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とある一種の優しさ KIND OF KINDNESS

『哀れなるものたち』がとても面白くて、
『ロブスター』、『聖なる鹿殺し』、『女王陛下のお気に入り』を
立て続けに見たらすっかりヨルゴス・ランティモス監督のファンになった。
ので、シアターキノで『憐れみの3章』を見た。
ポスターのデザインがラース・フォン・トリアー監督の
『イディオッツ』っぽい雰囲気があって
なんとなく私が好きそうな映画だろうという直感もあった。

ヨルゴス・ランティモス監督作『憐れみの3章』
ラース・フォン・トリアー監督作『イディオッツ』

『憐れみの3章』は3つの全く別の物語・キャラクターを同じ役者が演じるという構成で、1章は上司⇒部下、2章は夫⇒妻、3章は教祖⇒信者の、権力を持つ者から支配・コントロールされる人生と、その結末について描かれている。

3章のすべてが嫌なシーンの連続、嫌な人生ランキングトップ3のようで
束の間のギャグシーンなんかでは取り返しのつかないくらい露悪的
なんだけど、いや、しかし、嫌すぎる、最悪すぎることっていうのは、
行き当たるともう笑うしかない。
滑稽すぎて笑ってやらなければ救いがない…という気持ちになり、
映画館を出る頃にはヨルゴス・ランティモスありがとう(こんなに嫌な気持ちにさせてくれて)と思っていた。

たった一人R・M・Fという人物だけが3章通して登場し、各章のキーパーソンとなっている。
その人物の使い方、そしてR・M・F視点で3つの物語を捉えてみた時に全く別の人生が見えてくるところも面白かった。

『憐れみの3章』の原題は『KIND OF KINDNESS』であるが、
kindnessといえば、中学生の頃、
山口百恵の『さよならの向こう側』を聞いていたら
Thank you for you kindness という歌詞が出てきてその単語の意味を知った。
更にこの曲ではkindnessのすぐあとにtendernessという、
どちらも”やさしさ”という意味の単語が続く。
ニュアンス的には kindness は親切心とか、人助けのような優しさを指し、tenderness は柔軟に包みこむような優しさのことを指すらしい。
これらの単語の意味から『憐れみの3章』を解釈してみると、
支配をする側もされる側も、
自分なしでは生きられないからコントロールして救ってあげている
要求を受け入れることで相手を満足させてあげている
という親切心(の顔をした共依存)と言えるのかもしれない。
行き過ぎた支配も、それに従うことも
ある一種のkindness =『KIND OF KINDNESS』と言えるのかもしれない。
とはいえ、こういう優しさもあるよネん♪という意味の3章だとしたら
ヨルゴス・ランティモスって本当にひどい人!、、、、ん、でも好き。

音楽を担当している Jerskin Fendrix のアルバムがとっても良かった、、、


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