店はどこも満席……どころか、お店の前に行列が出来ているところも多い。

「串鉄板ぞろんぱ」をガラス窓越しに覗くとカウンターに空きがあるようだ。
恐る恐る入ると、オーナーの東さんが「御予約は?」と聞くので「してない」と答えると、「すみません。満席なんです」。
すかさず「でしょうね」と応え、お店を後にする。
出ていくときに、東さんが「電話してくれればいいのに」と言うので、深く頷く。確かに……

20:00 五黄の寅

どうしようかと思案して、とりあえず近所だからと、昨日(大晦日)長蛇の列が出来ていた「五黄の寅」に、ダメ元で向かう。
やはり、ドアの前に人が……
どうやら4人で来たらしいお客さんに店長のアカリさんが申し訳なさそうに言う。
「20時半まで30分だけならお席がご用意できるんですが」
飲み屋に30分だけの滞在(しかも4人)はないだろうと思っていたら、なんと「入ります!」。
その切迫感に思わず、きっとここに到達するまでに何軒も断られたのだろうと、同情してしまう。
その切迫感に押され、私も入店し、アカリさんに「1人はいけます?」と聞く。
「あ、お久しぶりです!お一人様ならカウンター空いてます」
ちょうど、お客さんの入れ替わりのタイミングだったらしい。
まさに、捨てる神あれば拾う神あり(使い方合っているだろうか?)。

生ビールと「あつあつ 肉豆腐」を注文。

満席の店内はとても賑やか。アカリさんを含めホールの3人の女性は大忙し。
「センセ、お酒どうされます?」
ビールが無くなったのを見てアカリさんが聞く。
このお店では何故か「センセ」と呼ばれている私は、もちろん、そう呼ばれるような職業ではない(それ以前に、「東京からちょくちょく来る酒飲み」としか知られていない。名前も明かしたことがない)。
アカリさんのお薦めで飲み比べセットを注文。

『鳳凰美田』(栃木・小林酒造)、『白龍 ドラゴンウォーター』(福井・吉田酒造)、
鶴齢かくれい』(新潟・青木酒造)

肉豆腐をアテに日本酒をちびちび呑んでいると、女性店員さんから「日本酒お好きなんですか?」と聞かれる。
「好きです」と答えると、「よかったら、これ呑んでいただけないですか?」とお猪口を差し出す。
「他のお客さんが注文された『英勲えいくん』なんですが、私が調子に乗って多く燗つけしてしまって」
もちろん、ありがたくいただく。
その女性店員さんに「どちらから?」と聞かれて「東京から」と答えると、「本当は年末、東京のジャニーズのカウントダウンでキンプリ(King & Prince)観たかったんですけど、抽選に外れてしまって」。
「解散するんですよね?」
「だから、(抽選の)倍率が高かったのかもしれません」
解散の経緯も相まって、ラッキーにも観に行けた人たち、悔しくも落選した人たち、共に複雑な心境での年越しなのだろうと少し切なくなる。

22時、アカリさんのお父様が入店。一緒に入って来たのは名古屋に住む親戚の人たち。小さい子どもが2人いる。
「えーっ、サプライズ!」
どうやら親戚が来ていることは知らされていなかったよう。
「アカリ、見てぇ!」
小さい女の子が立ち上がって、お箸が上手に使えるようになったことをアピールする。
それを見て、お客さん全員が頬を緩める。
まだお喋りできない小さな男の子は厨房の様子が珍しいのか、クリクリまん丸な瞳で興味津々に見つめている。
その姿に女性のお客さんたちが悶絶。
賑やかに楽しむ親戚の方たちを見ながら、子どもの頃のお正月は毎年、親戚の集まりだったことを思い出す。
あの頃は、子どもの数も多く、私も同年代の親戚たちと楽しんでいた(もちろん、最大の楽しみは「お年玉」だったわけだが)。
「賑やかですみません」
謝るアカリさんに「いや、こっちまで親戚の集まりに参加してるみたいで、お正月気分を味わわせてもらってます」と応じる。

