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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.224 読書 澤村伊智「ししりばの家 」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 澤村伊智さんの「ししりばの家 」についてです。


霊能者比嘉姉妹シリーズ第四弾。

ぼぎわんで怪獣系、ずうのめで人形&リング系、などらぎは短編集、

そして今回は家系のホラー。

幽霊屋敷など家がテーマのホラー小説は多い。

澤村伊智さんは本当に今が旬の作家だ。

面白くて上手くて怖い。

そして今の時代の新世代ホラー作家なので情報は集めやすく昔のホラーをちゃんと勉強してきて、それに新しい要素を付け加えて、新鮮な作品を作り出している。

そうちゃんと定型に沿っているので、安心して怖がれる。

そしてその定型をいかにホラー小説のテクニックを屈指して斬新な描くかが澤村伊智さんの腕だと思います。

今回は比嘉姉妹の姉の琴子。最強の霊能者の前日弾が語られます。

クールで最強の琴子がまだ能力も低い小学生の頃の話。

その時の体験が、その後の彼女の進む道に影響を与えたかもしれません。

そして二人、その家に住んでいる幼馴染を訪れる主婦と、その家で小学生の頃恐怖体験をし引きこもりになった少年の視点で話は進んでいく、が微妙に時間軸がずれていくのがまた上手い。

もう澤村伊智さん凄過ぎます!

4冊読んでどれも面白いなんて、もう大ファンです。



物語は、夫の転勤で東京に引っ越ししてきた主婦。

彼女はある日偶然幼馴染の男性と再会し、彼の家に招待されます。

その家は男性と奥さんと祖母の三人暮らしでとても幸せそうな家庭。

しかし家の中に砂が積もっていて、それについて三人は気にしない様子で何か妙な感じします。

夫に相談すると行かない方が良いと言われるが、何かの拍子に結婚指輪が抜けてその家に落としたかもしれないので、もう一度伺うことに。

その家に行くと、砂だけでなく、家の住人が何かおかしい・・・・。

そこで主婦は恐るべき事実を知ることに・・・。

もう一つの話。主婦の話と同時進行で語られます。

20年前小学生の四人組が、空き家で幽霊屋敷の噂になっている家に忍び込み、砂に脳が侵食される恐ろしい体験をします。

二人の友人はその後死に、比嘉姉妹の姉の琴子もその四人のうちの一人で行方知れず、そして頭の中に砂が入っている幻覚に悩まされ家に引きこもりになっている青年。

青年は引きこもり、毎日家の窓からその家を監視続ける。

ある日、その比嘉琴子が訪ねてきます。

彼女はあの時幽霊屋敷に入ってから人が変わり、今は霊能力者として活躍をしている。

琴子はその青年を救うために戻ってきたと言うが、青年は信じられない。

飼い犬の散歩の時、その幽霊屋敷に段々と近づいてみたり、琴子からいろいろな話を聞くにつれて、頭の中の砂を取り除くには、その家に行きバケモノを退治しなくてはという気持ちに。

二人はその因縁のあるその家に乗り込むと・・・。

2つの話はそこで合わさると・・・。



恐怖って怪物がど〜んっと現れるより、日常がほんの少しづつずれていく方が怖いかもしれません。

今作はそういう、ずれていく恐怖、気がつかない恐怖、乗っ取られる恐怖を描いている。

二人の話が交互に語られるが、その時間軸も微妙にずれていて、またそれにより

恐怖が倍増する仕掛けに唸ってしまった。

それだけでなく、本を形作るタイポグラフィーがページの上半分だけだったり、

文章までもザザ〜っと砂に侵食されたり。

これでもかとテクニックが満載。

もう上手過ぎです澤村伊智さん。

P.260に「元々こういう力があったせいもあるかも、血筋よね。
きょうだいも大体持っていた。
ミハルは特に強かった」

ミハルって比嘉姉妹の次女で「ずうのめ人形」で過去を語る物語の中で亡くなった彼女のことでしょうか。

少しづつ姉妹の謎が明かされてきて楽しいです。

そう、こういうシリーズものは、キャラがある主人公ができればもう最強ですね。

ホームズやポアロや「ボーンコレクター」のリンカーンライムや「ゴーストハント」のナルや麻衣や京極堂のように。

女性霊能力者の比嘉姉妹も完全にキャラができています。

お姉ちゃんはクールで日本最強の霊能力者、妹はまだ能力は弱い霊能力者、
二人は仲が悪くあまり会っていない。他の両親や妹や弟は全員死んでいる。

どんどん過去が明かされていくのが今後の楽しみです。

そしていつか謎が明かされ二人が協力して化け物と戦う日が来ますように。

今日はここまで。




怪異とのバトル。これが拙作にはなく澤村作品にある重要な差異だろう。拙作の登場人物は恐怖の対象を前にしても、大抵は何もできない。しかし澤村作品には比ひ嘉が姉妹という言わばオカルト探偵が存在している。この差は大きい。より娯楽作品を書くうえで有利なのは、どう考えても澤村作品なのだ。
/三津田信三(ホラー小説家)







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