Memphis
明けきらぬ黒を上昇し 暁を滑り出した機体
星々の粒は消え 黄と水色が手を取り合う 月が笑った
たなびく襞のひとつ一つに思い乗せ あのひとが眠る枕元へはこんで
偉大なるミシシッピ 横たわる雄大な流れに言葉は吹き飛ぶ
機内で話した若い学生さんは 南部へ学びに渡るところであった
この川を前にあの子は何を感じているだろう 魂が還る場所
雲の裾が染まりはじめた 細りゆく月 川辺で受けた強い風
天上のニライカナイの如く 燃え立つマグマを淡い黄が包んで
くるしくてあふれ来る涙は 白いひとも同じであった
Civil Rights Museumの展示は 人類に終わることのない問いかけを続ける
時代や地域では括れぬ 人として生きる以上 関係のないことなど無い
この世に生を享けて以来 何かしらの形で関わりきた善悪
拭えぬ傷をひとに渡してしまったであろうこと けして忘れてはならぬのだ
いきていくことの本質的なつらさ 輝ける歓び ちいさなものへの心
やさしくあろうとすることを諦めないのと 同じつよさで覚えた愛
“Every black men has his own roles in this exodus.”
“おれたちの子どもたちが 早くわるくないレストランや公園 動物園へ
気軽に行ける日が来ますように” 若い父親の 訪れ先への思い
“If jazz was democracy” “shaping the future”
“an expression of anger against shame and humiliation”
“It doesn’t matter. We know we are beautiful.”
(そんなの関係ないね おれたちは自分たちのうつくしさに気づいてる)
いちばん欲しい言葉をかけてくれるのは自分 届く励ましも心をあたため
二つ隣の席に目の覚めるような美形 中東か中南米のよう 容色際立ち
周囲が眠りに落ちるなか 刻々と変わりゆく空に見惚れていた
すこやかに差し出した日に我に返る 僅かに開けていた窓を閉めるところへ
眩しげなウインクとともに寄越された力強いサイン 彫刻に陰影
自然はうつろう 一瞬のうつくしさを焼き付け 町へ戻らう
(2022.10/テネシー州メンフィス)
National Civil Rights Museum AT THE LORRAINE MOTEL
(Memphis, TN) The Power of Place MORE THAN A MUSEUM
Mississippi River https://note.com/indigorhu/n/ndbb57a35c015 Memphis, TN 1 https://note.com/indigorhu/n/ne8c2bc2ffd51 Memphis, TN 2 https://note.com/indigorhu/n/n5fc97b48cb1e