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筍掘り 後編 -筍ご飯の朝-

前編はこちら

はたして、筍ご飯作戦は功を奏した。
アラーム前に起床、しかも二度寝しなかった。
私にしては、画期的だ。
ほくほくと着替えてキッチンへ。
さあ、土鍋さんで筍ご飯だぞ~!

わくわく、そわそわ、土鍋ご飯

前回お焦げを大量に出してしまった反省を、今日こそ活かすのだ。
他のお料理に夢中になりすぎて、時間を忘れないように。
同時に作るのは、お味噌汁だけ。
ご飯を蒸らしている間に、アマゴの一夜干しを焼けばちょうどいい。

さぁ、筍ご飯の土鍋炊きスタートだ。
強すぎず中火で注意深く。
湯気が上がったら、すぐに少し弱めて様子を見る。

お味噌汁は、筍ご飯の残りの油揚げと新玉ねぎにしようか。
具材を切っては、土鍋の湯気を見る。
お味噌汁の小鍋を火にかけては、隣の土鍋の湯気を見る。
いつもの白いご飯とは違う香り。

どうかな?
焦げないかな?
わくわく、そわそわ。

玉ねぎの灰汁を取って、油揚げを入れて、隣の湯気の香りを確かめて。
お味噌を入れて、お味見をして、隣の湯気の香りを確かめて。
笑っちゃうほど神経質になっている。
でも、筍ご飯なんだもの!
しょうがないよね!

湯気の香りが変わった、でも香ばしいほどではない。
(どうしよう、ちょっと迷うな)
そう思ってたら、ぱっと思い出した。
白ご飯ドットコムに、土鍋炊き初心者へのアドバイスが書いてあったはず。

一旦ふたを開けて、水分が残っていないか、確かめる。
残ってなければ、ふたをして、少し火にかけてからおろして蒸らす。
よしっ、オープン!

黒い土鍋からほわんと立ちのぼる湯気の向こう。
筍の色をしたキラキラご飯のつぶつぶ、もう水気は無さそうだ。
ふたをしめて数秒火にかけて、うっすら湯気が立ってから止めた。
さ、ちゃんと蒸らすまで、もう開けちゃダメよ。がまんがまん。

土鍋をおろしてあいたコンロに、魚焼き用フライパンを載せる。
(アマゴの一夜干し……土鍋炊きご飯……)
最高の朝ご飯の予感しかしない。
熱の通ったフライパンに魚を載せると、チュッと可愛い音がした。
美味しく焼けますように。
ちゃんと骨まで美味しくいただきますからね。
早く食べたくて、つい早々に火からおろしたくなる気持ちをぐっと堪える。
ピンクの斑点模様の付いた皮に、ほんの少しだけ焼き色をつけて。
裏返したアマゴちゃんと目を合わせたら、もうすぐ焼き上がりだ。
お味噌汁のお椀と一夜干し、お箸をお盆に載せて、スタンバイOK。
さあ、蒸らした筍ご飯の出来栄えはいかに!

その筍、金色の米におりたつべし

土鍋のふたをあけて、キラキラご飯との再会。
かき混ぜながら、おしゃもじについたお米を味見。
ちょっとかたいかな。
でも、私、かための方が好きだから、これはこれでちょうどいいかな。
朝ご飯用にお茶碗にひと盛り、ほぐした残りは土鍋に残して、もう少し余熱で温まっていてもらおう。
素敵な偶然で私の元に集まった食材たちに感謝して。
「いただきます!」

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まずはお味噌汁をスッっとひと口、赤だしと玉ねぎの甘みがいい。
そして、本日本命、筍ご飯。
味見した時は少しかたいと思ったけど。
いやいや、芯は残ってなくて改めてほっとする。
少し噛み応えのあるお米。
噛みながら甘みが増してくる感じが大好き。
筍も上品に煮えてくれた気がする。
普段の私の炊き込みご飯からすると、ちょっと薄味だけど……

(いやいや、今日はアマゴさんがいるじゃないか)
アマゴの一夜干しをひと口、がぶり。
口の中に広がる川魚の塩気。
そこにほんのり甘い筍ご飯をまたひと口。
おおっ、ご飯党の皆さん、これ!これですよね!!
お箸ですくったひと口に筍が入ってたら、そのままパクリ。
ご飯つぶだけだったら、口に放り込んでから、アマゴをさらにパクリ。
なんてことだ!
ひょっとして、この食べ方のために、私は薄味にしたのか?
(いや、ただの偶然ですけど……)
でも適当な味付けだからこそ、こんな嬉しい偶然も起こるのかも。
そこから先は、もうただひたすら、筍ご飯とアマゴを交互にかき込んで。
お味噌汁で締めて、この贅沢朝ご飯のひと時を終える。
「ごちそうさ……ま?」

筍ご飯のそのあとで

そう、朝ご飯はこれでいい。
でも、残りの筍ご飯は、このままでいいのか?
一部は今日のお昼のおにぎりに、残りは冷凍。
どちらにしても、このまま食べるなら、もう少し味を足しておきたい。

あ。
筍、煮物か何かにするかもと思って、少し取っておいたじゃない!
もう少し濃い味で筍を煮て、このご飯に混ぜ込んでから、おにぎり。
それで行きましょ!

そうと決まれば、すぐやるのだ。
ささっと筍を刻んで、お醤油とみりんは2対1くらいかな……おっと!
みりんがトプッと余計に入ってしまった。
ま、いっか。
火にかけると、濃い茶色の煮汁の中で、コトコトと筍が揺れる。
やっぱり昨日の晩より香りが甘い。
(さて、これが吉と出るか、凶と出るか)

煮詰まった茶色をまとって、かなり甘めに仕上がった筍。
土鍋の中でお待ちいただいていたご飯に、わずかに残った煮汁と共に投入。
さっくりと混ぜていくと、2色の筍がコロコロと踊る。
おしゃもじでそっとひと口、味見分をすくって手のひらにのせた。

甘い。
そして、旨い!
甘い筍もあり!断然あり!!
むぅ、さっき朝ご飯はしっかり一膳食べてしまったと言うのに。
これじゃ、もう一膳行きたくなってしまう。
とは言え、これからラップに包んだり、おにぎりにするということは?
どうせ、ちょこちょこと味見するのだ、もう一膳はやめにしておこう。

そんなこんなで、つまみ食いしながら、2日越しの筍ライフを振り返る。
筍掘りを教えてくださった大家さん。
数日前にお出汁をひいていた私。
素敵なみりんを紹介してくれた友だち。
白ご飯ドットコムを教えてくれた友だち。
棚田でお米を作ってくださっている皆さま。
おかげさまで、今日も“たべびと”は幸せいっぱいです。
「ごちそうさまでした!」

◆オマケ:丸山千枚田のこと◆
この炊き込みご飯でお料理したのは、実は、丸山千枚田のお米なのです。

地元の方が復田し、守って来られた棚田、丸山千枚田。
毎年恒例の6月の行事、虫送りも今年は中止みたい。
残念だけど、今年は気持ちだけで、豊作のお祈りをしておこうかな。
虫送りの素敵な動画があったので、祈りを込めてこちらに貼ってみます。


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