タンパク質とは? -基礎の基礎!-
五大栄養素とはどれを指しているでしょうか?
様々な栄養素の中で、私たちが生きていく上で欠かせない成分は糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5つがあり、中でも糖質・脂質・タンパク質の3つを三大栄養素と称します。
三大栄養素はエネルギー源として生命維持や身体活動に用いられるため、摂取できない状況が続けば、呼吸など最も基本的な生命維持活動すら難しくなってしまいます。
また、それぞれ体内での役割が異なるため、どれか1つの栄養素を大量に取れば良いものでもなく、満遍なく摂取する必要があります。
厚生労働省は、大人が一日に必要なタンパク質量を男性65g、女性50gと定めています¹⁾。
定期的に運動を行っている方やスポーツ選手は、より多くのタンパク質が必要だと言われています。
現代の日本人は食事で十分なタンパク質量を摂取できていると報告されていますが²⁾、体型や生活様式によって、必要なタンパク質量は十人十色です。
タンパク質と聞くとまず思い浮かべるのは筋肉だと思いますが、それ以外にも血液・内臓・皮膚など体のあらゆる器官を構成する主要な成分でもあります。
今回のトピックでは、私たちの体づくりに大きく関与しているタンパク質について勉強していきましょう。
タンパク質とは
タンパク質¹⁾は、人間だけでなく生物において重要な構成成分の一つです。
私たちの体の約60%は水で構成されていますが、その次に多いのがタンパク質であり、15~20%を占めています。
その働きは多岐に渡り、酵素やホルモンとして代謝を調節、生命活動に必要な物質輸送に関与し、あるときは抗体として生体防御にあたります。
タンパク質を構成しているアミノ酸は、タンパク質合成の素材であるだけでなく、神経伝達物質やビタミン、その他の重要な生理活性物質の前駆体でもあります。
タンパク質は多くのアミノ酸が結合している集合体です。
この集合体はそのまま体内に吸収することはできないため、摂取したタンパク質をアミノ酸に分解してから吸収します。
タンパク質を構成しているアミノ酸は全部で20種類あり、体内で合成できる非必須アミノ酸と、体内では合成できず食べ物から摂取しなければいけない必須アミノ酸に分かれます。
アミノ酸の状態で体内に吸収された後、20種類のアミノ酸の組み合わせ方を変えて再合成することで、筋肉・血液・内臓・骨・皮膚・髪・爪などの体の部位の主要成分となる他、ホルモン・抗体・脂肪などの材料にもなります。
体内のタンパク質は常に合成と分解を同時に繰り返し、動的平衡状態を保ちながら、毎日少しずつ作り替えられています。
その速度は各器官によって異なり、小腸の上皮細胞だと約1日で作り替えられますが、骨や毛髪だと何年もかかります。
作り替えられた各器官のタンパク質はアミノ酸に分解され、その一部は尿として体外に排出されてしまいます。
つまり、人間はタンパク質を常に食事から補給し続けなければなりません。
InBody結果用紙で表示されるタンパク質量は、体細胞が主に水分とタンパク質で構成されていることから、水分量との相関を考慮して算出しています。
そのため、タンパク質を100g摂取するとInBody結果用紙のタンパク質量がそのまま100g増えることはなく、筋肉量の増加や体細胞の増加に伴ってタンパク質量も少しずつ増加していきます。
タンパク質の過剰摂取・不足による悪影響
タンパク質の過剰摂取は消化・吸収・分解の過程で各臓器に対して、過度な負担を掛けてしまいます。
タンパク質を吸収するためには、一旦アミノ酸に分解する必要があるため、多く摂取しすぎてしまうと消化や吸収に時間が掛かり、消化器に負担が掛かります。
お肉をたくさん食べた次の日にまだお肉がお腹に残っているように感じるのはそのためです。
アミノ酸を分解するとアンモニアが生成されますが、アンモニアは毒性が強く、体内の血中アンモニア濃度が高まると最悪の場合、死に直結します。
肝臓では有害なアンモニアを無害な尿素に分解しますが、多量のアンモニアを尿素に分解することが続くと、肝臓に過度な負担が掛かり、機能低下を招く恐れがあります。
更に、腎臓では血中の尿素濃度が高くなりすぎないように排泄が行われるため、尿素の量が増えると肝臓のみならず腎臓にも負担が掛かってしまいます。
また、タンパク質の過剰摂取は肥満に繋がります。
吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれますが、ここで過剰に摂取されたタンパク質はアミノ酸に分解された後、糖質に再合成されて、最終的に中性脂肪になるためです。
一方、タンパク質の不足も、体全般の機能を低下させ、体調不良を引き起こしてしまいます。
特に、食事量の減少や咀嚼力の低下により、十分なタンパク質を摂取することが難しくなる高齢者のタンパク質不足には注意が必要です。
タンパク質の摂取がうまくできない高齢者は筋肉量が減少し、身体機能も低下することで転倒や骨折のリスクが高まり、老化が進む原因となります。
タンパク質を多く含む食品
タンパク質は動物性タンパク質と植物性タンパク質に大別されます。
次の表はタンパク質を多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です³⁾。
タンパク質は卵や肉、魚のような動物由来の食品や、穀物・豆などの植物由来の食品から摂取することができます。
しかし、これらの食品だけでタンパク質をたくさん摂取しようとすると、前者からは脂肪分を、後者からは炭水化物を必要以上に摂取してしまいます。
脂肪や炭水化物の過剰摂取はカロリー過多状態につながり、余ったカロリーは体脂肪として蓄積される結果となります。
では、余分な体脂肪を増やすことなく、タンパク質をたくさん摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか。
次回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。
参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省