パリ 超VIPのファーストクラスのおもてなし。社長の海外VIPのおもてなしもすごい
1)成田空港で社長を待ち伏せる。秘書はVIP対応。
成田第一ターミナルのエスカレーターを上がり、搭乗手続き場でキョロキョロしていると「おはようございます!」とJCBトラベルの屋敷氏が、さっそく声を掛けてきた。「ではでは、こちらです」と、彼の誘導でファーストクラスの待合室に向うことになった。
ドラッグストアの横に、一般人は知りようもない秘密の扉がある。そこを開くとファーストクラスラウンジがでてくる。ドラクエのようだ。
複雑な作りになっており、長い通路がある。その通路の自動ドアが開くとグランドホステスが「お待ちしておりました」と、またエレベーターが開くと別のグランドホステスが「お待ちしておりました」と迎えてくれる。そしてエレベータを降りると「こちらです」とまた別のグランドホステスがいる。そして、そのたび誘導されながら、心地よく歩いて行く。
気分はVIPである。
ファーストクラスラウンジへの通路は、金色の壁と木目調の床が特徴的だ。VIPには、それぞれに一人暮らしのワンルームほどの広さの個室があてがわれる。一般人が知る由もない豪華な作りになっている。ちなみに社長の待合室は、「松の間」を用意された。
ファーストクラスの料金は、欧州向けだと約250万円だ。エコノミークラスで15万円程度、ビジネスで50万円程である。一般人の支払える金額ではないので、ほとんどは法人用と思っていいだろう。
「松の間」に荷物を置き、社長を迎えるためにファーストクラス用の車寄せに向う。そこには70歳くらいのおじいちゃんがおり、JCBとレベルのスタッフも既にスタンバイしている。
ぼくと屋敷さんを含み、総勢4名で社長を待ち構える。寒いなかでうろうろしつつ、親分を待ち構える子分のような気分だ。
2)社長のセンチュリーが到着、フライト時間まで待機
15分ほどして 社長が登場した。「おい。おはよう」とセンチュリーから降りてくる。朝早いので、顔がむくんでいる。昨日も飲み過ぎたのだろう。パリまでは時間が掛かるので、スーツではなくカジュアルな洋服を着ている。
大きな体を包んでいる黒のダウンジャケットは、背中の真ん中にバックスバーニーが描かれている。以前もこれを着ていたので、お気に入りなのかもしれない。キムタクがきたら逆にオシャレだろうが、おじさんが着ると、公園を散歩する姿だ。
「松の間」に入り、ソファーに座りこむ。社長と二人きりになる機会は、良くあるが未だに慣れない。社長は全く気にしていないだろうが、部屋の空気が張りつめたように感じる。 人間は、ぞれぞれの目に見えないオーラや質量みたいなものがある。その人が発している何かがあり、その周辺の空気が目に見えないが重くなるのだと思う。
その部屋のなかで、フライト時間がくるまで2人で新聞を読む。その日の日経新聞には競合他社の記事がデカデカとのっている。500億円投資!とでている。
「何か言うだろう」と待ち構えていたら、悔しそうに毒付き始めた。「また、デカデカと載っていやがる。おい」と。そして「君も読みなさい」とバサッと新聞を渡される。すでに読んだ記事ではあったが「ありがとうございます。」と受取り、再度読むことにした。
良く書けた記事だ。確かに社長という立場で、競合他社がベタ褒めされた記事が頻繁に載っていたら悔しいはずだ。「どうだ。おい」と聞かれたが、特に深い感想もなかったので月並みなコメントで返した。
11時50分になり、ベテランのグランドホステスが呼びに来た。重たくなった腰をあげて、搭乗の準備をする。
ファーストクラスのVIPは、パスポートと荷物をグランドホステスに渡せば、すべての手続きが完了する仕組みになっている。そのため「松の間」から、そのまま飛行機に乗れる。
搭乗口まで辿り着き、ファーストクラスの入り口に社長が入り、ぼくはプレミアムエコノミーに向かう。VIPの恩恵にあずかりアップグレードしてもらったプレミアムエコノミーは広くて快適だ。
今回の出張は、パリで主要客先訪問、ドバイで講演会参加、コペンハーゲンで投資家訪問というスケジュールである。社長と一緒だと、失敗は出来ないため、緊張感のある海外出張である。
3)パリに到着
パリに到着し、ロビーに出ると、体つきの良いひげ面の人が「社長おまちしておりました」と登場した。山本トラベルの山本さんだ。ぼくは初対面だが、社長がヨーロッパに出張する場合、彼がドライバーを担当してくれる。
