ポケモン映画全部見た感想
8月7日~11月13日にかけて、毎週2本前後のペースでポケモン映画を全部見た。長編23作(『ゼクロム』『レシラム』は合わせて1本カウント)+短編9本(『ピチューとピカチュウ』のみサブスク非対応なので除外)+『名探偵ピカチュウ』で、結構なボリュームだった。自分のDiscordサーバーで、Amazon Prime Videoのウォッチパーティを使って定期的に集まって見たので、途中で投げ出さずに完走することができた。
せっかく全てを網羅したので、個人的な傑作度で長編アニメ作品のTier表を作った。左右差あり。
アタリハズレの差がかなり激しく、ハズレ回は途中でウトウトしたが、アタリ回は全米が泣いて拍手喝采だった。これからポケモン映画を選んで見る人は、是非Aランク以上のものから見てほしい。
感想についてはTier下位から順に書いていたのだが、下の方があまりにも悪口大会になってしまったのと、全体があまりにも長くなってしまったので、Bランク以下はDiscordサーバー内で公開することにして、このnoteではAランクから書いていく。全部見たい物好きは入ってくれ。
あと、ネタバレを多分に含むので、そのつもりで読んでくれ。
Aランク
神速のゲノセクト ミュウツー覚醒 (2013)
単にファンサービスとしてミュウツーを再登場させるだけでなく、『ミュウツーの逆襲』の主題への再挑戦を感じる作品。人間によってこの世界に生み出されたミュウツーと、人間によって現代に蘇らされたゲノセクトが、対比的に描かれた。『逆襲』の主題がやや抽象的で曖昧だったという反省点をしっかりと克服しているのが素晴らしい。例えば、『逆襲』のミュウツーが内に秘めていた葛藤を、本作では群れの中のゲノセクト同士の争いとして描き、視覚的にわかりやすくなっている。『逆襲』を見た人は是非この作品も見てほしい。
破壊の繭とディアンシー (2014)
ディアンシーみたいな無知お嬢様キャラってまだやってなかったんだ、とびっくりした。素直に萌えです……。セレナとユリーカと合わせて画面に華が多いのが嬉しい。幼いユリーカとディアンシーがいることで、サトシやセレナのお兄ちゃんお姉ちゃん的側面が描かれるのも、深みがあって良い。悪役に狙われるヒロインのディアンシーを守る王道展開でありながら、しっかりディアンシーが成長して主体的に問題を解決しているのも、見ていて気持ちが良い。
ボルケニオンと機巧のマギアナ (2016)
清々しいほどの勧善懲悪モノ。悪役ジャービスが、人工ポケモンであるマギアナから心臓だけを取り出して利用し、その力で故郷を焼き払うことで残っていた心も破壊するという、同情のしようもない純粋悪だったのが衝撃的だった。描かれた悲劇が歴代作品と比べてもかなり絶望的だった分、マギアナの心が戻ったときの感動もひとしおだった。シンプルながら魅せ方がうまく、ハラハラしながら楽しんで見れた。
水の都の護神 ラティアスとラティオス (2002)
ヴェネツィアをモデルとしたアルトマーレとかいう街が美しすぎる。BGMも合わせて、惹きこまれる。それだけで見る価値がある程度には美しい。悪役が男性ではなく女性、それも姉妹コンビというのも珍しく、それぞれがしっかりキャラが立っているのも面白い。アカデミー賞に出品されただけのことはある。
Sランク
結晶塔の帝王 エンテイ (2000)
主役はエンテイと見せかけて実は暴走したアンノーンである、という挑戦的な作品。謎の多いポケモンのもたらすカオス感が心地良い。自分自身を幻の一つでしかないと自覚しているエンテイが、ミーを幻から解放するために「私を信じろ」と吠えるシーンには泣いた。望み通りになる世界だからこそ、それを望みによって否定するという逆転が面白い。
裂空の訪問者 デオキシス (2004)