そんなアカリさんが、「これよかったら、ちょっと余ったんでサービスです」。

『勝駒』(富山・清都酒造場)

最後に『真向(MACCO)』(京都)を注文。

ラベルのイラストが素晴らしい

日付が変わろうとしている。そろそろおいとましよう。
新年の挨拶を交わし、お店を出る。
お店の中では賑やかな宴が続いている。
とても新年らしい夜、外は寒いが心は温かいままホテルへ帰る。

2023年1月2日(5日目)

7:00 起床

とりたてて見たいテレビもないので、この旅の写真を整理(といっても、写真を撮る習慣がないので、肝心なものは写っていないのだが)し、本稿を書き始める。
京都に来てからのことを辿りながら、お酒や料理より、お店の雰囲気だとか交わした会話だとかが思い出されて、ついニヤニヤしてしまう。
そこで起こったこと・話したことが全て書けるわけではないので、取捨選択や文章表現に迷ったりしている間に、11時が近くなる。
ホテルを出て、京都御苑を経由して、先日行った「カプリ食堂 Lemone Verde」に向かう。

11:30 カプリ食堂 Lemone Verde

年始の挨拶を交わし、ランチを注文。
「えっ、ランチですか?珍しい」
「ずっと、酒呑んでつまみを食べてばかりで、"ご飯欠乏症"なんだよね」
「日本人、ご飯食べないと調子悪くなりますよ」

チキンカツ~トマトレモンタルタル~
当然、ビールも注文

オーナーから年末年始の状況を聞くと、やはり「けっこうヤバかったですよ」。
「大晦日の夜、五条(「カプリ食堂」のこと。ちなみに、このお店は「今出川」と呼ばれる)に行ったけど、断られた。けっこうショックだった」
そんな話をしていると、若い女性が入って来て、オーナーと親しく話しながら慣れたようにカウンターに座る。
オーナーが私に小声で言う。
「バイトの子ですよ。働け!って感じなんですけどね」
これからこのお店で新年女子会らしく、他の2人が来るまでの間、彼氏と年末年始を過ごしたことを嬉しそうにオーナーに報告している。
それを微笑ましく聞けるのは「大人の余裕」ということなのかもしれないが、一方で、ちょっと寂しく思うのは「(経験はないが)父親心」なのかもしれない。
そんなことを思いながら、13時頃に退店。

京都御苑を通り、思いついて錦市場を歩いてみることにする。
御池通の北側は人通りが少ないが、南側に入ったとたん、突然人通りが激増する。繁華街とは、四条通から御池通あたりまでのことなのだろう。
覚悟はしていたが、錦市場はけっこうな混雑ぶり。
閉まっているお店も多く(市場が休みなので)て比較的歩けるが、不意に通れなくなるのは、たいてい、テイクアウトに並ぶ列が通行を妨げているから。
寺町通も新京極もそれなりの賑わい。

14:00 JAM

お店に入ると、大学ラグビーのテレビ中継を熱心に見ている常連の女性のお客さん一人だけ。
オーナーの池田さんが「疲れた、眠い」と愚痴をこぼしている。
「昨日、予想外に人が入りまして。まぁ、それだけ売り上げになったんですけどね」
そこで一つため息をつきながら、店内を見回して呟く。
「怖いのは今日ですよね……このままなのか、悪夢の再来なのか……」

蒼空そうくう』(京都・藤岡酒造)
『亀齢 萬事酒盃中』(広島・亀齢酒造)

ラグビーを見たり見なかったり、話したり黙ったりしながらお酒を呑み、退店。

16:00 ひっとぽいんと

このお店に来ると、きっとマスターの人柄なのだろう。どうしても毒を吐きたくなってしまう。
「新年やからってきよくいる必要ないやん。どんどん黒くなれ!」
……やっぱり、マスターの人柄なのだろう。

17:00 ホテル

昨日からホテルのロビーにお神酒の樽が置いてあるのが気になっていた。

『招徳』(京都・招徳酒造) 「徳を招く」まさに新年に相応しいお酒

じっと見ていたらスタッフの方が気がついてくれ、「どうぞお召し上がりください」。

お昼から呑み続けているのに、まだ呑める!