空港の外の車寄せに向う、外気はそれほど寒くない。パリは寒いと聞いていたが、5度程度で、これならホッカイロもいらないし、タイツをはくまでもない。
車には、本部長の吉田さんとマーケティング担当の服部さんがいる。社長が登場し、「お待ち申し上げておりました。フライトは如何でしたか。」なんて気を遣いながら挨拶をしている。海外出張は、若干旅行気分が伴うが、彼らの旅行気分は社長が加わったことで吹き飛んだのだろう。会話がビジネスモードだ。
空港からホテルまでは40分くらい。テレビでよく見る景色の前を横切り、欧州独特の昔ながらの道を走っていくと立派なホテルが現われる。「到着いたしました」とドライバー山本さんが身軽に荷物をはこび、ホテルのロビーに駆け込んだ。どうやらチェックインをしてくれているようだ。
チェックインを終え、一旦それぞれの部屋で夕食の時間まで待機することになった。社長はスイートルームに宿泊する。この元貴族の洋館のような5つ星ホテルのスイートルームなど見る機会はないので、「ちょっと社長の部屋見せてもらっていいですか?」と図々しく、部屋のなかを見せてもらった。
断る理由も特にないため、苦々しい顔をしながらも中に入れてくれた。重厚感のあるドアを開けると、歴史のある建物で荘厳な作りだ。さらにはフットサルが出来るほどの大きさのバルコニーがある。夏はこのバルコニーでパーティーでもするのだろう。なんとも言えない贅沢な部屋だ。中央銀行が近くだったので、金融界のVIPはここに宿泊するのだろう。
◆取引先の元OBとディナー
夕食まで時間があるため、社長がドバイ講演で使用する原稿の最終チェックをする。英語で原稿を作るのは時間がかかる。全然進まない。あれこれ考えているうちに、夕食の時間になってしまったため途中で断念して、会食へ向かうことになった。
会食場所は「鮨吉」という寿司屋だ。パリで日本食の接待をする時には定番のお店のようだ。確かに、たいへん繁盛しており、すべての椅子が埋まっている。お客は大柄で食べる量が多いためか、バンバン注文されている。
会食の相手はマフタン夫妻。元日本の支社長で、日本に駐在をしていた時に、社長と仲が良かったらしい。すでにお爺ちゃんで、とっくに引退しているが、社長は毎年、晩御飯に誘っているようだ。
社長いわく、「このような商売に直接関係が無い会食こそが、商売に効いて来るのだ。マフタンさんと会食しているのは、パリの本社の重役は知っている。この噂のように耳に入るのが大切だ。俺たちを昔ながらのパリ人の様に人情に厚いと思ってくれれば、こちらのものだ」。
確かに、そんな小さなことで商売が動くケースはたくさんある。社長のこういった考え方は、徹底している。この徹底ぶりは社内でも有名で、「重要なお客さんと関係性を深くしたいときに、七田社長を連れて行く。間違い無く深い関係が作れる」と多くの人が言う。
どのように関係性を作るか、彼の方法は至ってシンプル。「とにかく飲む。そしてとことん楽しませる」だ。このレベルが尋常ではなく、一度に席を共にしたら忘れられないと多くの人が言う。ぼくも良く連れてってもらうが、「ここまでやるのか」と感心する事が良くある。
社長から良く「まずは、死ぬほどギブ、ギブ、ギブをする。その際は、こちらの考え・要求は全く話さず、ギブギブギブ。そしてしばらく経って、関係性が出来てから、少しだけお願いをする。この順番を間違えるな。おい。」と言われる。
良く耳にする考え方だが、この徹底ぶりは感心するし、また随所に彼が蓄積してきた特別なノウハウが見え隠れする。常人に真似するのは困難であるが、参考になる部分は多くある。
巨大な御造り、大量の鮨がテーブルにおかれ、日本酒もグビグビやっている。終始ホクホクで会食が進んでいく。時間も深まってきたところで社長が立ち上がり、「Thank you very much tonight」と夫妻に言い、「おい」とぼくの方に合図を送る。
その合図を受け、事前に用意していた巨大な花束を社長に渡すと、「For you」と奥さんに手にあずける。さらに日本食が大好きな二人に鰹節、そして家族用に寿司のお持たせを夫に渡す。至れり尽くせりだ。そんなんで、2人とも満面の笑みで帰って行った。
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