近未来都市×サバイバルとかいう、好きな人が好きすぎるジャンル。俺も好き。食料と水探しといい、シェルターの建物に隠れるやつといい、起こるイベントが大体ゾンビパニックモノあるあるなんだよな。それを宇宙から来たポケモンによる侵略として描いているのが、キッズ向けでわかりやすい。また、パニックモノだからか、出演するキャラが歴代映画と比べてかなり多いのに、皆魅力的に描かれていて見ていて楽しかった。
セレビィ 時を超えた遭遇 (2001)
思い出補正も強いが、自分の中では「これぞポケモン映画」という感じの作品。可愛らしいマスコット的な幻のポケモンが、実は強大な力を秘めていて、それを狙った悪役に捕らえられ利用される。お決まりの流れを作った最初の作品であり、完成度も高い。オーキド博士の過去が描かれていることもあり、ポケモンオタク的にも外せない作品。
七夜の願い星 ジラーチ (2003)
マサトとジラーチがかわいすぎる作品。ショタコンになってしまう……。『破壊の繭とディアンシー』同様(というか本作の方が先だが)、マサトとジラーチを中心に描くことで、サトシのお兄ちゃん的側面が見えるのが良い。ラストのお別れシーンも、サトシより人生経験が少なくまだ達観していない純朴なマサトの視点で描かれることで、歴代作品よりも味わい深くなっている。
SSランク
幻影の覇者 ゾロアーク (2010)
ゾロアとゾロアーク、進化系統とはいえ2匹の新ポケが登場する上、セレビィと三犬が登場する贅沢作品。伝説・幻のポケモンを活躍させながら、それらの格を落とすことなくゾロア達の活躍を引き立てているのが素晴らしい。その上、メインモチーフである「幻影」を最大限活かしたストーリー構成になっている。悪役コーダイの未来視によって確約されていたはずの勝利が、実はゾロアークの見せる幻影だったというオチが美しすぎる。これシュタインズ・ゲート?
ココ (2020)
最後のポケモン映画にして、人間とポケモンの境界を問う挑戦的な作品。露骨に「狼に育てられた少女」の話をモチーフとしていることが見え見えの俗世的な印象とは裏腹に、ザルードの社会、ポケモンの社会、人間の社会の衝突と共生の問題に切り込みながら、ザルードとココの間の種族を越えた親子愛もしっかりと描いている。アニポケから完全に独立しているので入りやすいのも良い。
みんなの物語 (2018)
群像劇としての完成度が極めて高い。ゼラオラを想う少女ラルゴ、ポケモンをよく知らないギャルのリサ、気弱な研究者のトリト、お調子者でホラ吹きのカガチ、ポケモン嫌いな頑固ばばあのヒスイ。それぞれ異なる背景を持つキャラクターたちが、ポケモンを通じて互いに関わり合う中で、それぞれ抱える問題を解決し、街と森の危機という大きな問題に立ち向かっていく。まさに"みんなの物語"というタイトルにふさわしい名作。『ココ』と同じく、独立した作品なのでポケモン初心者でも見やすく、それでいて往年のポケモンファンも唸らされる深みもある。
ポケモンレンジャーと蒼海の王子 マナフィ (2006)
最高のポケモン映画。悪役であるファントムがめちゃくちゃ魅力的なのが良い。子供向け映画らしいコミカルな要素を多く備えながら、格を落とさずしっかりと強敵感が出ており、バランス感覚に脱帽。戦闘はパワー系だけど、戦闘外では海賊らしく姑息に立ち回っていて、めちゃくちゃしぶとい。一方で、マナフィも可愛いだけでも守られるだけでも利用されるだけでもなく、主体的に動いて困難を解決していて頼もしかった。『みんなの物語』や『ココ』はそれぞれに唯一無二の魅力があるが、本作はポケモン映画らしいポケモン映画の最高到達点といった感じ。
全体を通して思ったのは、「アドバンスジェネレーション」や「ベストウイッシュ」のようなシリーズごとの最後の作品はアタリが多いということ。やはり毎年作るのは流石に負担が大きいが、数年に一本は必ず神作品を出してくれている。できることなら、ポケモンゲーム本編1本ごとに1作くらいのペースでいいから、また作ってくれないかなぁ。
あと、ウォッチパーティが期待以上に良かったので、また鯖内で開催したい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?