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53-1.小児期の逆境的体験と保護的体験の影響
特集 心理職必携「トラウマケア」エッセンシャル
菅原ますみ(白百合女子大学教授)
下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.53-1
注目本「訳者」研修会
「小児期逆境体験の影響と、その回復を学ぶ」研修会
―子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス―
【日時】2025年2月9日(日曜)9:00~12:00
【講師】菅原ますみ先生(白百合女子大学教授)
【注目書】「小児期の逆境的体験と保護的体験-子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス」(菅原ますみ他監訳 明石書店)https://www.akashi.co.jp/book/b618445.html
【申し込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=CTogFdTX0zc
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=0XHm83Czw1E
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=bo3sQBOac0w
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臨床心理iCommunityオンライン事例検討会
「子どものトラウマとCBTの活用」事例検討会 -子ども+学校+家庭をつなぐS Cの役割-
【日時】1月31日(金曜) 19:30~21:30
【事例発表】松丸未来先生(東京都スクールカウンセラー)
【参考文献】「よくわかる 学校で役立つ子どもの認知行動療法(遠見書房) https://tomishobo.stores.jp/items/63c4f7c8791d021327882e96
◾️事例検討会のため「心理職」及び「心理職を目指す大学院生」のみ受付
◾️[守秘義務に関する同意書]をご確認の上、同意した方のみ申込みください。
【申込み】
[臨床心理iCommunity有料会員(院生会員含む)](無料)
https://select-type.com/ev/?ev=B6MLvE0U7K4
[iCommunity有料会員以外の心理職又は心理職を目指す院生](1000円)
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[オンデマンド視聴(心理職又は心理職を目指す院生)](2000円)
https://select-type.com/ev/?ev=40wnL7t7meM
【関連記事】https://note.com/inext/n/nd2d832f12720
臨床心理iCommunityオンライン事例検討会
「自殺念慮ケースを巡る精神科医と心理職の対話」事例検討会
―トラウマの理解と支援のための医療と心理支援の連携に向けてー
【事例発表】下山晴彦(跡見学園女子大学/臨床心理iNEXT代表)
【指定討論】 林直樹先生:西ヶ原病院精神科医師/今井淳司先生:都立松沢病院精神科部長/日下華奈子先生:東京発達・家族相談センター心理職
【申込み】1月28日(火曜)まで
[オンデマンド視聴(心理職又は心理職を目指す院生)](2000円) https://select-type.com/ev/?ev=-49Si6EWKn8
【関連記事】https://note.com/inext/n/nf9ecdf6ebdab
1. 小児期の逆境的体験と保護的・補償的体験とは何か
「小児期逆境的体験」(Adverse Childhood Experiences : ACEs)とは、被虐待や機能不全家族との生活による心身の辛い体験のことです。ここでの小児期とは、0歳から18歳未満を意味します。この時期における心身の辛い体験とストレスは、神経生物学的変容を引き起こし、健康リスク行動、慢性疾患、発達の問題など、その後の心身の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。また、「小児期保護的・補償体験」(Protective and Compensatory Experiences: PACEs) は、小児期逆境的体験の悪影響を生涯にわたって緩和してくれます。
今回の研修会では、このような「逆境的体験」と「保護的・補償的体験」となる出来事はどのようなものであり、それがその後の人生にどのように影響を与えるのかについて、アメリカ心理学会の最新研究の成果に基づいて解説します。
さらに最新の研究成果に基づいて、逆境体験のある子どもに対してポジティブな発達を促し、成人期における悪影響を修復するために何が役立つのか、小児期逆境的体験の世代間伝達を断ち切るために保護的・補償的体験を増やすことがどのように役立つのかについても解説します。なお、逆境的小児期体験は、トラウマとなっていることが多いので、トラウマ・インフォームド・ケアやコミュニティとの連携も重要となります。
