農業インターン体験談「非日常の中で考える今後の人生」 byかぼちゃの妖精(2024年9月)
自己紹介
こんにちは!
お茶の水女子大学3年、食物栄養学科という管理栄養士の養成課程に通っています、尾﨑陽花(はるか)です。
私がこの夏イナゾーファームに来た目的はただ一つ、「かぼちゃを収穫するため」です。バイト先はかぼちゃスイーツの専門店、カラー物を買う時は緑かオレンジのかぼちゃカラー。知り合いの農家さんに送ってもらったかぼちゃの味に惚れ込んだのをきっかけに、現在かぼちゃ歴は四年程。やっと念願叶って、本場北海道でかぼちゃの収穫をすることができたその喜びと感動の記録をここに残したいと思います。
かぼちゃのある暮らし
幸運に恵まれ、天気は連日晴れ。
夢にまで見た見渡す限りのかぼちゃ畑。「見渡す限り」というのが、表現を盛っているのではなく実際に11haの面積があるのだから、やっぱり北海道はすごい。足元に転がるかぼちゃたちのヘタをひたすら切って、持ち上げて運んで、マルチの上にかぼちゃの山を作っていく。
かぼちゃは一玉2キロ弱ぐらいあり、ヘタもなかなか固いのでそこまで楽な作業ではないが、かぼちゃに囲まれているだけで自分でも良くわからないエネルギーが湧いてくるのだった。
雑草の中に隠れるかぼちゃを見つけるのは宝探し、普段は目にすることのないトゲトゲのかぼちゃ(※りささん命名「ウニかぼちゃ」)や双子のかぼちゃ。
ずっしり大きいかぼちゃは可愛いし、味も美味しいらしく、せっかくなら特大サイズの子を見つけようと目を光らせていたら3,550gのきれいなかぼちゃを発見した。双子かぼちゃたちも一緒に、オブジェ兼ペット兼私の大事なエネルギー源として持って帰らせてもらうことに。
行く前は周りから、見すぎて嫌いになっちゃうんじゃない?と心配されていたが、かぼちゃへの愛はむしろ強まるばかりだった。
収穫から見えたこと
これだけかぼちゃが好きな私でも、8日連続で収穫するのはなかなかハードだった。初めて手の筋肉痛を経験し、後半から右手の握力は枯渇していたし、体力もかなり使う。腰が爆発しそうだと言っている子もいた。
北海道の農業だから、勝手に機械ばかり使うものだと思っていたけど、かぼちゃの場合はほとんど手作業。冬は10月の終わりから4月頃まで雪が積もるので、栽培ができるのは半年間程で、その期間だけかなりの人数の確保が必要になる。農家の減少や高齢化が進む中で、かぼちゃを生産する人が減るのも面積を減らすのも理解できる。そんな中でむしろ作付面積を大幅に増やしているイナゾーファームには、一かぼちゃ好きとして大いに感謝したい。
インターン生として働くこと
色々な人が集まるイナゾーファームの中でも、インターン生は少し特殊だと思う。実際に私が働く中で感じたことが大きく分けて2つあったので、それぞれ詳しく書きたいと思う。
①ギブもテイクも自由
かぼちゃの収穫の時にも同年代の人が何人かいたが、その立場は様々だった。お金をもらって働いているアルバイトの人、お金を払って愛媛から実習に来ている農大生、そしてお金をもらいも払いもしないのが私たちインターン生。この立場について「ギブアンドテイク」の考え方を中心に解釈してみる。
◇アルバイトの場合
お金を「テイク」しているので、そのもらっている分決められた時間はかぼちゃを収穫する。メインになるのはかぼちゃをたくさん収穫することであり、どれだけ全力を尽くすかの基準は、そのもらっている金額によると思う。
◇実習生の場合
お金を「ギブ」して、その分イナゾーファームでできる経験をするということになる。もちろん人それぞれだと思うが、お金を払っている分相手がその経験を用意してくれることを期待してしまう気がするのと、学校のカリキュラムの中で行くことが決まっていて、「行きたい」よりは「行かなきゃいけない」が強いと感じた。
◇インターン生の場合
その「ギブ」も「テイク」も決められておらず、お金のやり取りが発生しない。何を得て、何を返すのかは全て自由であることこそ、インターン生の面白いところだと思う。
「テイク」については、見るもの・聞くこと・やること全てから吸収できるし、「ギブ」については、かぼちゃを収穫することはもちろん、私は谷家にホームステイしていたので、谷夫婦に作業の中で感じたことや考えたことを話してみたり、夜ご飯を作ってみたり。もっと言うと今すぐできることだけではなく、将来また別の形で関わることだってできる。
江美さんからは「必ずしも自分たちに返さなくても、次の世代に何かしてあげればいいんじゃない」と。
将来学生にたくさんの機会を与えられるよう、今はその分存分に「学生ブランド」を使わせていただきながら、全力で挑戦していくこともまた、私ができる一つの「ギブ」なんだと思った。
②見ているのはほんの一部分
自分が来た時期がイナゾーファームの一年の中でどんな時期なのか?
