琥珀の夏*辻村美月/感想
めっちゃざっくりあらすじ
宗教団体(のような団体)の施設内で白骨化した女児の遺体が発見された事件の真相を紐解いていくお話でした。
その事件に関するテレビのニュースで「ミライの学校」という団体名を耳にしたとき、弁護士のノリコは長年忘れていた記憶を思い出す。
小学校4年から6年の3年間、夏休みの1週間だけ「ミライの学校」に山村留学に行っていたこと。そこで出会った友達のこと…。
そして、遺体は友達のミカちゃんなのではないか、という疑惑を持ち始めます。
感想
辻村深月さんの、「子供時代の絶望」の描写力がスッゲーなと改めて実感させられる作品でした₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎
自分自身の子供時代の感情まで呼び起こされるような、リアルすぎる描写が多々あり、読んでいて楽しくてしんどかった💧🫶
純粋に題材がおもしろくて、
あり得そうで容易に想像できるけど
入りたくない宗教団体ってかんじのミライの学校の描写に、引き込まれてワクワクしました。
廃墟探索的なかんじやね。
そして、
ミライの学校の「綺麗事」な思想
🆚それを嘲笑した目で見る世間
🆚心の底では周囲を気にせず綺麗事に陶酔して生きたいと願う自分がいること
そんなことを考えさせられました。
「痛い」と思われたくはないが
本当は純朴に平和を願ってみたい、的な。。。
そして、登場人物の描写力もものすごくて
「こんな人おるなあ」と、それに対して感じる気持ちが「わかりすぎる」となる点。
そこも読んでいて楽しかったです₍ᵔ· ̫·ᵔ₎
■「憧れの友達、わかるわ~」
~ミカから見たチトセ~
チトセちゃんのような人はいる。
一人でも大丈夫な人、
悪口を言われていても大丈夫な人。
自分軸を持っていて、
安定しているように見える人。
人からの視点より、
自分の目から見える景色を重要視できる人。
実際には大丈夫じゃないかもしれないけど、自分にはそう振舞えないほどにいつも余裕がないから、そういう人に憧れるし尊敬する。
自分が仲間外れにされたときでも、常に一人でいるこの子はいつも通りに接してくれるから、ずっと一緒にいて安心したくなるけど、
今まで一緒にいたわけでもないのに、困ったときだけ利用してるようで恥ずかしいから必要以上に話しかけたりはしない
↑
わかりすぎる…
仲間外れにされたとき、自分はそれはそれはピンチで恥ずかしくて、一人でいるところを誰にも見られたくない。
でもそれ以上に「仲間外れにされてるからいつも一人の子を利用して、ひとりぼっちを免れようとしてる」と周りから思われるのもイヤだったな。。。
ただでさえみじめなのに、さらにその子を利用する不誠実さで、さらに自分のことがイヤになっちゃいますからね。。。
今なら、だれと一緒にいたいかを選んで一緒にいることができる。
一緒にいたい人以外(一緒にいたくない人+別にどっちでもいい人)は排除した暮らしを選ぶようになったなと思う。
それを思うと、相手の中身を自分の目で見て
心で感じ取って…そういうことができるくらいには余裕が出てきたなと思う、それもある種大人になったということか。
それとも団体生活が必要なくなった
今の生活スタイルに起因するものなのか。
とにかく、学生時代はそういうしんどさ、あったわね(・_・;)
■「見てて痛々しいな」
~法子から見た菊池~
いい大人なのに挟みたい自慢めがけて話を誘導していく人がいる。自分では上手くできていると思ってるのだろうけど…。
柔和そうだったり、知的そうだったり…
そういう印象を抱かせようとしている雰囲気の人ほどなんだか余計に痛々しく感じてしまう。(そんなこと思ってほんまごめん)
私の「すごいですね」「さすがです」の言葉に
つまらなさや、呆れがにじみ出ていないか不安になる。
「そんな風に思ってはいけない!素直に聞かないと。」
「痛々しいと思ってることがバレないようにしないと。」
そんな、私の影の努力もこの相手には無意味なんだろうなと後になって考えてみると、そう思う…(・_・;)
だって、その人は自分のしたい話をしてるのだから、私の言葉は聞いていても、それを口にする私の態度や表情や声色は見ていない。
(いや………、たぶんよ、、、)
「私はしないように気を付けよう」と思うと同時に「これが目指すべき姿」だとも思う。
話したい事を誰の目も気にせず話し、
私の邪念交じりの「すごいですね」を聞いても
「自分はやっぱりすごいんだ!」
「この人にも自分のすごさが伝わったんだ!」と思える素直さ…
それぐらい正直にまっすぐ純粋に生きてみたい
かわいくて、素敵やね(邪念なし)
※ここからネタバレちょっとあります
■「初潮の話」
~来た人/来てない人問題~
ずっと忘れてた、、、
小・中学生時代の初潮・生理問題・・・!!
これがけっこう当時の人生的には重く、、、
…あったなあ・・・!!
