翔陽高校バスケ部の先進的組織づくりと歴史的敗戦から学ぶ現代組織の難しさの考察
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今更ですが書き初めnote。
退職エントリーの流れでエモいもの書いてやろうと思っていたのに、気付いたらこんなふざけたものを書いていた笑
前職でも常に頭を悩ませていた組織構築だが、現職でも早速その壁に当たっているので改めて色々な組織をトレースしていたところ、翔陽高校はかなり最先端の組織構築をして、そして崩れた組織だと気付いたので、言語化しておこうと思う。
興味があればご一読ください。
翔陽高校とは?
歴史的名著スラムダンクを知らない人のために簡単に翔陽高校の説明を。
翔陽高校とは4年連続でIHに出場している、海南大附属に次ぐ神奈川県のバスケットボールの強豪校で、主人公チーム湘北高校のブロックシード校である。
特徴は監督が不在で、エースでキャプテンの藤真が選手兼監督をしていること。
インターハイ予選決勝リーグ進出をかけ湘北と対戦し敗戦するも、翔陽史上初の1年生からスタメンだった藤真を筆頭に、他は190cm以上の長身選手で固めた非常にポテンシャルの高いチームだ。
ではその翔陽の先進的な組織づくりに注目していこう。
※多数の画像を「スラムダンク完全版」から全て引用しております。
ティール組織にトライしている
こんなにフラットな雰囲気のタイムアウトがあるだろうか?
先述の通り監督不在のチームため当たり前と言えば当たり前だが、ピラミット型が社会の潮流であった平成初期に一石を投じるように、ティール組織にチャレンジしているのが翔陽だ。
やはり藤真への絶対感は、タイムアウト中の相槌が「はい!」になっていることからも伺えてしまうため、まだグリーンくらいではあると思うが、それでもこの時代から考えると先進的な組織である。
事実、作中でも何度もアイコンタクトで会話しており
同級生という点を加味しても、フラットな関係性が見てとれる。
また部員各々も自分のロールをしっかりと認識し自己判断で動けており
花形は藤真の出場を制した後、意図的に桜木からファールをもらいこのように組織を鼓舞している。
花形に限らず、シックスマンとして期待をされていることがうかがえる伊藤も積極的な3Pを打ち得点を決めているし、高野は桜木の亀タイムでメンバーに積極的にボールを自分に集めるようにアウトプットしている。
自分のコート上での役割を理解し行動できている点は、高校生とは思えないレベルでロールを理解した組織づくりができていることをうかがわせている。
心理的安全性の高い組織づくり
先述の通り翔陽高校は監督不在の高校だ。
言わば経営層がまだ安定していないスタートアップのような未成熟な組織。
にも関わらずこのコマからも分かる通り、大量の部員を抱えている。
ここまでの部員数の描写は実は他校ではない。
もしかしたら神奈川県一の部員数を誇る部活かもしれない。
しかもエンゲージメントも非常に高い。みんな楽しそうだ。
未成熟な組織にも関わらず、退部率の低さをキープしているのは、心理的安全性の高い組織づくりを実施していたに違いない。
事実、藤真は試合中でも鼓舞するような表現を選び、決して部員を否定するような発言をしていない。
googleが提唱し一斉を風靡した心理的安全性だが、翔陽は約30年も前から意識的に導入していたことがうかがえる。
先進的な組織なのに、旗印は闘魂
信じられるだろうか?
これだけ進んだシステムを導入しているにも関わらず、最後は気合いなのだ。
効率を謳い、練習の仕方改革に勤しんでいそうなのに、旗印は闘魂。
魂で闘えと。
まるで現代の日系企業のお手本のような組織じゃないか。
こんな素晴らしい翔陽高校バスケ部。
ではなぜ試合中に組織が崩壊し、湘北に負けてしまったのか?
