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【詩】中也と僕

 彼が1937年に
 絶望の中で死に
 僕が1998年に
 混沌の中で生まれた。
 弟の死により
 目覚めた黒い彼の
 遺した筆跡に
 白い僕は目覚めた。

 死を憂い
 世を悲しむ
 羞じらいだらけの
 短い人生に
 ダダを込めた。
 壮大な詩世界に
 万年筆1本で戦う
 その姿勢が
 ただただ格好良く
 好きだった。

 追いつけない影を
 踏み越える事は
 到底できないけど
 いつか
 その小柄な手で
 僕の詩を詠まれる
 不完の理想だけを抱く。
 彼は罵倒するか
 それとも褒めるか。
 帽子に隠れた紅い瞳で
 どう評価するか。

 今日もまた
 彼を追い続ける。
 ボールペン1本と共に
 黒い足跡を探す。

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