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雪舟と②

こんにちは、お久しぶりです。

今年は9月が緊急事態宣言下だったので、1年の目玉である秋の展示の始まりが遅くなったりで(?)、未だにあちこち足を運んでいます。

今年も日本画、洋画、まんが原画、陶磁器、仏像など色んな展覧会に行きましたがどれもよかったし、そこから派生して色んな本を読み漁っていたので1年があっという間でしたね…

この1年は文化財を訪ねてあちこち行っていると、不思議と素敵なご縁に恵まれることも多く、普段公開していないものを見せていただいたり、情報をくださったり本当にありがたい限りです。

私はここ数年、雲谷派を訪ねて中国地方の史跡に足を運んでいるのですが、この度はそれを兼ねて島根を旅してきました。今回行ったところは下記の通り、併せて今年行った雲谷派、雪舟関連の場所も紹介します。

  • 石正美術館

  • 石見美術館(島根芸術文化センターグラントワ内)

  • 雪舟関連史蹟(萬福寺、雪舟のお墓他)


まずは、石正美術館から。

石正美術館

ここは島根県立浜田市の日本画家、石本正の記念館美術館です。石本正は今年生誕100年を迎えて、島根県立美術館で大規模な回顧展が行われました。全国を巡回して1月25日から石正美術館に帰ってきます。

島根県立美術館が最大の190点の出品だった

石本は榊原紫峰らが教鞭を執った時期の京都絵専出身で京都に活動拠点を置きながら、京都画壇とはやや距離を置いて活動しました。

石本正「思慕」石正美術館

自然や神秘性を女性像に投影したなどを多く残しています。石本は西洋画や古物などに対しても研究熱心で、しばしば伝統的な主題を描くこともありましたが、仏教やキリスト教などに影響を受けた独特の思想観のもと、表現を新たにしています。

エントランスに続く道。

石正美術館は、石本自ら建築士の金多潔に設計を頼んだもので、石本が愛したロマネスク様式の教会を思わせ、故郷の平和を願った祈りの部屋など石本の思想が強く反映されています。また、14000点の石本作品だけでなく、石本が感動した作品のコレクションも所蔵されており、企画展示がされています。

また、ガラス越しにアトリエも見ることができます。

石本のアトリエ
石本はキャンバスの側面にタイトルを入れる
西洋美術や仏教、地元の歴史など様々


お次はグラントワへ〜


グラントワ内の石見美術館

石見美術館には「美男におわす」を観に行きました。展示室はA〜D(Bは改修中)があり、「美男におわす」「«美人»をうつす」「雲谷派」の三本立て。

日本画なかで近年注目を集めている「美人画」は、言葉とイメージが広く認知されています。一方美男は理想化され、描かれてきたにも関わらず「美男画」という言葉に馴染みはありません。そういった意味では新しく、様々なジャンルや作家を取り扱い、自分なりの楽しみ方ができる展覧会です!いやあ、楽しかった。

吉田芙希子(«吉»は旧字体) 「風がきこえる」(2021)

美術とかよく分からなくたって純粋に好みの美男を探しても良し。扱っているジャンルがとても広いので、日本画から洋画、まんが、アニメ立体彫刻、写真、好きなジャンルを求めても良し。そして時代も江戸時代から現代のイラストレーターまでいるのでお気に入りの作家を探すのも良し。

入江明日香「L’Alpha et Omega」(2019)


そんなことを思っていれば、「美人画」風に描かれた「美男画」という美人画に何が求められたか色んなことを考えてしまう作品も。別の展示室の「«美人»をうつす」も合わせて楽しめます。

雲谷派は6点の屏風が拝めました。写真は撮れませんでしたが、等顔、等益、等的、等室が見れました。桃山時代〜江戸中期の作家です。

自分がよく見るメモ

私はここ数年、等益の息子である雲谷等與(うんこくとうよ)という画家を好きになって、雲谷派の原点である雪舟ゆかりの地や雲谷派が仕えていた武将に関わる史蹟を巡っています。

雲谷等與 「群鶴図屏風(左隻部分)」山口県立美術館

等與は雲谷等益の長男で、等益没後雲谷宗家を継ぎ「雪舟五世」を称しました。周防長門地方をはじめ、大徳寺碧玉庵襖絵を描くなど、京都方面でも活躍しています。1639(寛永16)年法橋、1667年(寛文7)法眼に叙せられました。

「群鶴図屏風」の右隻には独特の図案化された青海波が見られ、寛永期に京都で活躍したということもあり、俵屋宗達との関連も指摘されています。おそらく宗達よりも大分若くはありますが、少なくとも光琳よりも早く宗達に傾倒した人物としてはちょっと珍しい人ですね。

では、次は雪舟のお墓へ。

大喜庵(前身は東光寺)

雪舟終焉の地は以前紹介した山口の雲谷庵、井原の重玄寺、そしてこちら益田の大喜庵と諸説あります。

上段の石龕に印塔が納められている(らしい)