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2. 小児期の逆境的体験は発達性トラウマをもたらす
小児期逆境的体験のケースの一部は、複雑性PTSDと診断されます。しかし、多くは出来事基準を満たさないために、現行の診断基準では正式にPTSDあるいは複雑性PTSDには診断されません。しかし、PTSDとは診断されませんが、PTSD症状を示すことがしばしばあります。そのような場合には、「発達性トラウマ障害」と言われたりします。また、PTSD症状を明確に示さない場合には、発達性トラウマと呼ばれることがあります。
いずれにしろ、本研修会では、発達科学の最新知見に基づき、子どもの発達に悪影響を与える要因を理解し、トラウマの理解と支援に向けて何が必要かを学ぶことができます。小児期逆境的体験は、発達障害特性を持つ子どもが経験することが多くなっています。発達障害特性と小児期逆境的体験が重なることで、より深刻な発達的問題である発達性トラウマ障害につながることが注目されています。
以下に、「小児期の逆境的体験と保護的体験-子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス」(明石書店)※)の監訳者であり、研修会の講師をお願いしている菅原ますみ先生にインタビューした記事を掲載します。子どもの発達の問題や子どものトラウマの回復支援に関心のある多くの皆様のご参加をお待ちしております。
※)https://www.akashi.co.jp/book/b618445.html
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3.なぜ、子どもの逆境的環境への注目が必要なのか?
【下山】今回の研修会では、小児期の逆境的体験と保護的体験をテーマにお話をいただきます。逆境的体験というと、狭い意味ではトラウマ体験ということになるかと思います。それは、最近注目されている複雑性PTSDや発達性トラウマ障害と深く関わる事柄です。このテーマと関連して、先生が監訳された「小児期の逆境的体験と保護的体験:子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス」(明石書房)の「まえがき」に書かれたことが非常に印象的でした。
そこでは、「トラウマで苦しむ子どもの心理支援や社会的サポートはとても重要である。しかし、それは、川の中で溺れている子どもを救い出すことであって、それだけでは十分ではない。川の上流の橋に穴があいていて、そこから子どもが川に落ちているのだから、橋の穴を塞ぐことをしなければならない」という趣旨のことが書かれていました。
同書は、まさにそのような発想で、子どもの逆境体験と、その影響からの回復に役立つ保護的体験に関する研究成果が示されており、非常に参考となりました。溺れている子どもを救うだけでなく、溺れる原因となっている逆境体験に幅広く気づき、それを減じていく努力が必要ですね。混乱を示す子どもの心理支援を専門とする心理職としては、目の前の現象だけにとらわれないことは、忘れてはならない視点であると肝に銘じました。
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4.逆境的環境で生きる子どもたちが大勢いる!
【菅原】私は発達心理学を専攻しておりまして、そういう意味では、本当に小さい赤ちゃんがどんどんすくすく成長して立派な成人になっていって、健やかな人生を送ってほしいと願いながら研究しています。しかし、やっぱり本当に小さいうちから逆境にいる子どもたちがリアルに存在しており、そしてその子たちが時間経過のなかでどんどん悪循環の中に巻き込まれ、苦戦していることを実感しています。また研究をする中でも、いつもその実態を感じていました。
それに対して何ができるだろうかということはいつも考えていました。そこで出会ったのが、本書です。この本の中に出てくる小児期逆境体験の概念は非常に広く捉えられています。それは、発達心理学では、そもそも累積的リスク(cumulative risk)※という概念で言われていた事柄です。
今はまだ心身に重大な支障は起きていなくても、それを子ども期に体験したことが、その人の人生を難しくしていき、放っておくと後々大変なことが起こるリスクが高まってしまう、というものです。まさに先ほど話題となった本の「まえがき」にあった、上流にある「橋の穴」のリスクなのです。うまく泳げる子はすぐに岸につけるかもしれない。しかし、不幸が重なっていくと助かることがどんどん難しくなる。なので、小さくても穴が開いた時に補修するのが、コストの面からも最も有効だということですね。
※)Cumulative Risk : Gary W. Evans et al.(2013) Cumulative risk and child development. Psychological Bulletin, 139, 1342-1396.
