京都大学サマーデザインスクール "sds 2019"がとても充実した3日間だった話。
UXteamの蓮見です。
2019/9/4 - 6に京都大学にて開催されていた3日間集中のデザインワーク、「京都大学サマーデザインスクール」(以下sds)に参加してきました。
主催は京都大学デザインイノベーションコンソーシアム。
コンソーシアムの会員企業や大学などから募集した実施テーマに基づいて深掘りし最終日に成果をポスター発表する流れです。
sdsの概要はこちら
「京都大学サマーデザインスクール」は、これまでにのべ2,000名が参加してきた、3日間集中のデザインワークショップ。 様々な分野の参加者と実施者がテーマに分かれ、社会の実問題に真剣に挑みます。
規模は今までで一番小さいとしながらも、総勢140名以上。
地方も様々。学生だったり、業種や職種もバラバラな社会人が集結。
今年度のテーマは全部で11個ありました。
01:”共感消費”を考える〜私たちの「買う」理由〜
02:人と地域を繋ぐモビリティの在り方をデザインする
03:世界メッシュ統計に基づく意思決定方法の発見的探索
04:未来の「食」を考える 〜持続可能な未来社会をデザインする〜
05:闇が生み出すクリエイティビティ
06:地域活性化を目指した、マチナカに点在する「コインパーキング」のリデザイン 〜景観を損なうコインパーキングを価値ある存在に〜
07:京都のエモーショナルコネクションをデザインする ユーザのインタラクションを誘発するよううな無意識の行動を導き出す
08:不便な「移動サービス」を設計してみよう!!!
09:Modernise 挑戦 「日本酒を海外の食卓酒へ!!」
10:5Gの世界 -距離の概念を壊す-
11:未来の市役所ホットLINE
うーん...どれも興味深いし、どれも面白そう。
迷いつつも、私は02の「人と地域を繋ぐモビリティの在り方をデザインする」というヤマハ発動機さん実施のテーマを選択しました。
なぜこのテーマにしたのかは、
THE 直感
って書くとテキトーな感じがしますが、直感って潜在意識が関係しているとかなんとかの話もあるように、モビリティについて自分なりにモヤモヤした状態ではあったけれど何かしらの課題意識が潜在的にあったのだと思っています(きっと)。
SDS 3日間の振り返り
1日約9時間×3日間のワークで内容的にもかなり濃い3日間だったので、どうしても簡潔にまとめられず(まとめたくない気持ちも強く)且つあまり記事を分割したくない気持ちもあり、ここから先は少し長くなります。
【1日目】
今回のテーマはモビリティの可能性課題という最適解が不明な中で新しい価値をどう作っていくかというところで、まずモビリティが進化した理想的な移動手段である、ドラえもんのひみつ道具”どこでもドア”をメタファにして、ベネフィットを考えました。
どこでもドアがモビリティの理想形、究極の形であるとすれば、現状のモビリティの問題や課題はどこでもドアで解決できるわけだし、このベネフィットをベースにビジョンメイクしてアイディエーションしていけばいいじゃないとなりがちだけど、それってつまりこれから考えるアイディアはどこでもドアが発想の限界になってしまい結局誰もが考えられるであろう当たり前のアイディア(解決策)の外へ行くのは難しくなってしまう。
だからこそ反対に ”失ってはならない大切にすべき価値”を見つけてアイディアと掛け合わせることで、私たちならではの解決策が導き出せるのではないかということで、次に”どこでもドアの登場によって失われてしまう価値” について意見を出し合いました。
出てきた価値についてあれこれ話し合いながら、
絶対に失いたくない価値というのを導き出してみました。
・移動中のリアルな体験、つまり景色の移り変わりや風、匂いなど
・ふとした寄り道をしたくなるような好奇心
・たまたま見つけた美味しいお店や美しい景色、そういった偶然性
・移動中や旅先でのコミュニケーション
これらは02チームが考えるモビリティには必要不可欠な要素として入れるべき価値であると合意形成できたところで1日目終了。
【2日目】
2日目は”都市の課題”を考えてみることから始まりました。
今回は様々な都市の典型的な課題が詰まっている京都を舞台に、都市の課題について意見を出していきましたが、02チームには京都に住んでいる方も観光で何度か来ている方も家族構成や年齢などバックグラウンドが様々なメンバーがいたからこそ、違った視点からより多くの意見が出てきていたような気がします。
多くの人の考えや視点を蓄積していき自身の妄想スキルを高めることが、デザイン思考で大切な”共感”を育む1つの手段だと考えているので、この場で色々な考えや思いを聞くことができたことは、今回私自身一番得るものが多かったところでもあります。