こちらは佐渡の浄念という人物によって、江戸時代中頃に作り直されたものだそうです。周囲には東光寺の僧侶の墓と思われる墓石が並んでいました。

佐州 願主 浄念 の文字


そして近くの雪舟の里記念館に行きましたが、お休みでした。

雪舟の真筆があるらしい。
土曜日に行ったんですけどね。


そしてそして、雪舟のつくった庭のある萬福寺へ。

萬福寺
重要文化財の本堂 鎌倉時代の様式が残る


二河白道図も重要文化財に指定

インターフォンを押すと、中からおばあさんが出てきて、一通りお寺の歴史をお話してくれます。萬福寺は時宗のお寺で歴史は平安時代から。当初は安福寺という名前で益田川河口付近にありましたが、津波で流されて再興の際に移転、現在の名称に改めました。益田家の菩提寺です。

「鎌倉時代から1度も火災に会っていないんですね…」
「ええ!それは凄い」
「でもまあ当時のそのままということはありませんヒッヒッヒッヒッヒ」

その方曰く、雪舟が故郷の総社にある宝福寺から、京都の相国寺に出た作庭について学んだそうで、庭を作ることは修行の一環だったとか。本阿弥光悦や狩野元信の作ったお庭なんかもありますね。

雪舟が伝えたいことは、見た人が感じることなので心のままにどうぞ、ということでした。

だんだんと見えてくる庭
雪舟がつくった庭園

雪舟のざっくりした生涯、宝福寺、雲谷庵については、前回の記事にまとめていますので良かったらどうぞ。


そして、萬福寺の所蔵作品に!なんと!雲谷等與と同時代の雲谷派作品が!!!!江戸時代前期のものらしく、雲谷等與、等的、等爾あたりの作品と見られます。

楼閣山水図

もともと庭園を臨む書院の襖絵で、他にも襖絵が存在していたそうです。そして雲谷派らしくもあり、少し繊細さの残る画風はもしかしたら等與かも…なんて少し興奮してしまいました。

他にも探幽の作品などもありました。雪舟に影響を受けている絵師の作品を雪舟ゆかりの地で見ることができるのはとてもうれしいですね。

 

お次は夏の山口へ〜



では、山口市にある雪舟庭ともうひとつのお墓である重玄寺跡も見ていきましょう。こちら今年の夏に訪れました。

山口市常栄寺

常栄寺は臨済宗東福寺派なのでとても雪舟にゆかりが深いことが分かりますね。こちらは前身が大内氏の別邸ということもあり、とても大きいお寺でした。県立美術館から車で20分くらいです。

よくいる雪舟
依頼によってつくられた雪舟庭
結構な規模
ぐるっと歩いて回る
途中に雪舟の筆塚も。

夏に行ったので緑が綺麗でした。虫が多かったので毘沙門堂に続く道は断念。雪舟ゆかりの寺や作庭の伝説が残るお寺はまだまだあるので行ってみたいですね。

所蔵作品も凄い。雪舟像や毛利元就の長男毛利隆元像、そして雲谷派も。雪舟の後継者を長谷川等伯と雲谷等顔で争ったという雲谷派。等與などは京都画壇にも進出しています。

作者未詳ですがこれは絶対雲谷派ですね(大言)。

こちらは…どうだろう…

白隠による書

お次は岡山に舞台を移して、井原市重玄寺跡の雪舟のお墓へ。こうして見ると、旧山陽道や中国地方に雪舟の足跡ってとっても多い。

車ないと行けないです

めちゃくちゃ山の中でした。

こちらは初夏に行ったので新緑が綺麗でしたね。

しばらく行くとそれらしい看板がありました。ここまでは車がないと来るのは難しいかと思われます。この看板からは道が狭そうなので歩きました。

重玄寺跡ということなので、お寺は既にありませんが雪舟の家、藤氏に関わる資料はこの重玄寺から見つかっています。

さきほど300mと書いてありましたが、どうやら直線距離のことみたいです。結構歩きます。

なんだ車で来れるんかい。


重玄寺跡

あ、あったー!(息切れ)


雪舟の墓

なんと、慎ましやか。

益田の大喜庵のお墓と同じように、周囲には重玄寺の僧侶のものと思われるお墓がありますが、大喜庵のものは近世に再建されたということもあり、やや立派なものでしたが、こちらは他の僧のもののなかに紛れるようにありました。雲谷庵が終焉の地という説もありますが、お墓のうちどれかは供養塔なのでは…?

良い眺め




今年の雲谷派を巡る旅はこれにて終了です!
本当は益田から雲谷派の庇護者、毛利輝元(元就の孫、隆元の息子)ゆかりの地やお墓を求めて萩まで行く予定でしたが、石見美術館が楽しすぎて時間配分を間違えました…

毛利と言えば、今年は元就展に行き、郡山城跡や毛利家墓所、清神社にも行きました。人にほとんど会わなかったので良い旅でした。

広島城(毛利輝元展)
郡山城跡(軽く登山)
毛利家墓所
清神社


また来年、雲谷派の展示や雪舟ゆかりのお寺を訪ねたいと思います。
次は三原の佛通寺かな。








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