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シニアになって働く意味を考える⑥ ~人間の業~

定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。
一般的に、働く意味はおおざっぱに以下の2つにあると言われます。
1)自分の好きな仕事、やりがいのある仕事、社会的使命感のある仕事のために働く
2)家族のため、趣味や自分の余暇を充実させるために働く
ところが実際にシニアの方々にお話を聞くと、どうもそんな単純なものではないようです。そこで、シニア一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。どんな平凡な人生にもドラマがあります。


63歳、最前線で現役続行中、65歳問題は?

 Sさん(男性)は、今63歳で品質保証・品質監査認定のエキスパートとして最前線で現役続行中だ。定年は65歳と決められているが、外資系企業のため必要と判断されれば継続雇用可能だ。日系企業と違い外資系には明確な定年制度がないところが多いと聞く。
 となると、いつ引退か?その決意の理由は何か?を聞いてみたい。
「65歳まではこのまま維持、そこから先は勤め先の判断にもよるが働き続けたい」と言います。理由は、次女の大学院学費支出が後2年あり、離れた田舎に住む親と奥さんの健康面での不安があるからだそうだ。「趣味も捨てた、まだまだ経済的な安定が必要」だと。いつもの物腰のやわらかい話し方だったので、その答えのシビアさを感じさせない。

日系企業から外資企業2社へ転職、思えば日系の「ザ・昭和」がよかったなぁ

 Sさんの会社員スタートは、技術系システムの研究機関向けのある装置の営業職から。「昭和の仲間意識」の強い日系企業だった。とにかく個人が出過ぎずチームワークが仕事の進め方の基本中の基本。社内研修も手厚く、社内旅行、飲み会と、いわゆる「ザ・昭和」のメンバーシップ型雇用の典型例だった。
 15年目に転機が訪れる。取引先の外資系企業から転職のオファーを受け入社する。システムを売る営業職への転身で、今で言うジョブ型雇用の典型例の会社だった。仕事のスタイルは「一匹オオカミ」的で、何でも自分で解決が基本。「ザ・昭和」に心地の良さを感じていたSさんだが、その会社の将来性と給料アップで転職を決心する。しかし、不況になればリストラは普通なのが外資系企業。在職5年目に運悪く海外本社の業績が悪化し、部下を一名首にせよとの業務命令を受ける。元々メンバーシップ型の働き方に合っていたSさんは、その対象者の選出に思い悩んだという。

渡りに船で第2の外資系企業で新分野へ、働き方にはなじまないが、今年(2023年)で21年間目をむかえる

 ちょうどその苦しい時に偶然にも、新たな外資系企業からヘッドハントされる。ハントされた理由は分からないそうだが、おそらく当時の取引先の一社からの紹介だったかもしれないと言う(ヘッドハントって、こういう風にされるんだぁ~。取引先への対応は丁寧にしないとダメだなぁと反省)。渡りに船で転職したものの、職種は全く異なる新分野。当時最先端の電子部品の品質保証・品質監査認定という「未知との遭遇」だった。
 やはりここでも「一匹オオカミ」が職場の仕事スタイル、しかもこの職場の同僚たちは、前職よりもさらに個性の強い人ばかりだったそうだ。全く経験のない新しい仕事とタフな人間関係を経験し、すぐに辞めることになると思ったという。しかし、なんとか乗り越え、今ではこの会社の唯一無二の専門職として21年目をむかえている。要するに替えのきかない貴重な人材である。

「すぐに辞めることになるだろう」をどうやって克服?働くとは何ですか?

 その答えは「人間の業だと思う」だった。これにはちょっと焦る。インド哲学か仏教か?善因善果・悪因悪果か輪廻か?修行僧みたいだ。
 Sさん本来の望む働き方は、今でも昭和の時代のチームワークで問題解決する仕事スタイル。企業組織と共に成長すること。しかし、それは会社員生活の前半戦のみで、後半からは完全ジョブ型の中。変わっていく周りに合わせざるを得なかったし、2回の外資系企業への転職も、たまたま縁あって誘われただけだと言います。原因・行為・結果・影響の輪廻なのか?
 働くことを「業」と捉えることで、困難を乗り越えて成長し続ける。「縁に導かれ、結果を残す」ということか?ボクもがんばってみます、できるかな?
 厚生労働省のHPには「働き方改革」とは、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」と。これ、まさしくジョブ型。これも「業」と呼ぶのか?

後記:

 インタビューの数日後、こう思えてきました。部下のリストラを命じられた時から「自らの行為の責任を将来自ら引き受ける」というSさんなりの「業」が確立したのかな?って。
 修羅場の経験は飛躍のチャンスということなんですね。よく言われます。平凡な会社員生活なんてどこにもないですね。
(2023.04.01)

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