【下山】 “リスク”は、普通は起きないことと考えられがちです。一般的には、「生活が安定していて、家庭に問題なければ、それが普通だね」となります。たまたま何か悪いことがあると「普通にはないリスクが起きた」と考えがちです。しかし、御本を読むと、上流の「橋の穴」に例えられる危険なことは、実はかなりの割合で起きていることが研究で示されています。
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5. トラウマは、個人の問題ではない。環境の問題なのだ。
【下山】御本を読むと、我々は、リスクがある方が普通なのだという、深刻な事態を事実として認識していなかったことに気付かされます。では、なぜそのような事実に気づかなかったのか。それは、問題が起きた時にしか気づかない、しかも“PTSD”や“複雑性PTSD”といった診断枠組みに入るものしか見ていなかったという視野の狭さがあったと思います。
実際にPTSDに診断されるものは、トラウマの問題の一部でしかないわけです。しかも、医学的な障害として診断されてしまうと、それはその患者の問題であると“個人化”されてしまいます。その結果、問題が起きている源流にある逆境的環境を無視するようになってしまいます。しかし、御本を読むと、「トラウマは、個人の問題ではないのだ。貧困も含めて、幅広く存在する家庭や社会の環境の問題なのだ」ということが明確に示されています。
【菅原】発達心理学者のブロンフェンブレンナー(Bronfenbrenner)が述べているように、子どもにとっては、その子を取り巻く家庭があり、その家庭を取り巻く地域と社会があり、それらが全てが有機的につながっています。だから、その子どもに不幸が降りかかるのは、個人の問題ではなく、もっと大きなシステマティックな問題があるわけです。それが社会的に大きな歪みだったり、多くの家庭が抱えているリスクだったりする。だから、そこの中に置かれる子どもは、本当に多数いるわけです。
ところが、医学モデルだと、最悪の事態が起きてしまった結果を診て初めて治療を開始することになってしまいます。その前に、そのような結果に至らないようにするにはどうしたら良いかということを見落しがちです。それに対して、そうならないためにどうした良いかという発想は、発達心理学の中では大事にされているところです。実際のところ、予想より多数の人がそのようなリスクを抱えていて、リスクのある人たちに環境的なストレスが重なり悪循環が進行してしまうと、その先に最悪、PTSDや複雑性PTSDの診断を満たすような事態に至ってしまう、ということになります。リスクの段階で積極的に介入していけばそのような悲劇的なことに至らなくて済むのではないでしょうか。
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6. 小児期逆境体験の影響は精神医学では捉えきれない
【菅原】それから、精神医学の発想でいくと、PTSDなどの精神疾患が強調されてしまいます。しかし、小児期逆境体験の影響は、精神疾患だけでなく、身体疾患として顕れることが明らかになっています。そのような身体面への影響も私たち心理学を専門とする者は見逃してはならないということもあります。心と体の健康全体に影響が出ることは、これまでの小児期逆境体験研究でわかってきた非常に重要なポイントです。この点も従来の精神医学では重視されてこなかったポイントだと思います。
【下山】御本の第3章に逆境体験の影響が脳や身体にも影響し、当然行動にも影響することが研究成果を踏まえて具体的に示されていますね。“心”だけでなく、生活全体を見てその影響を包括的に捉えていますね。
【菅原】逆境的体験によってPTSDや問題行動が結果として起きてくることは分かっていました。しかし、なぜ起きるのかというメカニズムについてはよく分かっていませんでした。この点について、小児期逆境体験研究の領域では、当初は予防医学の領域で逆境体験が広範囲な心身疾患と関連することが明らかにされ、その後ストレス生理学などの参加によってその関連メカニズムが次第に分かってきたのが現在の状況です。
今日では、逆境的環境の中でも生き抜いていけるように子どもたちの脳が変性したり、遺伝子発現のエピジェネティックスも変わっていくことがメカニズムとして分かってきています。特に脳に関してはさまざまな知見が蓄積してきていますので、研修会のなかでもお話ししていけたら、と思っています。