価値と課題が出揃ったところで、次にアイディエーションしました。
(※普段思う存分アイディエーションできる機会が少なく全力で楽しんでしまった結果、ここら辺の写真を撮り忘れた。)
都市の課題にモビリティになくてはならない価値を掛け合わせて、”アイディアの種”を出し合いました。ポストイットに絵で表現して伝える、なかなか難しいですが、ハイクオリティな絵もちらほら...尊敬しかない。
アイディアの種を更にブラッシュアップするべく、ここから気になる種を3つ選択してそれをベースに発散させていきました。
出てきたアイディア達を紹介
ごみ収集自転車、動くゴミ箱、移動×掃除といったアイディアの種からできたアイディア。
これは、観光客が移動の足として使うレンタサイクルにゴミ箱を載せて”移動できるゴミ箱”を実現しようと出てきたアイディアです。様々な問題があっての事ですが、京都はゴミ箱が設置されていないところが多いですよね。
このアイディアでは、観光客が乗る自転車は必然的に人の集まる場所へ行く、つまりゴミを捨てたい人が多い場所へ行くので、ゴミを捨てたい人はその自転車を見つけてゴミ箱に捨てる事ができ、ゴミがいっぱいになったら、自転車に乗っている人は街中にあるゴミ箱回収ステーションに行って新しいゴミ箱に交換したらまた観光する事ができる、そんなシステムになっています。
無料で移動できる上に社会に対してちょっといい事もしているという満足感も得られる、なんて素敵な乗り物なんでしょう❤️
次にこちら。
左側は、忍者ポーターと街リフト、屋根の上を道にしてしまうアイディアから発散させたツーリストと住人の世界を2つのレイヤーに分けたもの。
住人と観光客、それぞれの感じている課題を1つのレイヤーで解決する事には限界があるのでは...という事で思いっきり2つに分けてしまい、それら2つのレイヤーは観光地でのみ交わるという、面白くて楽しい、そしてお互いの世界でそれぞれが快適に過ごせる、これまた素敵なアイディア。
それどうなの?とクスっと笑ってしまうようなアイディアだけど、どれだけ実現性が高いか検証すべく、個人的に夜の街へフィールドワーク。
このアーケードの上を通路に...いける気しかしない笑
続いて、スケッチ右側にあったアイディア。これは"喋る電柱"というアイディアからヒントを得て、喋る街京都をコンセプトとしたもの。
みんなスマホで地図を見て移動をするため、場所によっては人溜まりがすごいことになっていますが、電柱が喋ることによって人を誘導する、流れを変える、そんな事が期待できると思いました。
普通に電柱が喋りかけてきたらただただ面白いしね。この先にある電柱はどんな事を喋るのかなと、歩く事もより楽しくなりそう。
景観の為、電柱を地中に埋めるようになっている京都ですが、”隠したいものを隠さなくて良いものへする”、こういう発想の転換も素敵。
解決策までまとめたところで2日目も終了。
そしていよいよ最終日、
【3日目】
この日は午後にあるポスター発表に向けて、朝からお昼までの間、2日間の成果をポスターにまとめる作業をしました。
2日間で出てきた意見やアイディアがたくさんある中で、何をどうまとめたら良いのか試行錯誤しながらも、チーム全員でまとめ上げた力作がコチラ。
午後は、ポスター発表なのでメンバー全員で交代しながらチームのアイディアを説明したり、他のチームのポスターを見に行ったりして過ごしました。
他のチームのポスターは掲載許可をいただいてないので1つ1つは載せられませんが、どのチームも思考プロセスやまとめ方、見せ方に様々な工夫がされていて、とても参考になる素晴らしいものでした。
そして最後に修了証をいただき、おしまい。
と思いきや、なんと02チーム、sds2019の最優秀賞もいただいちゃいました!やったー!!!
ただただ嬉しい。嬉しすぎて会社のデスクの上に飾っています。
所感
朝9時スタートで18時エンドの3日間...濃厚で濃密な3日間でしたが、疲労感というより充実感の方が優っていました。
今回、sdsには「インプットを増やしたい」と自分の視野の拡大を目的に参加しましたが、普段業務で扱わない内容について突き詰めて考えることができたり、普段なかなか交流のない方々とのアイディエーションやディスカッション、またそこから得られたナレッジなど、sdsの3日間は何ものにも代え難い良い経験になりました。
それもこれもヤマハ発動機さんのメンターの方による絶妙すぎるファシリテートのおかげと、個性豊かな02チームのメンバーのおかげでしかないです。
どうもありがとうございました!
(懇親会、参加したかった。それだけが心残り...泣)