コロナ禍初期、女優の杏さんが加川良の「教訓Ⅰ」の弾き語り動画をネットにアップしたというニュースを見た(動画は見てないが)。
「教訓Ⅰ」とは
「教訓Ⅰ」はこう歌い始める(歌詞は手持ちの1989年にCDで復刻された「URCコレクション」シリーズの加川良『教訓』の歌詞カードから引用)。
この曲は関西フォークの流れを汲む完全なる「反戦歌」だが、上記歌い出しに続く歌詞は、この「コロナ禍」の状況の中だと、違って聞こえる。
「加川良」ってどんな人?
ところで加川良という人について、なぎら健壱著『日本フォーク私的大全』(ちくま文庫、1992年第2刷)によると、
とスゴイ人のようだが、別の人からはこう紹介されている。
「教訓Ⅰ」は『教訓』というアルバムの1曲目に収録されている。前述のなぎら健壱著『日本フォーク私的大全』を再び引用する。
「URC」って?
ここで出てきた「URC」という言葉について、坂崎幸之助著『坂崎幸之助のJ-POPスクール』(岩波アクティブ新書、2003年第1刷)で説明する。
田川律著『日本のフォーク&ロック史~志はどこへ~』(シンコーミュージック、1992年初版)で補足する。
加川良のスタイル
加川良に戻って、彼の音楽に対する姿勢について、前述の『日本フォーク私的大全』を再び引用する。
そして杏さんの弾き語りによって、また「教訓Ⅰ」に注目が集まった。
ただ、残念なのは、それが『命はひとつ/人生は1回/だから/命を/すてないようにネ』という歌詞が誰にとってもリアルに聞こえる状況下で、だったことだろうか。
追記
何やら、歌手が政治を語ってはいけないのだそうだ。
「教訓Ⅰ」は、まぎれもなく「政治色の強い反戦歌」である。
でも、よく考えれば、昔から「歌手は政治を語らないものだ」と思われていたのかもしれない。
そうでなければ、高田渡の「自衛隊に入ろう」を聞いて、本当に自衛隊に入ってしまうなどというコントみたいなことが現実で起こるはずがないのだから(だから高田は、自らこの曲を封印したのだ。Wikipedia参照のこと)。
ひょっとしたら「教訓Ⅰ」も初めから、「感染病で死なないでね」とか、あるいは「自殺しないでね」という歌だったのかもしれない。
それでも思う。
故・忌野清志郎が反原発ソングを歌って、庶民から喝采を浴びた時代は幻だったのか?、と。
「歌手は政治を語るな」と言っている人たちは、CMなどでよく耳にする「タイマーズ」の「デイ・ドリーム・ビリーバー」をどんな気持ちで聞いているのだろう…
(2021.01.07 追記)
2021年1月7日現在、「教訓Ⅰ」の『命』は文字通りの「生命」を意味するとともに、自分であるための「尊厳」「自由」「意志」をも意味すると考える。
『御国のため』などと言われて、『あわてて つい フラフラと』それらを簡単に明け渡したりしないよう。
世間から『バカ』だと罵られたくない一心で、安易に『神様』と言われる立場に回らぬよう。
生きている者を『バカ』と罵る側にも、回らぬよう。
罵る側と同じレベルまで堕ちぬよう。