読書メモ「災害に立ち向かう自治体間連携」
1.目次
1章 東日本大震災と協力的ガバナンス
2章 協力的ガバナンスの諸形態とその選択
3章 東日本大震災発生時における被災地支援
4章 カウンターパート方式と府県の役割
5章 災害時相互応援協定は機能したか
6章 災害対応現場における職員間調整
7章 台湾における防災政策と自治体間連携の展開
8章 アメリカにおける大規模災害と協力的ガイダンス
9章 災害対応をめぐる行政組織の編成
10章 大規模災害時における自治体の協力的ガバナンス
2.読書メモ
1章 東日本大震災と協力的ガバナンス
1.協力的ガバナンス
2.カウンターパート方式の位置づけ
3.危機管理研究と協力的ガバナンス
4.関西広域連合の成功
(メモ)
①協力的ガバナンスは政府・共同体・民間セクターが相互に情報交換し、協働することで単一のアクターが出す以上の成果を出す。
②ペアリング支援:被災自治体がそれぞれに対してペアとなる自治体を決め、その自治体が継続的に被災自治体の支援を継続する。
③自治体間連携支援の問題点(3点)
・情報収集(どんな支援が必要なのかを把握できない)
・応援体制の調整(大量に押し寄せる支援の調整)
・支援の持続性(支援が復旧・復興まで続かない)
④カウンターパート方式は、台湾大地震からのアイデア発想。地方分権を推進する関西地方で関西広域連合ができ、東日本大震災の支援をカウンターパート方式で実施した。
⑤行政の不得意分野としての危機管理
・指令・統制モデル
アメリカの防災システムの核心はNIMSにより標準モデル化されている。NIMSの構成要素にICSが形成されている。ICSは災害現場における標準化された緊急事態管理の概念。ICSは指揮、実行、計画情報、後方支援、財務・総務の機能を分割。ICSは消防分野に適用は留まり、複雑な事故には適用されない。ICSは指揮、実行、計画情報、後方支援、財務・総務の機能を分割。NIMSは地震・洪水などの災害種類に関わらず共通した危機管理を行うNIMSは地震・洪水などの災害種類に関わらず共通した危機管理を行う「all hazards approach」を採用している。
・調整・交渉モデル
ICSでは現実的な災害対応に問題を抱えている。調整・交渉モデルは、被災現場における市民や非政府組織の重要性に着目したモデル。
・ネットワークガバナンス
政策形成と政策執行は独立した利害関係、目標、戦略、を持つ数多くの独立したアクター間の相互作業の結果である
⑥関西広域連合の成功
回復力(復旧)への貢献、東日本大震災では4Rの実現に貢献でき成功したと言える。非国家のアクター(NGOなど)をガバナンスの中に取り込めていない。
2章 協力的ガバナンスの諸形態とその選択
1.研究課題としての協力的ガバナンス
2.災害時の協力的ガバナンスについての先行研究
3.災害時の協力的ガバナンスを捉える視点
4.東日本大震災の協力的ガバナンス
5.協力的ガバナンスの検討課題
(メモ)
①阪神淡路大震災の事例
派遣された職員は30万人。医療と水道関係受入準備が出来ずに支援を断る事例も出た。受入準備が出来ずに支援を断る事例も出た。応援する自治体は自治体の規模と距離に関連がある。300kmを超えると支援は減少する。 時間と共に支援も減少していく。
②新潟県中越沖地震
阪神淡路大震災を教訓に法整備が進み支援が進んだ。都道府県間の相互応援協定は機能した。個別協定については新潟県からの要請が無いため機能しなかった。応援に伴う費用負担がボトルネックになっている。
③東日本大震災
3つの支援形態があった。広域団体の支援、相互協定に基づく支援、自主的な支援
3章 東日本大震災発生時における被災地支援
1.カウンターパート方式の支援とは
2.関西広域連合・首長レベルの取り組み
3.各自治体における初動対応と現地における事務所開設
4.カウンターパート方式支援の可能性と課題
(メモ)
①東日本大震災発生時は、関西広域連合は事前に被災地と協定を結んでいなかった。(平時に事前に決めておくカウンターパート方式ではない。)
②東日本大震災では被災県3県を関西広域連合に支援した。ダブルキャスト方式をとり、被災県1県に付き、2県の支援県を割り当てた。
③支援県の防災意識により、初動の現地事務所開設の時期に差が生まれる。
④ダブルキャスト方式のため、チーム内府県の関係性と意思決定の不明確性により混乱が見られた。
4章 カウンターパート方式と府県の役割
1.関西広域連合とカウンターパート方式
2.カウンターパート方式の検証
3.兵庫県と滋賀県での市町の支援活動
4.府県と市町村の協働
(メモ)
①カウンターパート方式は有益であるが、市町村の協力なく実施するのは難しい。府県は市町村に指揮命令もできないため、府県と市町村は日頃から円滑な関係構築である必要がある。
②阪神淡路大震災を経験した兵庫県下では市長振興課が災害に関する経歴や専門性を把握しており効率的に立ち回った。一方、滋賀県では県と市町村が連携できずに支援が後手後手となった。5章 災害時相互応援協定は機能したか③災害支援において、防災資機材、市民への対応などの経験を持つ人材は、市町村が多く保有している。そのため、市町村の協力を円滑に引き出すことが府県には求められている。