お神酒をありがたくいただき、部屋に戻る。
昨日の、「電話してくれればいいのに」というありがたい御忠告に従い、「串鉄板ぞろんぱ」に電話。
20時過ぎで1名の空きはあるかと聞くと、「時間がわからないので、空き次第こちらからお電話差し上げます」とのこと。それを承知して電話を切ると、すぐに折り返しで電話。
「今からでしたら、すぐにご案内できます」
それを断り、20時過ぎに空きが出たら連絡いただけるように再度お願いする。
「では、20時15分から30分の間にご連絡差し上げます」
安心して19時くらいまで寝る。

20:15 カプリ食堂

ホテルから「串鉄板ぞろんぱ」まで時間が掛かるので、連絡をもらえればすぐにお店に行けるように早めに出発……したら、予想外に早く着き過ぎてしまう。
20時15分きっかりに電話はないだろうと予想し、「カプリ食堂」でビールを飲みながら時間をつぶす。
20時半にビールを飲み終える。まだ電話はない。
お代りを注文するか悩んでいるところに、ようやく電話が。

20:45 串鉄板ぞろんぱ

お店に入ると出迎えてくれた女性店員さんが「毎日すみません」と声を掛けてくれる。
「よう来てくれはりました」と言うオーナーの東さんに、「昨日、『電話しろ』って言われたから、電話してみました」と答えると、店員さん全員が苦笑する。
1月2日のこの時間、カウンター席のお客さんは常連さんや知り合いの方たちばかりのよう。店員さんと慣れた雰囲気で談笑している。

お正月らしい突き出し

「大晦日の六角、シャンパン抜いたんですか?」
「もちろん。でも、落ち着いた雰囲気だったよ」
「あの後、六角に電話したんですけど、隆幸(六角の店長)、ちゃんとしてたんで、やったんかなぁ、と。あいつ、飲んでました?」
「ちっちゃなグラスにちょーーーっとだけ」
「前の時ひどかったから、懲りたんでしょうね」
六角の店長は、ちょっとのビールでも顔が真っ赤になるほどお酒に弱く、前回の『シャンパン大会』の時は、閉店後に立つことができなくなって、お店で寝ていたそうだ。

お造りや串焼き鉄板を食べながら、お酒を呑み続けていると、女性店員さんが「順調に呑んではりますね」と笑う。
時間も遅くなり、お店も落ち着いてきたので、"ちょんまげイタリアン侍"(またの名を"パスタ魔人"。詳しくはこちら)に「ねぇ侍。お任せでいいから、年越し""パスタ(麺類だし)作ってくれる?めっちゃ少なめで」
張り切ってパスタを作る侍の迫力に押される女性店員さんと目が合い、「何か、凄いですね」と笑い合う。

侍入魂の「年越し"た"パスタ」(めっちゃ少なめ。激ウマ!)

隣の席のご婦人の「同じものいただけますか?」という言葉に気分を良くし、さらに張り切ってしまう侍なのであった。
そんなこんなで23時が近い。「今年も宜しく」と言い合い、お店を出る。
もう歩きたくないので、地下鉄で帰る。

2023年1月3日(最終日)

6:00 起床

今日は室内清掃が入る。明日チェックアウトなのに必要なのかとも思うが、規則なので仕方がない。ちょうどいいので、チェックアウトしやすいように荷物をまとめておく。
それから、本稿の続きを書く。
進みは悪いが、とりあえず1月2日の「串鉄板ぞろんぱ」のところの途中まで書けた。
室内清掃の時間に合わせて部屋を出る。
相変わらず、寺町通の「スマート珈琲」「三嶋亭」には行列が出来ている。
色々迷って、結局柳馬場の「馳走いなせや」でランチを食べることにする。

