見出し画像

社会課題とイノベーション。阪神淡路大震災が契機となって。

私は大阪のITエンジニアで阪神淡路大震災を経験しました。この震災を契機に数多くの防災業務関連のシステムを開発することになりました。

1.都市災害の怖さ

 阪神淡路大震災が来るまで関西人はホントに地震は関西に来ないと思っていましたね。今思えば不思議ですね。
突然訪れた月曜日明け方の大地震。初めて体験する大都市圏の激甚災害でしたね。今から振り返ってもホントに皆が力を合わせて復旧に頑張りました。この時にいざとなれば力を合わせて事を成し遂げられると思ったことを今でも記憶しています。

例えばこんな工夫がありましたね。
・昼間だけの工事では復旧に時間がかかるので、あらゆる所で24時間のシフト体制で復旧工事を進めてました。昼間は大型トラックの誘導などは笛を使い誘導しますが、近隣に迷惑になるので夜間は地声で誘導していました。トラックの近くまで走り、声を枯らして大変ですよね。
・阪神間大動脈であった鉄道路線がJR、私鉄とも断裂しましたので全国のバス会社から借りたバスで代替輸送してました。色んなバスが使われてましたね。復旧工事も通常では考えられないくらい早かったですね。まさに一夜にして臨時駅ができる状況を見てびっくりしました。
・道路・水道、電気・ガスはライフラインなどで何よりも復旧が急がれました。特に1月17日と真冬のため、暖房が必要でした。各社が連携しながら早期復旧を実現しましたね。全国のガス会社から応援部隊が来て、各地のガス会社の自動車が被災地を走っていましたね。まさにガス魂ですね。

予断になりますが、その後の東日本大震災では、大阪ガスさんが先陣を切って「あの時のご恩返し」と言って大部隊を被災地に送りましたね。高速道路のSAで行われた出陣式をテレビで見て涙出てきました。あの時のご恩を忘れていないのは同じ気持ちですね。

当時、大阪にいると一丸となって復旧に取り組む姿を見て圧倒された記憶が残っています。ホント人間って力を合せれば何でもできる。と思いました。実は今もそう思って仕事しています。

2.IT業界からみた災害対策(ハード面)

 阪神淡路大震災では、7割の通信インフラが断裂したと言われてます。発災時が95年なのでインターネットが家庭に普及する少し前の状態でしょうか。でも、クレジットカードやATMなどの通信を利用した社会サービスは普及していました。通信が遮断されたことでクレカが使えなくなったり、ATMでお金が引き出せなくなりまりました。
また、サーバルームでは揺れで耐震固定されているサーバラックがH構ごとめくれあがって横倒しされている。や、サーバラックに搭載されているサーバ機が、飛び出してラックだけが立っていた。などの事例を聞きました。
情報システムでは、サーバ設置場所の堅牢性と利用者までの通信経路の堅牢性が何よりも重要だとわかりましたね。まずはハードウェアが動く状態で無いと何も始まらないですよね。

3.IT業界からみた災害対策(ソフト面)

 まさに大地震がそうですが、全く予測できないですよね。気象予測が発達している現代では風水害が突然来ることは無いですよね。でも大地震はいつも突然やってきます。
災害時に利用する情報システムでは、大きく分けると2つの業務に分かれます。
「脊髄反射的にオペレーションする業務」
 主に安全確保のためのオペレーションですね。いわゆる初動対応ですね。
 意思決定に必要最低限の情報を出して意思決定する。
「脳みそがちぎれるまで考え抜いて行うオペレーション」
 主に復旧計画の立案などのオペレーションですね。意思決定に必要なあらゆる情報にアクセスできるようにしてシミュレーションしながら意思決定する。
この2つの業務は時には並行して行うので、そのオペレーションの棲み分けが出来ていないとうまくオペレーションができませんよね。そこが難しい所ですね。

4.阪神淡路大震災を契機に普及したソフトウェア

 アメリカなどでは以前からGISが普及していましたが国内でGISが普及したのは阪神淡路大震災が契機となりましたね。(GISは地理情報システムのことで、情報を地図上で管理することですね。)
なぜ災害対策にGISが必要になるかと言うと、被害状況を空間的に把握する必要があるからですね。住所で表現しても対策を打てないですよね。空間的に把握するため地図上での可視化が必然となるためですね。GISが無い阪神淡路大震災以前は、紙地図に付箋で被害箇所を貼っていきますが、阪神淡路大震災では被害箇所が多すぎて地図が付箋だらけになり何もわからなくなりました。そこでGISが絶対的に必要となりましたね。GISにすると拡縮の変更やレイヤ毎のON/OFF制御など自由自在ですものね。
防災システムはGIS機能を導入しているかいないかで全くオペレーションが変わりますね。
GISはその後にエリアマーケティング、NAVI、設備管理、保安業務など様々な所に普及しましたね。

5.阪神淡路大震災から東日本大震災へ

 阪神淡路大震災を経験した私から見ると、東日本大震災では随分と復旧スピードも上がったし、災害業務もすごく改善されたと思えます。
道路復旧も細かく分割することで大規模・中規模・小規模の業者が復旧工事にあたることができましたし、ボランティアのコントロールも機能的に動き救援物資も配布できたし、阪神淡路大震災では無かったITボランティアの活躍もありましたね。OSSでその場でシステムを組み上げデータ入力もその場でしてしまう。
もちろん、もっと完全の余地はあると思いますが、ものすごい進歩だと思いました。

6.災害対策における現状の課題は何か?

 これまでは、基礎自治体、都道府県、国、電力会社、ガス会社、通信会社、高速道路会社と、プレイヤーが個別最適を図り改善してきましたね。これ以上の大きな改善は、個別最適では難しいと思っています。例えば、被害箇所の把握はどの自治体も、インフラ企業も必要としますよね。それを各社がやっていることになります。被害箇所の共有ができればもっと早く、正確に情報収集が可能ですよね。復旧計画もそうですよね。実は道路の復旧から始めないと効率悪いですが、これら復旧計画の情報共有もできればもっと早く復旧できますよね。道路の被害状況と復旧計画を即座に出せばそれを元に各社が復旧計画を立てる。電気・ガス・水道は揃わないと生活できないので、各社の復旧計画を見ながら計画を立てる。こういった組織間の連携がこれからの防災対策には求められますが、社会実装するのはどうすれば良いんでしょうか?

7.ソーシャルイノベーションで災害に強い都市作り

  防災の教訓でこういう言葉があります、
「平常時の運用無くして有事の運用無し」災害対策は平常時にできていることが有事でもできる。平常にできないことを有事でやろうとしてもできない。と言う意味ですね。私もそう思います。
先ほどの被害情報の共有や、復旧計画・状況の共有を有事の際にしようと思っても、まずできないですね。電話で各社に聞くのが関の山で、この電話のやり取りに貴重な労力が取られますよね。
となれば平常時から、情報を共有できる仕組みを作り、その運用を乗せておくことが大事ですね。

続きは次の投稿へ

いいなと思ったら応援しよう!