趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.217 映画 山田洋次 「男はつらいよ 寅次郎子守唄」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は 映画 山田洋次の 「男はつらいよ 寅次郎子守唄」(1974/日)についてです。
男はつらいよシリーズ14作目
もう今40作ぐらい観ているが、全部で50本。
これを毎年二本づつ作っていたなんて今更驚き。
寅さん役の渥美清もさくら役の倍賞千恵子も博役の前田吟も監督の山田洋次も。
もう25年もずっと作っていて、その合間に他の作品も作ったり出たりするなんて。
仕事があるのはありがたいが、やはり長く続ける苦労もあったのでしょうね。
今回はおいちゃん役の人が3代目下條正巳さんになっている。
1作〜8作が森川信、9作〜13作が松村達雄。そして14作〜48作が下條さん。
コメディアン森川信さんは割と短気でひょうきんなおいちゃん、松村さんは飄々としている。
下條さんは割と真面目な感じだけど、一番長く続いたんですよね。
寅さんと全くキャラクターが違うから、またそれが良いのでしょうね〜。
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さて今回は赤ちゃんを預かりとらやはてんやわんやになる、博がケガをしてその病院にいる看護婦さんに恋をするが、彼女に恋している若者がいることに気づきその若者を応援する。
赤ちゃんを連れてくるのはこれは面白い設定だが最初だけで、やはり恋のコーチパターンがやはりメイン。
男はつらいよの半分ぐらいがこの黄金パターンのような気がする。
でも毎回物語が違い、旅する場所も違い、マドンナも変わる。
なので、皆黄金パターンにハマる楽しさを求めて、年に二回このシリーズを観に入ったのではないでしょうか。
なぜ学生の頃まだ現役で上映していたのに観に行かなかったのか後悔しています。
そのパターンにはまる楽しさを理解していない青い人間だったのでしょう。
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物語は、寅さんは商売で来た九州の漁港で赤ん坊を残して女房に逃げられた男と出会う。
不憫に思い宿で一席設けて慰めるが、次の日朝起きると「子供を頼みます」と男は赤ん坊を置いていなくなってしまった。
寅さんはほっておくわけにもいかず赤ん坊を連れて柴又まで必死で戻ってくる。
とらやでは赤ん坊がきて大騒ぎ、寅さんの子供じゃないと安心したのはつかぬま
この子をどうやって育てるのか心配し始めたとき、赤ん坊が高熱を出す。
博が怪我をして世話になっている病院の看護婦さん(十朱幸代)が美人なので心配していると、案の定寅さんに知られてしまう。
やがてとらやに赤ん坊の父親と踊り子がやってきて、その踊り子の気持ちを知って赤ん坊を託すことに。
寂しくなった寅さんだが、慰めに来た看護婦さんのおかげでまた元気になり、さくらも誘い看護婦さんの通うコーラスグループに遊びに行く。
そこで不真面目な態度をとって寅さんはさくらに怒られ、コーラスグループのリーダー(上條恒彦)に謝りに行く。
お酒を酌み交わし、いろいろ聞くと彼は髭面で口下手で汚いアパートに住む貧乏人。見た目は悪いが気はいい男だった。
意気投合した寅さんは彼に恋愛指南をする。
さくらに会いにとらやに来ていた看護婦さん、ちょうど酔っ払って寅さんとリーダが帰ってくる。
そのまま勢いで彼は告白する。
それも直球で「急性盲腸炎で入院したその日から、僕はあなたが好きです。」「あれからずっと、好きです!」
そのままとらやを出て行ってしまう。
次の日、看護婦さんはリーダに会いに行く。
翌日婚約を報告にきた彼を送り出すと、寅さんはまた旅へ。
最後に最初に来た港に行くと、あの時の赤ん坊が元気に暮らしているのを見て幸せな気分になるのでした。
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もう定番中の定番。何も目新しいところはない。
赤ちゃんを背負った寅さんのビジュアルが面白いだけかも。
ただ、恋しても人のために応援してしまい、また一時預かった赤ちゃんも幸せに暮らしていて、良いことはしたのにそれでも寂しさや哀愁を感じる。
まさに「男はつらいよ」な感じ。
けど例えばコーラスグループに入って青春や恋愛に情熱を燃やすのは若者の特権です。
そう怪我をした博のような労働者や、今回の看護婦のマドンナの様に、例え仕事がキツくても、家族や友達、恋人がいれば幸せだと思う。
でもフーテンの寅さんは好きなとき仕事して好きなところへ旅をして気楽だけど、孤独だ。
若いカップルや赤ん坊を見て、笑顔だが少し寂しさをたたえた瞳はなんとも味わい深い。
やはり若い頃はこの味わいは理解できなかったでしょうね。
今日はここまで。
「ここで踊ってんのかい?」
「こんな景色のいいとこまで来て、暗かところで女の裸観てどこがよかすかねェ」
「フフ…別に裸を観るわけじゃねえよ。姐さんの芸を観に来たと思えば腹もたたねえだろう」
「フフ…兄さん、よかこと言ってくれるね」
「そうか」
/「男はつらいよ 寅次郎子守唄」より