アマゴのエスカベッシュ~季節の柑橘2種を添えて
さっそくの賜りものは、アマゴの南蛮漬け
「南蛮漬け、冷蔵庫に入れてあるから、好きなだけ食べてええよ~」
引越し早々、気前の良い大家さんがそう仰ってくださった。
そんなわけで、我が家は目下、アマゴの南蛮漬け三昧。
でも、時折はちょっとお味を変えてみたいかも。
そう思っていたところに、友人が先日くれたアドバイスがひらめいた。
「夏みかんとか、季節の柑橘類はドレッシングにいいのよ~」
よし。それでいこう。
大家さんからいただいた甘夏もあるし。
気になっていた新種、春光柑も買っちゃったし。
アマゴのエスカベッシュ~季節の柑橘2種を添えて。
今晩は、これにしよう。
そう心に決めて家を出たら、さらに頂きものが舞い降りてきた。
玉ねぎだ。それもご近所さんの自家製。
「うちの畑でとって来たんですよ~。車内じゃ匂うでしょ。後ろに載せときますね」
と軽トラの荷台の籠へ、するりっと玉ねぎを滑り込ませてくださった。
なんて良い日なんだろう!
ウキウキと運転しながら、帰り道、初夏の林道の若緑を楽しむ。
どんなレシピにするか、想像するだけで唾をのみ込んじゃうよね!
不器用なりに、手間と愛をかけるのだ
家に着くと、もうお腹はぺこぺこ。
ドライブ中に、お料理妄想をしすぎたせいかな。
気持ちも急いて、慌てて支度をする。
まずは、玉ねぎ。少し厚めにスライスして塩を振る。
そこに、アマゴちゃんが漬けられている甘酢をかけて、レンジで2分。
酸っぱいものは好きだけど、強い刺激がちょっと苦手な私。
お酢をやわらかくまろやかにするために、ちょっとだけ加熱。
すると、あら不思議、私好みの味に落ち着く。
加熱した玉ねぎの甘みが、子ども舌な私をさらに助けてくれるはず。
電子レンジさんに玉ねぎをお任せしている間に、甘夏をむく。
薄皮をむくのが下手で、果肉がぽろぽろになってしまう。
いつもはそれを負い目に感じるけど、サラダなんだし、むしろOK。
時折、失敗作の果汁をすすりながら、甘夏と春光柑をぽろぽろにしていく。
崩れ方もさまざまだけど、ランダムでいいのだ。
その方が酢や塩の沁み込み具合も異なり、味に変化が出るというものです。
などと自己満足な言い訳をしながら、出来栄えを見てみる。
甘夏のオレンジと、春光柑の明るいイエロー。
(美しい色ねぇ~、お前たち)
食材は、褒めるともっと美味しくなる気がする。
そして白いお塩をぱぱっとちらして、軽くまぜ込んでおいておく。
一方、電子レンジの中でお待ちいただいてた玉ねぎ。
取り出すとほわっと湯気がたつ。
私の苦手な辛みがどこかにとけてくみたいで、ちょっとうれしい。
オレンジとイエローのぽろぽろの中へ、甘酢ごと玉ねぎをどどっと投入。
香ってくるお酢の酸味。
そこにさっきつまみ食いした果汁が加わるのだ。
味を想像しながら、にやにや混ぜる。
これで熱が落ち着くまで冷まして置けば、概ねいいはずだが。
何か、もう少し素敵にできる気がする。
キッチンを見回して、該当者を探す。
さて、誰をこの仲間に加えたものか…
見つけたぞ、ブラックペッパー、君だ。
白、橙、黄色の上に、黒い斑点を散らせていく。
混ぜ込むスプーンからひとしずく、手の上にぽたっと落としてお味見。
うん、いい気がする!
お腹が空いたので冷めきるのを待てず、オリーブオイルをさーっとひと回し。
南蛮漬けのアマゴちゃんを彼らの上にのせて、もう食べちゃいましょ!
同じ青物でつくったお浸しとお味噌汁、大家さんのアマゴの塩焼き。
そして、本日の新作メニュー。
アマゴのエスカベッシュ~季節の柑橘2種を添えて。
うん、中々ゴージャスな晩ごはんだ。
夕方5時台、もうお日様は山陰に入っているけど、外はまだ明るい。
山の空気と一緒に、五感全てで味わう。
「いただきます!」
さて、お味は?
ふふっ。
ふふふふふ!
思った通りだ。
柑橘果汁とお酢のいろんな酸っぱさが口の中で入り乱れて踊る。
食べてる私まで踊り出してしまいそう。
玉ねぎは、辛みが抜けて甘みが出るけど、しゃきしゃき感は残ってる。
おお、絶妙じゃないか。
そこに、色とりどりの酸味が絡んで、ん~、幸せ!
甘夏の酸っぱさと、春光柑の上品な甘さ。
みんな、表面は同じドレッシングの味。
でも、深部に残るそれぞれの味の個性が、噛むとじゅわっと噴き出してくる。
そこに時折香るブラックペッパー。
いやぁ、私、今日、いい仕事したんじゃない?
食べながら、いろーんな人たちに感謝の念を飛ばしておこう。
アマゴとおうちと諸々を提供いただいている大家さん。
玉ねぎをくださったご近所さん。
柑橘ドレッシングのアドバイスをくれた友だち。
以前、柑橘マリネをごちそうしてくれた友だち。
私の“たべびと”としての幸せは、みなさんのおかげです。
「ごちそうさまでした!」
◆番外編◆
5月下旬に再度、河内晩柑で同じことをやってみたら、これまた美味。
スーパーでは、和製グレープフルーツという売り文句だった。
グレープフルーツより、酸っぱさの刺激がやさしくて私好み。
こちら(↓)で発送も受け付けていらっしゃるようです。