5章 災害時相互応援協定は機能したか
1.どのような自治体間連携が機能するのか
2.東日本大震災以降の自治体間連携とその課題
3.被災自治体を対象とする調査
4.実証分析
5.さらなる連携体制の構築にむけて
(メモ)
①災害時相互応援協定は双方が被災する場合もあるので大規模な場合は機能しない場合もある。特にペア型・狭域型の協定では機能する可能性は低い。
機能する可能性が高いのは、広域型の災害時相互応援協定である。
②国内で増加しているのは、ペア型の協定である。その理由は調整コストが安いからである。これは大規模災害に向けては課題となる。
③広域の協定を結ぶには媒介者となる組織があれば進むと考えられるが、都道府県がその役割を担うのは難しい。関西広域連合のような組織が担うのが適している。
6章 災害対応現場における職員間調整
1.職員間調整における残された課題
2.応援調整に関するこれまでの研究と実践的取り組み
3.南三陸町に派遣された職員の基本属性
4.応援職員の属性と現地での業務概要
5.現場における活動調整の分析
6.応援側における組織内調整力の向上のために
(メモ)
①東日本大震災では支援する複数自治体がまとまって支援に入る方法が一般化したが、このような混成チームは現場で指示待ちとなり皮肉な結果となった。
②その理由は混成チームであるため管理職が選抜されておらず不在であった。また、チームの指揮権が明確になっていなかった。混成チームが一枚岩になれなかった。
③支援チームは、自律的なチームである必要がある。そのために権限移譲とマネジメント要員が必要になる。
7章 台湾における防災政策と自治体間連携の展開
1.なぜ台湾を見るのか。
2.台湾の防災政策
3.921大地震の際の自治体間被災地支援と復旧復興政策
4.今後の日本の防災政策に向けて
(メモ)
①台湾では自治体間連携の支援を3種類に分けて中央政府が後押ししてる。
②災害の予防と起こるべき災害への準備、低減化を分けて政策化している。
③住民の集団移転や発災前に軍隊派遣する仕組みを持っているが、これらは国内では実施できていない。
④921大地震のカウンターパート方式は中央政府の主導により実現している。東日本大震災では関西広域連合が自発的に実施したが自治体の自主性あけで良いのか。不安が残る。
8章 アメリカにおける大規模災害と協力的ガイダンス
1.ガバナンス組織の形態選択という視点
2.アメリカ政治の基本構造
3.コーディネーション組織としてのFEMA
4.日本型FEMAの可能性
(メモ)
①アメリカではFEMAが重要な役割を担ってる。その役割は平時における緊急時の計画策定、人材育成、ネットワーク形成にある。
②アメリカでは多元主義的な政治構造からコーディネーション問題を引き起こす。それを解決するのもFEMAの役割となる。
③国内でも東日本大震災では様々なアクターが異なる想定を置いたためコーディネーション問題を引き起こした。そのため日本にもあれば有益となる。
④国内でFEMAを創設する場合は専門性の高い人材をどのように育成するかが課題となる。それが無いと組織いじりをしただけで終わってしまう。
9章 災害対応をめぐる行政組織の編成
1.政府はどのように災害に対応するのか
2.中央省庁の防災体制
3.地方政府の防災体制:兵庫県
4.専門家による調整にむけて
(メモ)
①発災時の災害対応において行政組織全体の業務が転換を迫られることを考慮する。能力を最大限発揮するためには政治と密接な関係が求められる。
②調整を行う部局と、実施を行う部局を分けて組織を設け人事異動で交流させる。調整を行う部局は防災だが実施を行う部局は消防となる。県の場合は消防組織が無いため、市町村の消防組織との関係性が課題となる。10章 大規模災害時における自治体の協力的ガバナンス③防災に関しては、平時の専門性と危機の専門性の2種類が必要になる。
10章 大規模災害時における自治体の協力的ガバナンス
1.南海トラフ地震に対する基礎自治体の支援体制
2.自治体の災害対応と広域連携支援に関する調査の概要
3.支援を求めない。自治体の2つの特徴
4.支援を求めない。自治体と相互応援協定の関連
5.何が基礎自治体の支援量を規定するのか
6.南海トラフ地震に対する備えの様相と課題
(メモ)
南海トラフ地震の備えにおける2つの示唆
①必要とされる支援の形は自治体により一定でなく、むしろ自治体のごとの特徴とフェーズににより大きく異なる。災害業務の標準化が重要な検討事項である。 ②相互応援協定と支援量の関係。人材プール、協定先の自治体数、包括協定か相互協定か、コスト負担などの整理。 (メモ)
南海トラフ地震の備えにおける2つの示唆
①必要とされる支援の形は自治体により一定でなく、むしろ自治体のごとの特徴とフェーズににより大きく異なる。災害業務の標準化が重要な検討事項である。
②相互応援協定と支援量の関係。人材プール、協定先の自治体数、包括協定か相互協定か、コスト負担などの整理。