今やっている収穫作業は、種まきから出荷、そして消費者の元に届くまでのどの部分なのか?
8日間しかいない中で、実際に体験できることは限られている。一つ一つの作業に全力で向き合うのはもちろんだが、それがどの部分を切り取ったものなのかを考えることで、インターン生活はかなり面白くなる。作業は結構ハードで、思わず無になって楽をしたくなるけど、毎日休憩の時用に用意してくれるおやつから糖分を摂取しながらちゃんと頭を働かせる。
私がイナゾーファームに来たのは9月初め〜中旬頃。かぼちゃとトマトの収穫が重なる繁忙期だった。もう少ししたら稲刈りも始まるらしい。イナゾーファームの場合はトマトの加工品の製造があるとは言っても、一面雪景色になる季節の谷さんたちの生活は、私が今見ているのとは随分様子が違うのだろうと思う。
雑草やかぼちゃの葉をかき分けながら収穫をしていると、まるで自然に出来たものを採っているような感覚になる。しかし、6月からの「種まき→定植→ミツバチによる受粉→収穫→貯蔵→出荷」という流れの中の作業であることを知っていれば、今収穫しているかぼちゃたちは、計画の元に育てられ、その実一つ一つが最終的にはお金を作り出す「商品」であることがわかる。
たとえ短期間しかいないインターン生であっても、そのことをちゃんと意識してかぼちゃたちを扱うことは大切だと思った。(一つ一つをペットのように可愛がるかどうかは個人の自由として♡)
非日常の中で今後の人生について考える
触れるもの全てが新しく、大好きなかぼちゃに囲まれて、農家として・人として魅力あふれる谷夫婦と元気な4人の子どもたちと過ごす"非日常"な生活は、控えめに言って最高だった。
大学三年生の夏休み、ちょうど周りがみんな就活をしているタイミングだったが、だからこそこの8日間という時間の価値をより強く感じ、何かを得なければといういい意味での焦りがあったおかげで、より多くのことが吸収できた気がする。
就活で行くいわゆる企業のインターンとは一味違うが、イナゾーファームでのインターンは、仕事探しや農業について学ぶということを越えて、”自分の今後の人生”について考えることができると私は思う。
谷夫婦には、会社の規模がある程度大きくなっても子育てが忙しくてもなお挑戦し続けるマインド、そのために「好き」や「楽しい」がどれだけ重要かということを学び、そして結婚の概念をぶち壊された(ワークキャンプというイベントで出会い、会って一週間で交際スタート、その後6年間の遠距離恋愛を経て結婚して士別で農業だなんて…)
本気でやりたいと思えば何だってできる、という言葉は寿彰さんが言うと説得力があった。
また帰っておいで~と送り出してもらった最終日、都会出身の私に第二の故郷ができた。短くはないはずの帰路がなんだかあっという間で、家の最寄り駅でふと見上げた空が狭くて悲しくなった。
短い期間ではあったが"非日常"な生活を送ったからこそ、日常の中でまた新たな気付きがあるはず。また、普段はつい目の前のことで精一杯になるが、たまにもっと先のこと、大きいことに向き合うことも必要だ。
本当にお世話になりました!!
また来ます!!!!
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