「やることいっぱい」
頭痛外来の帰り、早朝。時刻は9時。
出勤する大人に囲まれながら、ぼんやりとエスカレーターに乗っていた。すると反対のエスカレーターから“やることいっぱい”と書かれたトートバッグを肩にかけた女性が駆け降りて行くのが目に入った。何とまあ、可愛らしい。そうだよなぁ。みんな“やることいっぱい”だよなぁ。その中から優先順位を決めて、選んで、安堵したり後悔したり。こんな混沌とした世界のなかでも、やはり人生だなぁ。
私だったらあのトートバッグに何を詰めるだろう。今なら最近読んだレーエンデ国物語を入れるかもしれない。それは、何と幸せなことだろう。
仕事のことなど、絶対に、いれてやらない。
なーんて思いながら。電車の時間までゆっくりするために喫茶店に向かった。
観覧車が9時を示している。この時間に出勤できるなんて羨ましい、と出勤する人を嫉みながら。