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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.032 読書 佐々木譲「制服捜査」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は読書 佐々木譲さんの「制服捜査」についてです。
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警察小説の第一人者佐々木譲さんの本。
今まで「エトロフ発緊急電」、「警官の血」、「笑う警官」、「警視庁から来た男」、「暴雪圏」と読んできて6作目。
特に「暴雪圏」の主人公川久保巡査部長の前の話だったとは、同じ登場人物で順番が入れ違えたが、
「制服捜査」は5編からなる中編集、「暴雪圏」は長編なので、全く問題はなかったです。
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今作は田舎の駐在さんが主人公。
閉鎖された田舎社会の闇が、いろいろな小さな事件が起こり、また隠蔽されている。
元刑事だった駐在さんがそんな村で活躍するお話し。
大体警察小説って都会で犯罪が起こり刑事たちが活躍するのが定番。
駐在さんって交番にいて、道を聞いたり、交通整理や、事故の書類書いたりするイメージ。
刑事でなく駐在さんというのが意外で面白い。
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物語は、札幌の刑事だった主人公の川久保が、
道警の組織の不祥事で長く同じ場所にいると癒着が生まれるということで、
大異動の波に飲まれて、北海道の田舎町へ単身赴任で左遷させられた。
静かな田舎町なので事件は起こらないと思っていたが、
小さな些細な事件が起こっていた。
第一話は未成年の少年が家に帰ってこない話
第二話は犬殺し、海外研修生の話。
第三話は前科者と少年との交流
第四話は連続放火事件
第五話は少女失踪事件
同じ村で別々の事件が起こる中編が5本。
皆小さい事件から始まり、刑事でないので捜査はできないが
根気よく人の話を聞いて調べていく駐在さんの姿がなんとも良い。
単なる人の良い駐在さんではなく、都会から単身赴任できて元刑事という設定が生きてくる。
最後の少女失踪事件は昔この村であった同じ事件が関係していて、
5編全体を通して村社会の隠蔽体質の闇が垣間見れる。
主人公が前職の駐在さんと話すところで
「駐在警官の一番大事な任務はなんだと思う?」
「犯罪被害者を出さないことだと思います」
「ちがうね、被害者を出さないことじゃない。」
「犯罪者を出さないことだ。」
この言葉は結構怖い、犯罪と知っていても内々に済ませて表に出さないということ。
もちろんこれは小説ですが、日本の隠蔽体質が垣間見れるようで・・・。
今日はここまで。
「制服警官ですからね。捜査はできません。わたしは駐在として、地域のささいな情報を、少しでも多く頭の中に入れておこうと思っているだけです。」
「何かの役に立つか?」
「捜査員とはちがうものが見えてくるでしょう。」
/P.121「制服捜査」より