駆け出し百人一首(16)あれば厭ふ背けば慕ふ数ならぬ身と心との仲ぞゆかしき(鴨長明)
あれば厭(いと)ふ背(そむ)けば慕(した)ふ 数(かず)ならぬ身(み)と心(こころ)との仲(なか)ぞゆかしき
玉葉和歌集 雑五 2518番
**俗世に留まっていると、嫌になってくる。かと言って出家すると俗世が恋しくなる。どうせ俗世にあっても取るに足りない、つまらないわが身なのに……わが身とわが精神との関係性を知りたいものだ。 **
When I lived in a noble society, I wanted to leave there. Once I became a Buddhist priest, I want to return to secular life. I don't know what I am at all.
「世を厭ふ」といえば俗世が嫌になって出家したくなっている心境ですし、「世を背く」といえば出家する行為そのものを指します。
鴨長明は元々、京都の大神社「賀茂神社」の禰宜(神主)の跡継ぎになれる立場でした。しかし、父が早くに亡くなると、おじに家を乗っ取られ、思うような神職に着くことはできませんでした。そうした思いからか、出家し、蓮胤という僧侶として庵暮らしをするようになりました。
古文単語
数ならず:取るに足りない、つまらない。
ゆかし:見たい、聞きたい、知りたい。どんな様であるか確かめたい気持ち。
サポートは、書籍の購入、古典の本の自費出版に当てさせていただきます。