趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.116 読書 砂川文次「小隊」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 砂川文次さんの「小隊」についてです。
航空自衛隊が活躍する「スクランブルシリーズ」をここ最近読んでいるところ、知り合いから勧められた小説。
スクランブルシリーズも元パイロット、この「小隊」の砂川さんも元自衛隊の方が作者。
やはり今の時代は現場を知った人が描く”リアル”が求められているような気がします。
3編からなる戦争小説の中編。
突如ロシアが北海道に攻めてきて、主人公のいる自衛隊は小隊を率いて、近づいてくるロシア軍と対峙する。
徹底的な現場目線のリアルな”戦場”の疑似体験。
ヒーローが活躍する戦争モノではない、普通のいち自衛官が、圧倒的な戦力のロシア軍の攻撃の中、仲間たちが瞬時に肉片になり、阿鼻叫喚の本物の生々しい地獄を体験する。
これは単なる元自衛官が書いたリアルな小説というだけでは到底治らない、今ウクライナでの戦争のことをどうしても考えてしまいます。
小説では戦場でのいち兵士の視点だけしか書いておりません。
そこには思想も国同士の政治もありません。
ただどこからくるのかわからない砲弾の爆発と銃弾があるだけ。
まさに今読むべき、読んでおいた方が良い、小説だと思います。
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物語は、ロシア軍が北海道に上陸した状況から始まる。
主人公は自衛隊の3尉。
一軒一軒残っている住人に避難命令を出している。
あと数日したらロシア軍がこの土地にくる。
現場にはあまり詳しい情報が入ってこない。
淡々と塹壕を掘り、待ち構える。教科書通りに作戦を練る。
極度の緊張感。
もちろん自衛隊なので実際に戦争は経験したことがない。
そして本物の”戦争”がやってくる。
圧倒的な火力の差で爆撃と銃弾が飛び交う。
次々と自衛官の仲間たちは肉の塊になってしまう。
一打ち返したら百打ち返されるように。
まさに本物の地獄が始まった・・・・・。
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もう戦争が始まってからの描写が凄すぎる。
そこには散々見てきな読んできたヒーロー的な戦争アクションの様なものはない。
ただ死が横にある、壮絶な地獄。
生きるか死ぬかは、強い弱いではなく、運だけ。
これは中編だからこそで良かった。そして現場のみだからこそ良かった。
変に戦争の結果や、政治の方を描いたり、友情や、家族への愛情や、戦争の悲しみ、怒りを描いたら散々描いてきた今までの戦争小説と同じになってしまいます。
徹底的にリアルな部分をポンと切り取って見せられた感じ。
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他の2編も、海外で警備につく日本人の傭兵、自衛隊幹部の長距離走破訓練の話。
どちらもリアリティがあって面白かったです。
砂川さんの他の小説も読んでみたくなりました。
ドキュメンタリーやジャーナリズムとはまた違うんです。
”リアルな物語”を読みたいです。
それも徹底的な、その場にいるような体験。
この小説は妙に生々しい匂いを感じます。
今日はここまで
待つのにひどく消耗した。昨夜とは違い、時間の流れがひどく緩慢だ。
温度が上がり、不快感を増す。背中に汗が広がる。鉄帽の内側が蒸れ、防弾チョッキや小銃の負い紐で圧迫された部分が痒みを引き起こす。安達たちは苛立ちまぎれに首筋を掻きむしり、スリーピングの上に腰を下ろした。皆押し黙っている。
雨に濡れた犬の匂いがした。
/P.65「小隊」より