ポーチをもってトイレに行く人、それを気づいても触れないし、あんまり目を向けないようにする気遣いの空気。小学生ながらにあった。
初潮が来てない人にはわからないんだから
それについて話題にもするなみたいな空気もあった…。
(自分が勘繰りすぎてただけで無いのにそう思てただけかも)
自分の話になりますが…
小6のとき修学旅行の班決めで、いつも仲良くしていた子が自分以外の別のグループから誘われていて
誘ってる人たちはその子と仲良しメンバーでもなかったし、当然、私の方を選んでくれると思っていたのに、友達はけっこう悩んでいて…
私は会話の内容とか雰囲気からなんとなく
「この子たちは生理来てる組で、風呂とかで便利だから誘ってるんだろな」
とわかっていたんですけど
すぐに自分を選んでくれなかったことへの嫉妬とか、自分には絶対入れない領域の話で排除されてる苛立ちとか…
そういうのが我慢できなくて
「そんな迷うんならそっち行けば」と言っちゃったことがありました。
友達は泣きました。私に見えるか見えないかのところで、泣きました。
私は泣いてることを知っていたのに謝らなかった。その子も私に傷ついたと告白せず、その後私のことを選びました。
こういう、本音を話し合う現場を避けてきた人生だったなあ。
時間にばかり解決をゆだねて、、、
ごめんな、時間…。
いつもありがとうな、時間…。
けっこう忘れてた出来事ですが
こういうのを思い出せるのが小説のいいところやね…(話の着地ミスってるか?)
■「人の恥ずかしい秘密、
不意に知っちゃったらどうする?」
詳しくは書きたくないけど自分も、ミカちゃんのように身近な大人が性的なものに摂取してる姿を不意打ちで見てしまったことがあるのですが…。
私は結局、見てしまったことを誰にも話さず
笑い話にもできず、一人で今日までずっと抱えたまんまや…(:_;)
人の秘密って、不意に触れたくないよなあ
相手が話してくれたり誰かにバラされるのは別やけど。
その秘密が恥ずかしいものであればあるほど
その相手が尊敬する人であればあるほど、しんどいんや。
だれにも話せないし、気づいてないフリしてあげたい。でも、知ってしまったからには印象は変わっちゃうけど、変わってないようにふるまいたいし・・・。
みんなこういうときはどうやってるんやろうね
■「純朴すぎる人のことどう思う?」~教育ってむずい~
ミライの学校では、世にいう「善人」を育てようとする。大真面目に「戦争」「いじめ」そういう話をみんなで議論する。
だから、素直な子ほど
「純朴すぎる綺麗事人間」に育つ。
普通の学校(普通とは?は置いといて)では
ちょっとぐらいワルじゃないと上手くやっていけなかった気がする。
いたずらや冗談を理解して容認できる程度の柔軟性がないと、なかなか人気者にはなれなかったりする。
「良い子」が好きなのは大人だけやからね…。
それでも、純朴人間ってたまにいるけど…
これもまた羨ましさと、どこか蔑視してしまう感覚がある…(:_;)
理想通り、公式通りにいかないことや
いろんな考え方や文化が世の中にはあるってことを知りもせず、知っても信じようとせず自分の価値観だけを正しいと信じて疑わないことに、人生経験の浅さみたいなものを感じちゃう
それと同時に、それだけ素直に
「これはこう!」と言い切ってしまえるような自分自身を信じる心には、芯の強さは感じるし、自分が揺らいでるときにはそんな人と接すると安心するんかもな…。
でも、やっぱり自分のように大半の人が純朴さんには悪いイメージが先行するんやろうな
とすると、大人のエゴでそういう風に育てるのってだいぶとかわいそうなことなんじゃ…?と思えてくる(´;ω;`)
しかも、子供のころはみんな純朴やったやろうからそのまま大人になるような環境下で育ったこと、つまり人生経験の浅さって、別に本人のせいじゃないからなあ…
運とか、周りの大人とかさ。
ミライの学校では、そういう綺麗ごとで「善」な思考回路を軸に子供たちを教育していたようやけど、そんなことでは社会でやっていけないって菊池は言うてた。
それは前述の「ちょいワルの重要性」みたいなことでもあると思うけど…
自分はそもそも、子供に「こう育ってほしい」みたいな思想を押し付けること自体したくないなあとおもうけど…
実際子供が生まれたらどうなんやろうか
自分の子供が、東リベみたいなかんじで
ぱーちんの彼女の親みたいになるのとか最悪やろと思うてまいますし。
例えば「こうなってほしい」と思っても
どうすれば「そうなる」のかはわからないし
「幸せになってほしい」すらうまくいかないし。愛情を与えても、伝わらないことだってあるんやし。
子育てって、めちゃむずいね…。
どうすりゃええねん
おわり☆
辻村深月さんの作品って、本当に子供時代の絶望を書くのがうまいなって思う!!!
仲間外れにされたときの描写
自分の心情、行動、相手の心情、行動…
よく覚えてるなあ~とおもうし、自分もそれによって思い出す感情がたくさんや!
主人公は、けっこう他人の心の機微に敏感なタイプが多くて、そこが自分と被るから共感できるとこが、好き!読んでて、あ~わかる(笑)と思えて楽しいし、しんどい
1個微妙だったのは、ミスリードみたいなものがいつも全然衝撃じゃない。すぐ気づいちゃうのが残念。
公開されてもびっくりしない。
今回の本も、かがみの孤城もそうだった。
そんな「衝撃展開」みたいなもの
なくても、登場人物の感情描写だけで十分おもしろいからストーリーの中で小賢しい(←言い過ぎだろ!)細工しないで~(:_;)
とか、生意気にもおもてまいましたわね。
「琥珀の夏」題材からすでに引き込まれる内容で、読んでてたのしかったです!!(*^-^*)☆
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