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AO入試(総合型選抜)を勝ち抜くたった1つのスキル。それは「〇〇」を明確にすること。

Zoom会議の時に、画面共有で動画をみせようとYoutubeページを開いたら、閲覧履歴がミポリン(中山美穂)だらけになっているのを見られてちょっと恥ずかしかった、子どもイノベーター塾、塾長のトビーです。

ということで、年代は察して頂けるかと思いますが、最近の「受験」は変わってきています。AIの実用が進みつつある現在、人に求められる役割が変わってきています。それに歩調を合わせるように、学校教育、そして受験制度にも変化が起きているのです。

そんな折ですが、子どもイノベーター塾の生徒さん(小6)のために、私立受験の対策を特別にやってもらえないかと依頼を受けました。

ご存じの通り、普段は受験対策の塾のような活動はしていません。世の中の課題を巨大な「ドラゴン」になぞらえ、生徒たちは、ドラゴンを狩りにいく冒険者。「みんなで、問題狩りに行こう!」を合言葉に、一般とは違う視点から、ユニークな解決策を見出し、うまくいかない可能性を排除し、実行し、世の中にイノベーションを起こす人財を育てるための授業を展開しています。

受験指導は普段はしていないのですが、そうはいっても、小学生が6年生が解く受験問題です。教えられるに決まっていると思っていました。(それが、大きな間違いだったことは、後ほど…)

授業の内容の前に、すこし背景を解説しますね。
学校教育に起きている変化の1つが、入試制度の変革です。
日本では、大学に一般入試を経て入学するする人は、入学者全体の4割程度にまだ下がってきています。

一般入試というのは、英語、数学、国語などの科目試験の点数で合否が決まる入試制度のことです。一般入試の比率が下がってきているのは、科目の知識の暗記、知識を応用して様々な問題を解くパターン暗記への過度な偏重が見直されつつことの現れかと思います。

代わりに増えてきているのが、推薦入試やAO入試です。AO入試は、総合型選抜とも呼ばれます。AO(Admission Officeの略)入試とは、大学の入学ポリシーにあった人を選び、大学への入学許可を出す仕組みのことです。
この入試制度は、大学のみならず、私立の高校や、中学でも広がりを見せています。一般的には、筆記試験、小論文、面接などの組み合わせで選考が進みます。

今回、特別授業を依頼されたのも、そのようなAO入試に属するものです。

では、ある中学の入試問題を見てもらいましょう。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
金子みすずの詩、「星とタンポポ」を聞いて、次の問いに答えなさい。
問題:あなたの身の回りで、あるのだけれど、見えないものはなんですか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――

実際には、詩は印刷されて渡されるのではなく、朗読を1度だけ聞く仕組みになっていますが、ここでは、文字で共有します。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
星とたんぽぽ                金子みすず

         青いお空のそこふかく、
         海の小石のそのように、
         夜がくるまでしずんでる、
         昼のお星はめにみえぬ。
         見えぬけれどもあるんだよ、
         見えぬものでもあるんだよ。

         ちってすがれたたんぽぽの、
         かわらのすきにだァまって、
         春のくるまでかくれてる、
         つよいその根はめにみえぬ。
         見えぬけれどもあるんだよ、
         見えぬものでもあるんだよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

試験時間は30分。これだけです。

科目試験とは、大きく異なることが分かると思います。

実は、知り合いで、学習塾の先生をやっている人がいるのですが、AO入試、どうやって合格できるだけの力が着くように教えたら良いのか困っているらしい。

その気持ちはわかります。
私が、初めてこの問題を目にしたときに感想は
・いや~、すぐには思いつかん。
・時間だけたっぷり与えられても、答えを思いつかないかも…
・自分が解くならまだしも、生徒たちが解けるように教えるにはどうしたものか?
・実際には、どんな問題が出るか分からない状況で、戦える力をどう伝えたらよいのか?
みたいな感じでした。

さらに、

・これって、子どもイノベーター塾で教えているような、論理的に物事を整理する力とか、ジレンマを解消する力とか、目標を達成する力、そしてそれらの力を支える考えるための3つの道具を応用して何とかなるものなのか?

という疑問もわいてきました。

実は、この特別授業をやった時、生徒が5名いたのですが、授業の最後の方は保護者の方もいらっしゃって、授業を見学していたんです。保護者のみなさんも、ため息。「えー、こんな難しいことやっているの」という反応でした。

では、私が何を考えて、授業をどのように作っていったのか、共有したいと思います。

この受験問題に限らず、AO入試では、多くの問いを投げかけられますよね?
例えば、
・なぜ、この学校に入学したいと思ったのですか?
・この学校に入学してチャレンジしてみたいことはなんですか?
・これまでに何か社会活動をやってきましたか?

