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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.161 読書 宮部 みゆき「荒神」


こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 宮部 みゆきさんの「荒神」についてです。

宮部みゆきさんの時代劇怪獣小説。

宮部さんは時代劇の名手でもありホラーも上手い。日本を代表する抜群のストーリテイリングな作家。

そんな宮部さんが、”怪獣”を描く。

期待してページを捲ると、やられました。

面白すぎて止まりません。

そして”怪獣”がもう人間が太刀打ちできるレベルではなく、神の領域。

あまりにも禍々しいので、神ではなく悪魔のよう。

そんな状況でも人間はいつの時代でも歪み合い、対立する2つの藩の人間模様を綿密に描かれる。

上下巻ではなく1巻の674ページの密度の濃い中編だが、一気読みしてしまいました。

宮部みゆきさんの力量に本当に感心しました。



物語は、日本の江戸時代初期、関ヶ原から100年ぐらい、東北地方の山中に2つの藩があった。

その一つの藩は冷酷な改革により、養蚕で財政を潤わせていたが、武装集団を使って領民を弾圧、そして隣の藩の領民を拉致して労役を課していました。

ある日その隣の藩の村が突如壊滅し、生き残りの子供を保護する。

その子供の体には歯形があり、変んな匂いの液体がついていました。

主人公の武装集団の頭の妹は、少年を介護し、用心棒と絵師と共に隣の藩の村まで調査に行く。

武装集団がいる砦に行くと、突如強大な怪物が現れ、屈強な武士たちが次々と蟻のように殺されてしまう。

別に調査していた隣の藩の武士とも合流し、歪みあっていた両藩が力を合わせて
怪物へ立ち向かっていく。

その怪物の正体は?

武装集団の頭とその妹に出生の秘密は怪物に関係するのか?



こういう怪獣ものは、怪獣自体が圧倒的なほど面白い。

まさに”ゴジラ”の様だ。

人間が蟻のよう。

もちろん江戸時代なので、武器も弓矢や刀ぐらいしかない。

絶望を描けるのは作家として最高なのではと思います。

怪獣、パニック映画、ホラー、サスペンス。恐怖を味わう話の中で一番読みたいのは

絶望

そしてそれからいかに立ち向かうかがエモーショナルな感動になると思います。

そして次に知りたいのは、人間の浅はかさ、愚かさ、憎しみ、私利私欲。

怪獣より怖いのは”人間”って王道パターンです。

今作は見事に王道の怪獣小説です。

怪獣も怖いですが、人間も負けじと複雑にいろいろあります。

そして宮部さんがよく時代劇怪談もので描く、呪いがキーになります。

もう宮部さん凄すぎます。

こんなに面白くて内容も深くてあらゆるジャンルを書ける才能。

今一番好きな作家さんです。

今日はここまで。



「こうしたことをみんな、誰も悪いと思ってしているのではない。よかれと思ってやっているのだ」
「だから、追求すればするほどに、悪事は消えてしまう。残るは悲しみと不信ばかりだ」
きっと誰かがこの事を覚えていなくてはならないからだ。
人の性を。人の業を。罪は、忘れてられても消えぬということを。
「よかれと思い、より良き明日を望んで日々を生きる我々が、その望み故に二度と同じ間違いをせぬように、心弱い私こそが、しっかりと覚えておかねばならない」
P.657「荒神 」より





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