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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.320 読書 米澤穂信「本と鍵の季節 」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 米澤穂信さんの「本と鍵の季節 」についてです。
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大好きな米澤穂信さん。
自分の読んだ中で8番目に多くの作品を読んだ作家さんだ。
今まで24冊。
古典部シリーズ、小市民シリーズ、そのほかの単独の作品、さよなら妖精、満願、折れた竜骨、インシテミルなど。
米澤のシリーズものは特に青春ミステリー要素が高い。
古典部シリーズは古典部という高校の伝統ある文化部だが何をしているのかわからなく文集を出したりしている。省エネ主義の主人公が、日常の謎を解いていく話。
小市民シリーズは男女の高校生、小市民を目指すために協力関係を結ぶ2人が日常の謎を解いていく。男の子は推理が好き、女の子は復讐が好き。
最初ライトノベルのようだなと思いながら、読んでいくと世界観が学生の青春時代なだけで、物語やキャラクター作りはとても良くできている。
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そして今回の本。
これも高校の図書委員の男の子2人の話。
主人公(語り部)は堀川次郎、人当たりが良く、頼まれごとが多い。
その友人の松倉詩門、イケメンで皮肉屋。
非常に推理力が高い2人が、またもや日常の謎を解いていく。
ホームズ、ワトソンの関係ではなく、お互いに推理力が高く2人のタッグで謎を解いていく。
性格がお人好しと皮肉屋と正反対なのが良い。
お話は短編の連作が6つ。
全体を通して、青春ものだが割とほろ苦い部分がまたそれも魅力的。
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物語は、まず第一話「913」
図書委員の堀川次郎と松倉詩門は誰もいない図書室で当番の仕事をしています。
そこへ先輩の女生徒がやってきて「祖父の金庫の番号を当ててほしい」と
以前同じ図書委員の暗号を解いた経歴があったため。
2人は先輩のうちに行き、部屋の様子は本棚から、金庫の番号を見事推理します。
ただ答えを教えようとしたところ、松倉詩門が堀川次郎を外へ連れ出し、もう一つの謎について話します。先輩の家の様子がおかしいと。
それから二人は先輩のうちへ戻り、大どんでん返しが。
第二話 ロックオンロッカー
堀川は美容院の割引目当てで松倉と一緒に散髪へ出かけます。
髪は普通に切れましたが、なんだか店の中が変です。
貴重品は手元に、店長が途中で料金を払って欲しいと、閉店近くなのに新しく入る女性客、
お店を出ると、松倉は真相が分かったようで、道路の反対側で待ち、店で何が起こるのかを待ちます。そこへ・・。
第三話 金曜に彼は何をしたのか
二人に図書委員の後輩が相談を持ちかけてきました。
学校の窓ガラスが破られ、素行が悪い後輩の兄が疑われていると。
二人は兄の疑いを晴らすために、後輩のうちへ行きます。
兄の部屋のなんでもないものから次々と窓ガラスが破られたときのアリバイがわかってきます。
兄は当時何をやっていたのでしょう。
第四話 ない本
また二人に相談が持ち込まれます。今度は3年生の男子生徒。
先週学校で自殺があり、その友人だったと。
自殺した彼を見かけた最後のとき、読んでいた本を探して欲しい。
確かにその本に遺書らしきものを挟み込んでいたのを目撃したらしい。
二人は曖昧な情報から次々と推理していき、真実に辿り着きます。
第五話 昔話を聞かせておくれよ
暇な図書室、堀川と松倉の二人はお互いに昔話をしようと言います。
堀川は子供の頃プールで父親と友達とお金拾いゲームをしたことを話します。
次に松倉の番です。
ただ、普通の昔話ではありません。
彼の死んだ父親が残したお金をずっと探しているという話。
堀川は松倉と一緒に推理して、松倉の父親の痕跡を辿ると、思いもよらない過去がわかってしまう。
第六話 友よ知るなかれ
堀川は松倉の父親の過去を推理して、父親が何かを残した場所まで分かったが、そこからは松倉のプライベートな部分なので、堀川は手を引いたが、
やはり疑問に思うところがあったので、一人で街の図書館の新聞コーナーで、父親のことを調べると、いろいろな過去が出てくる。
そこへ堀川が街の図書館にやってくることを分かった松倉がやってきて、二人は話し合う。
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青春ミステリーなのに、男の子2人の友情物語で、恋愛様子はなく、結構ほろ苦い。
先輩女子生徒の祖父の話、後輩の不良の兄、美容院での出来事、自殺した3年生、
そして、友人松倉の父親の過去
四話までは割と青春ほろ苦物語でこんな感じかなと思ったら、ガクンと!
お父さんの過去の部分がかなり驚いたが、またそれがこの物語の深みを与えていると思う。
堀川と松倉の関係は、微妙に付かず離れずの良い関係だったが、松倉のお父さんの過去で、彼のプライベートに入ってしまった。
それでも勇気を出して堀川は言う
「もう少し、ただの図書委員でいてくれないか」
この友情にグッときますね。
新しい新刊「栞と嘘の季節」が出たそうでそちらも楽しみです。
また堀川と松倉のコンビがどう活躍するか!
今日はここまで。
「僕たちの昂奮は一気に失せた。もっともそれは、火が消えてしまったというようなものではなく、熾火(おきび)のように静かで熱いものに変わったということだ。」P.277 「本と鍵の季節」より