これらの質問って、一見、1つ1つの答えを準備するしかないように見えます。でも、私はそうではないと考えました。

これが入学試験の選考のための質問であることを考えると、相手に印象付ける答えをしないとなりません。

・なぜ、この学校に入学したいと思ったのですか?
⇒「うちの近所だからです」でも、受け答えとしては成り立っていますが、
 それでは、学校が求める人なのかどうかはわかりません。

・この学校に入学してチャレンジしてみたいことはなんですか?
⇒「サッカーです」でも、受け答えとしては成り立っていますが、
 その答えが、入学を決定づけるとは思えません。

・これまでに何か社会活動をやってきましたか?
⇒「大人と一緒に地域のお祭りの準備を手伝ってきました」でも、受け答えとしては成り立っていますが、これが十分にインパクトある活動かどうかは伝わりません。

どんな答えをするにしても、「なぜ」それをやってみようと思ったのかとか、「なぜ」そういう目標にしたのかとか、説得力がある受け答えをしようとおもったら、「理由」をきちんと述べて、話を補足することが欠かせません。

これは、筆記試験でも、口頭試験でも活用できる、基礎的な力です。

子どもイノベーター塾の生徒たちは、箱と矢印を使って、因果関係を整理することを日々トレーニングしています。因果関係がはっきりするということは、物事が起こっている「理由」を明確にすることに他なりません。

金子みすずの詩の中では、「見えないければ、あるんだよ」という言葉が、繰り返され、もっとも印象に残ります。

そこで、今回のお題としてとりあげた試験問題でも、「理由」を明らかにするという作業をして、問題を分析することにしました。


ハコと矢印で問題を整理した


・星は昼間はみえない。なぜならば、星は昼の間はお空の底に沈んでいるから。
・もしも、星は昼の間はお空の底に沈んでいるならば、結果として、星は昼間は見えない。

・星はある。なぜならば、星は夜になると光って見えるから。
・もしも、星は夜になると光って見えるならば、結果として星はある。

・強い根は見えない。なぜならば、根は土の下に隠れているから。
・もしも、根は土の下の隠れているならば、結果として、強い根は見えない。
・強い根はある。なぜならば、春になると、元気なタンポポの花が咲くから。
・もしも、春になると、元気なタンポポの花が咲くならば、結果として強い根がある。

このように、2つの箱を上から読んでも、下から読んでもしっくりくることを確認しながら、因果を確かめます。

解くべき問題は、
「あなたの身の回りで、あるのけれど、見えないものはなんですか?」
というものでした。

ここでちょっとした、練習をしました。
「りんご、バナナ、みかん。これらに共通するのは何でしょうか?」
「くだもの!」 これは、小学生メンバーも即答でした。
「では、くだものには、他にどんなものがありますか?」
「メロン!もも!かき!」 こちらも即答でした。
要は、概念を抽象化したり、具体化したりする準備運動です。

では、これらに共通するのは、何でしょうか?
・星は昼間はみえない。なぜならば、星は昼の間はお空の底に沈んでいるから。
・星はある。なぜならば、星は夜になると光って見えるから。
・強い根は見えない。なぜならば、根は土の下に隠れているから。
・強い根はある。なぜならば、春になると、元気なタンポポの花が咲くから。

これも、さほど時間をかけずに気づくことができました。
○○は見えない。なぜならば…
○○はある。なぜならば…
というパターンがあるということです。

では、このパターンに当てはまるものは、身の回りにどんなものがありますか?最初にでてきた意見は、「季節」でした。

・季節は見えない。なぜならば、季節は体や心で感じるものだから。
・季節はある。なぜならば、春夏秋冬があるから。

ここで、上から読んだり、下から読んだりすると、あれ?って思うことがあります。

・季節はある。なぜならば、春夏秋冬があるから。
・もしも、春夏秋冬があるならば、結果として、季節はある。
なんだか、しっくりきませんよね?

「あるんだから、あるんだよ!」と言っているようにしか聞こえません。
あるかどうかわからないけれども、体や心で感じる変化に春夏秋冬という呼び名をつけただけで、本当にあるのかどうかはわかりません。

つまり、季節が「ある」ことについては、説得力が高い「理由」を提示できないということです。こうやって、箱と矢印を使って、自分のアイディアを検証できるわけです。

では、他の意見はないかと聞いてみました。
そうしたら、「釘の先っちょ」という意見がでてきました。
・釘の先っちょは見えない。なぜならば、木の中に埋まっているから。
・釘の先っちょはある。なぜならば、抜いてみれば見ることができるから。
この意見の方が、読んでみたときには、しっくりきますね。

別の意見もありました。
空気は見えない。なぜならば、透明だから。
空気はある。なぜならば、(なんででしょう?)






子ども達が出した意見は、この下。





授業では、私はあえて、こう言いました。
「空気なんて、本当はないかもしれない。
手を動かしたって、何も触れないし、目にも見えないし、
「時間」とか「季節」みたいに、人が感じることに名前を付けているだけ
かもしれないよ。どうして空気があるって言えるの?」って。

しばらく意見を交換したあとに、みんなが一番納得した答えはこれでした。
空気はある。なぜならば、息を吹き込むと風船を膨らませることができるから。

まさに、小学生でもわかる身の回りの例ですね。

さて、問題に戻りましょう。
問題:あなたの身の回りで、あるのだけれど、見えないものはなんですか?

答え:空気
これだけでは、合格できるかどうかはわかりません。
だれもが、これに納得できるかどうかは分からないからです。
本人に考える力があるのかどうか(多くのAO入試が知りたいと思っているスキル)も十分にはわかりません。

でも、箱と矢印で整理された情報があれば、それをそのまま答案にすれば良いのです。

問題:あなたの身の回りで、あるのだけれど、見えないものはなんですか?
答え:あるのだけれどないものは、空気です。
   空気は透明なので見えません。でも空気はあります。なぜならば息を  吹き込めば風船を膨らませることができるからです。

「理由」の説得力が、答案のレベルを支えていることが分かると思います。
そして、しっかりした「理由」でコミュニケーションをすることができれば、それは一生モノのスキルと言えるのではないでしょうか?

子どもイノベーター塾では、歴史、科学、学校生活、社会課題、社長だったらなど、いろいろなテーマで「考える力」を育てていっています。
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