趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.245 読書 岩井志麻子「でえれえ、やっちもねえ」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 岩井志麻子の「でえれえ、やっちもねえ」についてです。
あの最恐の本「ぼっけえ、きょうてえ」の岩井 志麻子さん。
自分が読んだ本の中でもトップクラスの恐怖を味わった本の作者の別の本。
女性を主人公にした4編の短編集。
前回「岡山女」も読んで、相変わらず粘着質で変わらない恐怖を描いている。
もう田舎の言葉で、明治から昭和の初めまでの時代、女の怖さを描けば天下一品。
完全に岩井 志麻子さんの世界観ができている。
この中に入れば、どんな話でも罪人からの手紙や人間じゃない子供やハレー彗星や小説家を目指した話でも岩井 志麻子さんの色に染まる。
そしてやはり幽霊や怪物より、人間や女性の怖さの方がジトッとして怖いですね。
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物語は、第一話「穴掘酒」
手紙形式、監獄に収監されていた女性からの手紙が来る。恩赦で刑務所から出てきたと、そしてなぜ返事をくれないんだと書かれている。どうして自分が人を殺し刑務所に入ったのかが明かされる。次第に手紙の内容も狂気じみてきてエスカレートしてきて、実は手紙を送った男性の近くまで来ている・・・。
第二話「でえれえ、やっちもねえ」
コレラが流行して家族が全員亡くなった女の子。孤児院で育てられ大人になり、偶然に同じ孤児院で育った男性と会う。二人は結ばれたが夫は戦争で出征してしまう。ある日夢か現実かわからないが恋人の姿をした別のものと交わってしまい、やがて戦争から帰ってきた夫との間に子供が生まれる、しかしその子は異形の子だった。
第三話「大彗星愈々接近」
ハレー彗星が接近する年に、何十年も行方不明だった娘が老婆になって帰ってくる。その行方不明になったことのことを覚えていないと、けど老人たちに聞くと確かに遠い昔神隠しにあった女の子がいたと。
第四話「カユ・アビアビ」
主人公は岡山で生まれ、顔が美しいだけの母親と姉、と違って頭も良く勉強もできて、やがて東京に出て作家になるために女学校に通う。関東大震災で酷い目に遭いながら有名作家と出会いその妻になるが、やがて二人は逃避行のように東南アジアへ。そこへ父親からの手紙が・・・。
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もう岩井ワールド全開!明治から昭和の初めの日本が舞台。妖しい世界観。
じめっとした不穏な感じがずっと続く。
不可思議なことが起こるが、それは別に大したことでなく、どちらかというと人間が怖い。
それも短編らしく、何も原因がわからないまま、ポンと異世界へ放り投げられたまま、最後の行でドキリとさせられる。
ただ読んでいてとってもその独特な妖しい世界観が楽しく気持ちが良いです。
江戸川乱歩や京極夏彦を読んでいる感じと同じで、完全にその世界観で、それを楽しむ感じ。
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第一話の手紙形式で出所してきた女からずっと手紙が来る恐怖はたまりません。
そして最後にその手紙をもらっている男からの返事が!!!
もうそのラストにやられましたw
岩井さん3冊目。今後も読んでいきたいと思います。
今日はここまで。
孤児院を出た者は、土産を持って顔を出しにくるのもいれば、一切の関わりを断つのもいた
「絶頂に居る者と、どん底に居る者は、ここには戻らん」
これは占いではなく、世の習いだ。
/P.61 「でえれえ、やっちもねえ」より