
趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.242 読書 澤村伊智「予言の島」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 澤村伊智さんの「予言の島」についてです。

今一番ハマっている作家、澤村伊智(さわむら・いち)さん。
新世代のホラー作家で、「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」などの”比嘉姉妹シリーズ”5巻を連続で読んでしまうほど大好きです。
澤村さんはちゃんと今までの日本のホラー小説の歴史を継承しながらエンターテインメントに昇華している。
今回も島もの。と言えば横溝 正史の「悪霊島」や「獄門島」などを思い浮かべる。
ミステリーやホラーの定番の舞台です。
それをどう料理するか、さすが澤村さん定番のような進行をしながら、段々と新しい展開で、最後のどんでん返しもそれも定番ながらやられました。
ほんの少し違和感だけを感じながら読み続け、最後まで全くわからずやられたという感じです。
今回は霊能者の子供や、親離れ子離れできない親子、言葉の呪縛、など今時の話題も扱っていて興味深いですね。
定番と新しさ、それが澤村ミステリーの魅力。
・
物語は、瀬戸内海に浮かぶ島、かつて一世を風靡した霊能力者が最後の予言を残した場所。
20年後6人の人間がその島で亡くなると。
主人公の男性はその年のその予言の日に島へ遊びに行こうと友人2人を誘います。
一人の友人が会社でパワハラに遭い、気分転換のために。
島への船に乗り込むときに、見知らぬ女性が大変なことが起きるから島へは行くなと言います。
忠告を無視して乗り込むと、すんでのところである女性が走ってきて乗り込みます。
忠告してきた女性は、予言をした霊能力者の心棒者で、予言は絶対当たるからそれを確かめに来たと言う。
島へ着くと島民のお婆さんが主人公たちを見て驚き、20年前に心霊番組を作りにきたスタッフと間違える。
別の島民が、番組に出た霊能力者はここの怨霊に殺されたと言う。
決して島の山に入るなと警告します。
予約していた島の旅館はじきに怨霊が降りてくるので泊められないと断られる。
仕方がなく、違う旅館に泊まることに。
フェリーで一緒になった忠告した霊能力者の心棒者と乗り遅れそうになった女性、他にも母親と息子も一緒の旅館でした。
旅館の亭主は、皆にこの島に伝わる怨霊の話をします。
昔、流刑地だったこの島である罪人が奇病に侵され、島民に山へ追い立てられ
苦しみながら山から降りられなくなり、彼の怨霊が、時たま山から降りてくると。
翌朝、主人公の友人の一人がいなくなっています。
雨の中必死に友人を探していると、彼は海に浮いて死んでいました。
周囲の家に助けを求めますが、誰も扉を開けてくれません。
島の駐在が来て、遺体を引き上げ、外傷はなく溺死だと告げます。
島の風習で遺体に炭でできた人形のようなものを立てて触らないようにと。
心棒者と乗り遅れた女性がやってきて、心棒者は霊能力者の予言通りだといい、
遅れた女性は、自分は看護婦だから遺体を調べると言います。
溺死ではなく外傷がある、そして20年前は炭を立てる風習はなかったと言います。
友人の仇を取るためにもう一人の友人が検死した警察官のところへ行きます。
看護婦は数珠を出して友人に手を合わせると、心棒者が驚きます。
それは霊能力者が持っていた数珠。そのフェリーに乗り遅れてきた看護婦は霊能力者の孫娘だった。
20年前、霊能力者と一緒に撮影でこの島に来ていたと。
友人が警察官の家に行くと、その炭で殴られ死んでいました。
主人公は友人を探すために、霊能力者の孫娘と一緒に山へ登ります。
島の住人と友人を探し出し、ぐったりとして気絶している友人を発見します。
友人を民宿まで担ぎ込むと、島の住民たちが押し寄せ、警察を殺したのは友人ではないかと。
その時島中のサイレンがなり、島民たちは去っていきました。
山を見に行った離能力者の孫娘は、怨霊がおりてくるので、全員で今すぐ避難すると叫びます。
気絶している友人を背負い、他の宿泊者と共に逃げ出します。
途中で後ろを歩いていた島の老人が苦しみ出し死んでしまいます。
助けたくても自分達も危ないと、ひたすら逃げます。
島の避難所にかろうじて逃げ込み、そこで霊能力者の孫娘は、怨霊の正体を皆に話します。
それは・・・・。
・
まだここまでで半分で、正体がわかるとええ!?そうなんですかと驚きますが、その後も二転三転して、最後にどんでん返しです。
ミステリーで詳細を語るとネタバレになるので難しいですが、霊能力者の娘という”親子”がテーマですね。
霊能力者の言葉によるがんじがらめ、霊がいなくても言葉による呪縛。
昨今宗教団体が世間を騒がしていますが、宗教2世の問題。
そして親子の呪縛。毒親問題。
そして結局、幽霊や怨霊は実際に存在しなくても、言葉による呪いや呪縛はどんな人間にもあるかもしれません。ここら辺は京極さんに似ているかも。
そう考えると、この小説のテーマはなかなか今時な問題にも触れていて、単なるホラー小説で終わらないかもしれません。
ただ最後のトリックはミステリーの定番ですが・・・・、やられました!
今日はここまで。
P.183 「原因は常に同じ、真実はいつも一つ そういう原始的な考え方が、あの人や霊子さんみたいな人たちを蔓延らせる土壌なの。心霊スポットがいい例よ。あれは霊がいるんじゃない、霊が怪現象を起こしているんじゃない。複数の妙な体験談をたった一つの原因、たった一つの理由で説明しようとしたら、もう超自然的な意志や存在を持ち出すしかないの。大昔の人が天変地異も政治の混乱も、全部神様や天命のせいにしたみたいに。だから祈りましょうなんて対策も原始的で、」
/霊能力者の孫娘、沙千花の話「予言の島」より