【下山】研究結果は、パワフルですね。心理支援といった領域だけでなく、行政の政策立案などの社会的場面においても広範囲に影響を及ぼしていますね。この広範囲の社会的影響というのは、逆境体験の深刻さについての研究成果によってもたらされたという面もあると思います。
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7. 小児期逆境的体験とその影響は広範囲に及ぶ
【下山】しかし、それだけでなく、出発的となる逆境体験そのものが広範囲の社会的場面で起きていることもあると思います。情緒的虐待や身体的虐待、性的虐待だけでなく、情緒的なネグレクトや身体的ネグレクト、親から叩かれたことも含めて家庭内の暴力、アルコール等の依存の問題、さらには親の別居や離婚、家族の精神疾患などの広範囲の状況が逆境体験の要因になっていますね。御本を読んで逆境体験の問題の深刻さと広さを感じました。
【菅原】研究レベルでも「逆境体験の影響の本質は何か」という探究が今まさに進みつつあります。結局脅されて恐怖を感じることと、それから欠乏・剥奪(deprivation)ですね。つまり、供給されるべきものが、愛着もそうですけど、供給されない状態です。感情レベルで言うと、子どもが悲しかったり辛かったりといったネガティブな感情状態が続いてしまうことが逆境体験の悪影響を引き起こす原因となっていきます。
ネガティブな感情に関する脳の部位で言えば、扁桃体や視床下部の自律神経系などです。例えば人が熊に出会うといった恐怖場面では、扁桃体や交感神経系の作用が活性化し、全身に危機に対処するための“逃げるか・闘うか”といった指令が発せられ、集中して危機に対処する。しかし、生物の脳のシステムは、そのような緊急時の危機対応が長く続くことは想定されて設計されているわけではありません。そのため、緊急時の状況が長く続きすぎると、結局それは、脳に負荷がかかり過ぎてしまい、さまざまな悪影響が及んでしまうことになります。
その結果、危機的状況に至っているのにストレス対応のための脳のシステムのアクセルが入らなかったり、逆に一旦アクセルが入ったら入りっぱなしになってしまったり、といった異常な反応パターンが出現したりします。負荷がかかりすぎたゆえに脳が変調をきたして、神経系のみならず、内分泌系・心臓血管系・免疫系などに悪影響が及び、様々な健康問題を引き起こすリスクが高まり、その人の心身全体に悪影響が及ぶことになっていくとわかってきました。
大きな括りとして、子どもが怖いと感じたり、不安に感じたり、寂しい・悲しいと感じたりするネガティブな感情経験が慢性化するような状況が逆境体験であるといえます。友達にいじめられることも、家庭外の人に暴力を振られたりすることも逆境体験になります。いずれも、その子が恐怖感を強く感じる体験です。そのような慢性的な感情体験の問題は、まさに心理学を専門とする者が扱うテーマであると思います。
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8. トラウマからの回復に向けて保護的・補償的環境の意義
【下山】御書の特徴としては、医学モデルとは異なる逆境体験の理解の仕方を提示していることだけでなく、もう一つ大きな特徴があると思いました。それは、保護的、あるいは補償的な体験の意義をしっかり取り上げていることです。これまでは、「逆境体験でトラウマ反応をした人には心理治療をすれば良い」といった短絡的な対処法で済ませていたと思います。しかし、本書では、保護的環境における体験が心の傷つきを補償する機能を持っていることを明確に示しています。しかも、それを社会政策に繋げていくことが目指されています。
【菅原】逆境的な環境に置かれてしまったがゆえに体験せざるをえなかった逆境体験の悪影響の出現を防ぐのが、まさに保護的な体験です。これは、発達心理学が長い間追求してきたレジリエンス研究にルーツを持っています。発達心理学におけるレジリエンス研究は、アン・マステンの研究※)に遡ることができます。逆境的環境で育ったけれども悪影響が結実しなかった人と、逆境の影響で問題が結実した人の差を探り、さまざまなレジリエンスファクターが明らかにされてきました。逆境の影響を乗り越えるレジリエンス・プロセスは、まさに心理学の私たちが探究し、発信していく必要があると思っています。
※)アン・マステン (著), 上山 眞知子他 (翻訳)(2020)発達とレジリエンス―暮らしに宿る魔法の力. 明石書店.
