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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.191 読書 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は 読書 澤村伊智さんの「ぼぎわんが、来る」についてです。

ホラー小説。

先日小野不由美さんの「残穢」を読んでいろいろ調べていたら、ホラー小説というジャンルがあり、まだあまり読んでいないことに気がつきました。

サスペンスや怪談は読んでいますが、ホラーというジャンルを今まで意識してきませんでした。

読んでいて怖いなと思う本はありましたが、まあそれでもサスペンスや怪談やギャング小説の一部。

今思い出して怖いなと思ったのは、岩井志麻子さんの「ぼっけえ、きょうてえ」、小野 不由美さんの「屍鬼」、江戸川 乱歩の「孤島の鬼」、ドン ウィンズロウの「ザ・ボーダー」「ザ・カルテル」、キングの「キャリー」「ミザリー」ぐらいです。

全然怖い小説を読んでいないんです。

これはちょっと追求しても面白そうなジャンルと思い、ホラーを調べていくと妙に惹きつけられる題名の本がありました。

それが今作。

「ぼぎわんが、来る」

ぼぎわんって何?このネーミングが妙に気になる。

読み始めると、ぐいぐい引き込まれ、主人公が子供のころ留守番をしていると、何かが家に来る、すりガラスの向こうに何かが、いる。もうここの表現がかなり怖い。

そのまま読んでいたら、怖いだけでなく、表現も構成も(語部が三人変わる)とても巧く良くできた小説でした。

ホラー小説って殺人鬼やお化けが出てきて怖いだけかと思いきや、恐怖という感情を入り口にして、人間の本質、二面性や弱さやトラウマを描いているかもしれないとこの本から思いました。

ホラー小説の最初の入り口として良い本に出会えました。



物語は、主人公が小学生の頃認知症の祖父と留守番をしていると、不審な人が尋ねにくる。怖くて扉は開けなかったが、その時だけ祖父は覚醒して、あれに答えてはダメだという。

祖母があれは”ぼぎわん”という化け物と教えてくれたが、いつの日か忘れてしまった。

それから何十年も経って主人公は結婚をし、ある日会社に誰かが尋ねにきたが対応できなく、会った後輩が怪我をしておかしくなる。

次第に主人公の周りで妙なことが起こるようになり、怖くなった主人公は、民俗学を専攻している中学時代の友人に相談する。

ぼぎわんについて歴史的にも教えられ、オカルトライターを紹介してもらう。

そのオカルトライターと恋人の女性霊能者が主人公の家族を守ろうとするが

彼女では全く手に負えないほどぼぎわんは凄かった・・・。



ここから物語を続けるとネタバレになるので書きませんが、

話は三部構成になっていて、語部(主人公)が変わるんです。

最初の第一部は幼い頃ぼぎわんに会ったことがある男性。ぼぎわんから家族を守ろうとする。

次に第二部ではその妻からの視点。第一部の主人公の夫が全く違う男性として描かれる。

第三部はオカルトライターが主人公。

その構成力が見事で唸りました。

人間を違う側面から見ると、その違いに驚くが、あまりにも生々しいので膝を打ちました。

詳細には書けませんが、家族思いの男性が奥さんから見たら全くそうではないという話。

この物語、単なる怖い怪物の話だけでなく、人間の裏側まで描かれているのが面白いです。

そして、その裏側、人間同士の不信感、そこのスキマに怪物が入ってくる設定が、結構リアリティがあって面白かったです。

P.197
「お化けとかレイとかは、だいたいがスキマに入ってくるんです」と言った。
「スキマ?」
「家族とかの、心のスキマです。ミゾっと言った方がいいかも」
彼女は難しそうな顔をしていた。言葉を選んでいるのだ。
「ミゾがあると、そういうのを呼んじゃんです」


あと主人公たちを助ける霊能者の姉妹が出てくるのですが、この二人がとっても魅力的。妹さんはピンク色の髪をして子供が大好きな霊能力者。でも能力はそれほどではない。お姉さんの方がまだ正体は謎のままだが、多分最強レベルの霊能力者。シリーズ化しているみたいで、ぜひ読んでいこうと思います。

まあ結局、めちゃくちゃ怖いわけではなく、巧くて面白くて、ホラー小説というジャンルを今まで避けてきたことに反省しました。

ホラーは人間の本質が描かれる、のではないか?ということをこれから読んで確かめたいと思います。

今日はここまで。



「怨霊だの妖怪だの、そういう非科学的な話はまっぴら御免だとお考えなら、そのように対処なさったらいい。要はセキュリティの強化と周囲の調査、後は精神の安定です。専門の業者や医者やセラピストに相談すればいいと思います。そうでないなら、ちゃんと非科学的な対策をなさったらいい、中途半端が一番良くないんですよ。専門外の学者センセイに遠回しに聞いたりとか」
/P.80「ぼぎわんが、来る」より








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