あのタイの幻のガイ・ヤーンはいずこ?また行って食べたいのに・・・
幻のガイ・ヤーンの美味の記憶
あれは、今から30年ぐらい前の頃の記憶です。そのころ、私は旅行業界に所属していたとき、年間130日間、つまり一年間の三分の一は添乗員として海外渡航していたときのお話。
大学時代のゼミでアジア・アフリカ・ラテンアメリカの第三世界の政治経済を勉強していた関係で日本から飛び出して世界で活躍する夢を抱いて、いきなりパキスタンに赴任する商社に内定をもらいました。ところが、国際情勢のあおりを食らって3月末日に内定取り消しの憂き目に遭ってしまいました。
そこですぐに方向転換、短期でもいろいろな国を巡ることができる旅行会社に就職しました。訪れたい国の興味の対象は先進国ではなく、発展途上国にありました。
特にタイ国は、通算50回以上の渡航歴で最盛期にはタイ語も多少、話せるぐらいのレベルになりました。今ではまったくさび付いてしまい忘れてしまいましたが・・・笑
当時、大学のゼミの教授と学生たちを発展途上国に連れて行きました。机上の学問ではなく、実際に目で見る体験を通して、百聞は一見にしかずという精神でツアーの企画を立てては学生に海外体験をさせていました。
そんなツアーの中で、とあるタイの東北地方をおんぼろバスで目的地に向かっていたときのお話。タイの東北部、名前も知らない村はずれで、なんとも言えない香しいやきとりの匂いがして来たのです。
ちょうどお腹の虫が鳴っていた頃あいだったので香ばしい香りに誘われてバスを止めてみんなで食すことにしました。それがガイ・ヤーンだったのです。鶏を炭火焼きにしたもので、ハーブや醤油、ナンプラーやニンニクの風味が染みこんだものです。
炭火できつね色に焼けた醤油とナンプラー、ニンニクの香りに包まれたぷっくりとふくれた鶏もも肉の艶に圧倒されました。骨付きの肉は、がつん、ガツンと出刃包丁でぶった切ってくれます。当然、農家の庭先に放し飼いの地鶏であることは間違いありません。
先生をはじめ、学生たちみんないっせいに、手づかみでかぶりつきました。じゅわあっと肉汁がしたたり、鶏の渋味とハーブ、ニンニクの香りが全身を駆け巡ったことを今でも鮮明に覚えています。
私自身も世界中、いろいろな所を訪れて多様なグルメを味わってきましたが、そのときの味は今まで生きてきて味わった中でほんとうに究極の味で
した。今でも忘れられません。
もう一度訪れてみたいと思っても、名もない小さな村外れの屋台みたいな所だったのでその願いは叶いません。
幻のガイ・ヤーンの記憶として残っているだけです。
また、ぜひ訪れて食べてみたい!できない相談ですが・・・