11:30 馳走いなせや

席に案内され注文しようとしたら「お正月は日替わりランチはないんですよ」と言われ戸惑う。「もしかして日替わりをご注文されようとしてました?」「……そうです」「ああ、すみません」。
代わりに、このお店の名物ランチ「親子丼セット」を注文。

もちろんビールも

暫くして馴染みらしい女性客が来店。大阪でのジャニーズのコンサートを観に来たそうで、女性店員さんに「お目当ては?」と聞かれ「キンキ(Kinki-Kids)」と答えている(たぶん)。年末年始のジャニーズのタレントたちは、物凄く忙しいのだろうし、それを応援するファンの人ももちろん忙しいのだろう。

このお店は日本酒の品揃えが良く、それが目当てでもあったのだが、さすがに飲み疲れなのかビール1本でお腹が膨れてしまう。諦めてお店を出る。
この時間では室内清掃は終わっていないだろうから、暫く辺りをブラブラする。新京極の名物居酒屋「スタンド」の前に行列がないと思ったら、しっかり「満席」の札が出ている。「タイガー餃子」の前にも若者たちが列をなしている。
さすがに疲れてきたのでホテルに帰りフロントで確認すると、清掃は終わっているとのことで、とりあえず部屋に戻ってここまで書く。

15:00 ひっとぽいんと

サービスチケットが1枚しか残っていないので、それは自分で使い、現金で安原氏にビールをご馳走する。
「今回は1日も休まず"皆勤賞"やな」
乾杯しながら安原氏が一応、褒めてくれる。
暫しこの京都旅行で起こったことなどを披露していると、お店のドアが開く。
入ってきたのはお客さんではなく、年末に「スキーで怪我した」バイト君。
何度も「すんません」と謝っている。
幸いにも軽傷だったようで松葉杖も使っていない。
「新年やし、ちょっと飲んでく?」
安原氏が言うと、「いや、まだ足痛いんで車で来たんですよ」と彼。
山科方面から市内に来たそうだが、道路の込み具合が「ヤバイ」らしく、「ここまで20分くらいで着くやろうと思ってたら、1時間以上掛かった」とのこと。まだUターンラッシュが続いているのだろうかとも思ったが、安原氏によると「山科から市内への道が混んでるんやから、別ちゃう?」。
「ちょうどいいから、給料渡しとくわ」
バイト代を受け取ったバイト君は、「じゃぁ、コーラ飲みます。バイト休んだうえに、給料もらってそのまま帰れません」。
心根の良い青年だと思ったのだが、どうやら別の意味もあるよう。
「前に一回、ガチで切れてるとこ見たんで。マジで怖かったです」
普段から「口が悪いひねくれ者(失礼)」の安原氏だから気にすることないんじゃない?と冗談交じりに言うと、バイト君は真剣な顔で「それは知ってるんですけど、だからあの時のガチ切れが怖かったんですよ」。
……私も、安原氏を本気で怒らせないように気をつけよう。
コーラ1本飲んでまたも謝りながら(どれだけ恐れているのか?)お店を後にしたバイト君に続き、私もお店を出ることにする。
「じゃぁ、また今度」
こう言って別れる京都旅行もいいなぁと、柄にもなく感慨に浸りながらも、しかし私は、次のお店に行くために地下鉄の駅に向かっている。

17:15 五黄の寅

いつも15時から営業しているお店なので、もう少し早い時間に来る予定だったが、「ひっとぽいんと」でだらだら過ごしたので遅くなった。
夕方のお店はテーブル席に数組のお客さんがいる程度で、カウンター席は全て空いている。とはいえ、18時半には予約でほぼ満席になるそうだ。
「一昨日はありがとうございました」と言う、店長のアカリさんに、「こちらこそ、入れて頂いて感謝してます」と頭を下げる。

