人生の劇薬
劇薬とは、作用が激しく、
使い方を誤ると生命にかかわる非常に危険な薬品のことである。
人に優しい。動植物に優しい。
そして、地球に優しい。
いつの間にか、優しいことを善と
する価値観がはびこる世に
生きているのである。
しかし、優しさ重視の世の中で
あるにも関わらず、人生に
おいては、劇薬のような出来事が
生じるわけである。
冷徹であり、厳しく、理不尽。
容赦のない、有無を言わさぬ
ひどい仕打ちが、自己の身に
降りかかってくるのである。
誰も助けてはくれないし、
助けることもできない。
地を這うような、孤独な時間を
経て、おめでたい自分、甘ったれた
自分に初めて気づくのである。
劇薬で、自らに生えていた
カビが一掃されたからである。
そして、ここに至り、
ピカピカの本来の自分というモノが、出現するのである。
知らず知らずのうちに、カビが付着した自分を、本来の自分と思い込んでいたことに気づくのである。
優しい世の中とは、人間の精神を腐敗させる、甘ったるく、軽薄な、
あたかもカビのような価値観や言葉がまことしやかに叫ばれる世の中を意味するのである。
それゆえ、もし、優しさはびこる世の中を、自分らしく生きたいと願うなら、人生の劇薬が必要となるので
ある。
本来の自分を見失い、自分を
腐敗させないためのギフト。
それが、人生の劇薬の役割である。