私なりに考察していく。
アルムナイ構築に問題があった
牧も試合中に「藤真はコートに立つと別人のように熱い」と言っている。
つまり藤真がコートで出てしまうと、実質監督は不在の状況になるのだ。
どう考えても、湘北が最後ノってしまった時はタイムアウトを使うべきだった。こんな基本が分からなくなるくらい藤真は熱くなる性格なのだ。
ただこれはビジネスの世界でも、管理職がプレイングを兼任しだした途端に視野が狭くなることはよくあること。高校生に求めるのは酷であるし、そもそも今後海南戦を見据えると藤真が出ないというのは不可能だ。
にも関わらず、諸事情で監督が置けなかったとしてもコーチさえいないのはおかしい。これだけの強豪校であれば、OBをコーチとして招聘するのは難しくないはずだ。
これは1年生から試合に出ていた藤真とOBの間に何かしらの問題があり、アルムナイが機能していないことを物語っている。
先進的なことばかりに目を取られ、足元のイグジットマネジメントを疎かにすることは絶対にあってはならない。
状況判断に私情を持ち込んだ
監督藤真のレベルは賛否あるが、県内随一のPGらしく状況判断能力が非常に高いことは間違いない。
翔陽は試合開始直後はハーフコートのマンツーマンで主導権を握ったが、湘北の運動能力に一度流れを持って行かれそうになる。
ただ藤真はここで冷静にリードをしている中タイムアウトをとり、部員を鼓舞、そしてゾーンディフェンスに切り替えて高さを生かし流れを断ち切っている。
にも関わらず、長谷川のこの一言によって、プロの試合でも中々お目にかかれない高難易度ディフェンス「ボックスワン」に後半シフトしてしまう。
しかも流れが完全に翔陽にある時に、だ。
長谷川は完全に私的な理由で三井に固執していた。
そして藤真も努力の人長谷川への個人的な思いが強かった。
藤真は長谷川に背景確認をしないまま感情で組織全体に影響のある判断を下し、結果三井に15Pもとらせてしまう。
どれだけ信用できるメンバーであっても、個人<組織である。
長谷川が組織軸で語れているかの確認は必要であった。
変化に対し躊躇してしまった
翔陽はスターティング5のうち藤真と変わった伊藤を除き、最後まで同様のメンバーで戦うことを選択した。
どう考えても永野はワークしていなかった。
高野も弱めではあったが、マッチアップが桜木だったのでまだいい。
永野をシューターに変えるだけでも大きく変わったはずだ。
藤真をFにあげて、3Pのある伊藤をPGに戻してもよかった。
にも関わらず、あの部員層を抱えながら選手交代はなかった。
実は翔陽は昨年も同様のミスを犯している。
海南相手にサイズで不利な状況にあったにも関わらず、3年生を優先してベンチにいた花形などを使わなかった歴史がある。
高校生の部活で、引退がかかる試合なので分からなくはないが、何より優先されるべきはチームや勝利のはずだ。
フェーズやマーケットが変われば、必要な人材も適時変わってくる。
変わることを恐れていては、勝てない。
闘魂の割に「勝ち」への貪欲さが欠けた
翔陽は先進的な取り組みの中で、「勝つ」という本質を見失っていたように思われる。
まずこのような花形の発言。近いものが他部員からも見られるが、完全に相手を見下してしまっている。
勝つことに執念を燃やす牧や仙道などからは決して見られない発言だ。
また海南や陵南のように部員の大半が辞めてしまうほどの練習を課していたとは、心理的安全性から察するに考え辛い。
心理的安全性は手段でしかない。あの無駄な部員数の多さから考えても、心理的安全性を行使する目的を見失っていたと思われる。
更に言うと、角田が入った残り1分50秒で1得点もあげられないのはヤバい。
これは決定的に他校と比べるとエース不在の部員層であったと考えられる。
湘北のような積極的なリファラル採用をすべきであったが、恐らく安定供給される新入部員に満足感を感じていたのだろう。
先進的な取り組みも、全て手段である。
全ては目的のためにあり、目的が果たされなければ意味がない。
今の自分たちの施策に満足してしまっては、勝つことは出来ないのだ。
以上が考察である。
信頼だけでは勝てないというなんとも悲しい考察になってしまったが、実は翔陽のような状況になってしまっている組織は多いのではないだろうか?
先進的で現代的な組織づくりは、行うことに満足してしまうことも多いと思う。
全ては目的達成のために存在しているという基本に立ち返るキッカケになれば、と思う。
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