『澤屋まつもと 守破離』(京都・松本酒造)

「あの後、親戚の方たちはどうしたんですか?」
「(このお店の)系列店になだれ込んで、朝までカラオケ大会でした」
……お元気なことで。
「次はいつ来はるんですか?」
「決めてないけど、GWあたりかなぁ」
「じゃぁ、GWに待ってます」
こう言って別れる京都旅行もいいなぁと、柄にもなく感慨に浸りながらも、しかし私は、次のお店に行くために四条通を歩いていた……のだが、19時の「益や酒店」は大混雑。
店員さんに「満席なんです」と告げられ、諦めてホテルへ帰る。
ここで今回の飲みは終了しようと思い、明日の早朝にチェックアウトするべく荷物をまとめ、早々にベッドに潜る。
が、やはり諦めきれなかったのか、22時前に目覚める。
さすがに「益や」も空いているだろうと、寒空の中ホテルを出る。
寺町通の閑散具合を見て期待に胸を膨らませたのだが、お店は相変わらずの混雑ぶり。「隣のお客さんとの間が狭くなるのですが」という条件を了承し、何とか入店させてもらう。

22:15 益や酒店

このお店は「立ち呑み」と「座れるカウンター・テーブル席」とが選べる。
「カウンター・テーブル席」には、「お通し」としておつまみ1品の他、少量の日本酒が提供される。

『善吉』(長野・中善酒造)は私が注文
手前のお猪口が「お通し」(銘柄は失念)

カウンター左隣の若いカップルは韓国人らしいが、空のグラスが何個か置かれており、今も片言の日本語で店員さんとお酒を選んでいる。
右隣の中年男性は、スマホ片手に一人呑み。その右隣の年配男性は常連らしく店員さんを捕まえてはお喋りに興じている(お酒目当てではなく誰かと話しがしたいという気持ちが強いように見える)。

『遊穂』(石川・御祖みおや酒造)
寒北斗かんほくと 卯之祝酒』(福岡・寒北斗酒造)

お店の入り口近くの立ち呑みスペースでは男性4人女性2人の若者たちが賑やかにお酒を呑んでいる。が、どうやら、同じグループではないらしい。
男性2人はどうやら観光客らしく英語を話しており、それを1人の女性が通訳している。見ている限り、他の3人の日本人たちも、言葉なのか雰囲気からなのかはわからないが、ある程度は自分で内容を理解しているようで、ほぼリアルタイムで会話が成立していそうな感じがする(後に、女性2人組→観光客2人→日本人男性2人と帰ってゆき、その様子を見る限り結局は、2人連れ3組だったと思われる。こうやって全くの他人同士がお酒を媒介に(一時であっても)親しくなれる、というのが立ち呑みの魅力である)。
外国人のカップル、物怖じせず外国人と談笑する若者たちに対し、私を含めた年配の日本人男性は、スマホの有り(右隣の男性)無し(私)によらず独り殻に閉じこもったり、店員さんたちに構ってもらうことで満足を得たり(私の誤解かもしれないが)……。何か、現代日本の縮図のような気もしてくる。
とはいえ、立ち呑みスペースにいた若者を見る限り、日本(或いは世界)の未来は、それほど悲観しなくても良いのではないか。
京都最後の夜、寺町通をホテルに戻りながら、そんなことを考えて、少し嬉しくなった。やっぱり、「益や酒店」に来て良かった。

23時過ぎにホテルに戻り、ベッドに潜りながら今回の京都旅を振り返る。
年末年始の居酒屋さんはどこも満席で断られることが多かったが、それはそれで次の何かにつながり、結果的に楽しいことばかりだった……
次はいつ京都に来ようか。そんなことを考えながら眠りにつく。


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