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映画『AT THE BENCH』公開中~奥山由之写真集『君の住む街 復刻版』~

街-特に大都会・東京-は、変化が激しい。
何げなく歩いていて、ふと後ろを振り返ると、そこにあったはずの物が、もう、ない。
というか、そこにあったはずの物が思い出せない。
変わりやすい街を思い出そうとすると、それはいつだって、少しフォーカスが甘く、輪郭がおぼろげだ。

映像作家・写真家の奥山由之は言う。

東京という街は、いつだってうねるように、まるで生き物のように、部分的な変化を続けている。便利になったり、綺麗になったり、勿論いいこともあるのだけれど、いつの間にか無くなってしまう景色を懐かしむ間もなく、記憶は塗り替えられてしまう。
愛着を抱いていた場所でさえ、久しぶりに訪れると「前はどんな様子だったけ…」なんて忘れてしまうこともしばしばだ。

映画『AT THE BENCH アット・ザ・ベンチ』公式サイトより

少女もそうだ。
すれ違って、ふと振り返ると、そこには印象とは違う大人の女性が立っている。
思い出す少女は儚げで、やっぱりフォーカスが甘い。
そこにいる女性は確かにかつての少女だが、印象も、佇まいも、醸し出す色香も違う。

2017年に刊行された奥山の写真集『君の住む街』が、2024年に青幻社から復刻されたのは意味があることだと思う。

ここには2014~16年の東京の街が記録されている。
そしてその、少しフォーカスが甘い東京の街の風景のいくつかに、おぼろげな少女たちが写っている。
おぼろげではあるが、しかし確かに少女たちがそこにいたことは、彼女たちが放つ、少女特有の煌めきが証明してくれている。
あの時、彼女たちは確かにそこにいて、でも、少し目を離した隙に、彼女たちは大人へと成長している。

その成長が確信できるのは、私が今開いている写真集が『復刻版』だからだ。

2024年に復刻された写真集は、2014~16年の東京の風景とともに封印された少女たちを開放する。
小松菜々、二階堂ふみ、久保田紗友、有村架純、成海璃子、ヤオ・アイニン、門脇麦、黒崎レイナ、広瀬すず、松井愛莉、山本舞香、清野菜名、新木優子、夏帆、木村文乃、本田翼、飯豊まりえ、水谷果穂、杉咲花、中村ゆりか、平祐奈、早見あかり、岡本夏美、橋本愛、多部未華子、吉岡里帆、高畑充希、森川葵、中条あやみ、忽那汐里、小芝風花、川口春奈、田辺桃子、駒井蓮、佐久間由衣(リスト番号順、敬称略)

ベンチも移ろう。
確かにそこに誰かいたのに、でも、少し目を離した隙に、そこにもういない、或いは別の人物になっている……
ベンチはいつだってそこにあるのに、でも、いつだって移ろっている。

奥山由之は移ろうベンチを舞台に映画を撮った。
その名も『AT THE BENCH アット・ザ・ベンチ』(2024年11月15日公開)。

変わりゆく景色の中で、変わらずそこにいるベンチ。古ぼけた座面はなんだか頼りなく、妙な味わいと個性を放っていて、後ろから眺めたときの、まるでおじいちゃんのような哀愁感に僕は心を奪われ、「いま、このベンチを作品として残しておかないと後悔しそうだ」と思い立ち、ベンチだけを舞台に、誰かの会話を集めたオムニバス映画を作ることに決めました。

というわけで…
『アット・ザ・ベンチ』は、変わり続ける東京という街の中で、変わらずに残したい ”とあるベンチ” を舞台に、四季折々、ある日のある人たちのちょっとした思い出の時間を紡ぎたい、という個人的な願いからスタートした自主制作映画です。


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