【下山】臨床心理学では、トラウマに対しては「エクスポージャー」という、直面化の技法が有効であるという議論が定着しています。確かにエクスポージャーはトラウマからの回復に有効な面があるとは思います。しかし、トラウマの回復は、単純にトラウマ記憶を書き換えるためにエクスポージャーをすれば良いというものではないですね。
安心できる保護的な環境と体験があってこそ、少しずつ直面化が可能となるということだと思います。その意味で本書は、希望を与えてくれる内容になっていると思います。それは、トラウマを受けた人だけでなく、トラウマからの回復を支援する心理職にとっても希望を教えてくれる本ですね。
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9. トラウマ理解は、医学モデルから発達モデルへ
【下山】どちらかというと日本の公認心理師制度は医学モデルに従って作成されていますが、トラウマの心理支援といったことを考えるならば、発達モデルが重要となると思います。心理職がもっと幅広く心理サービスを通して社会に貢献できるためには、発達心理学やその研究成果を持って詳しく知る必要がありますね。
【菅原】そもそも特にトラウマがない人でも日々を安全と安心のなかで過ごすことが大切ですね。そのような安心安全な環境のなかで、肯定的な感情を維持することが可能になります。私たちが安堵したり希望を持てたり、楽しいと思える時には、脳はすごく穏やかです。フレドリクソン(Fredrickson)が言う通りで肯定的な感情の拡張-形成理論は本当に正しいと思います。
生活が保障される中で初めて人はゆっくりと考えられるわけです。だから、トラウマのケアは、そのような環境において行われるべきです。ポジティブ感情を体験することによって傷ついた脳自体が癒されていくのではないか、というところまで研究が進みつつあるとも言えます。その点で我々心理学者がもっと頑張らなくてはいけないですね。
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10. 安心・安全の日常的生活が回復の基盤となる
【菅原】しかし、逆境的体験のある人がそのような保護的環境を自力で作っていくことは難しい。ご本人の努力だけでなく、たくさんの援助や行政サポート、さらには地域全体の対応が必要ですね。まして、子ども一人の力では安定した生活はできない。ですので、肯定的感情が持てる安定した生活環境を、逆境の渦中にある子どもたちにどうやって実現していくかはとても重要な課題です。傷ついた心を癒すための健やかな生活環境の構築の重要性は、たくさんのレジリエンス研究の蓄積の結果として、アン・マステンによって、オーディナリーマジック、つまり「日常生活の魔法」という概念で表現されています。
もちろん認知行動療法もエクスポージャーもとても大事で、日常の安定した生活が実現するなかで、そうした専門的な支援がよりいっそう回復への効果を高めていくのではないでしょうか。生活環境の整備も専門的な支援もどちらもコストがかかり、個人の力でまかえない部分は、やはりコミュニティや行政が支えていくべき問題だと思います。米国では、そのような意識がかなり浸透してきていると感じます。州レベルでも、小児期逆境体験への取り組みがなされてきているようですので、研修会ではそういった動向についても少しご紹介できたらと思っています。
【下山】この研修会の中では、先生の研究で今新しく見えている日本の特徴なども教えていただけるということもお聞きしております。そのことも含めて「子どもの逆境的体験の影響と、その回復」の最前線を学べることを楽しみしております。
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■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(臨床心理iNEXT 研究員)
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臨床心理マガジン iNEXT 第53号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.53-1
◇編集長・発行人:下山晴彦