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生きる糧としての映画『37seconds』

長野ロキシーで『37seconds』を観ました。

マジ傑作です。なんだこの才能…
スタッフロールを最後まで見たのは久しぶりじゃないだろうか。

あんまり素晴らしかったので、観終わった直後に友人の金工作家・角居さんにメールしてしまいました。

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それにしても車椅子と歌舞伎町があんなに相性がいいとは。
三人のドラッグクイーンもよかった。
すげえ…と思いながら画面を観ていました。

キャスティング・脚本・撮影・編集・音楽。
本当に全てが素晴らしかったです。
作り手がとても真摯に取り組んでいて、なおかつパワフルに面白い映画で、非常に感銘を受けました。

そして、監督のHIKARIさん。
勉強不足で存じ上げなかったのですが、何ですかこの才能…。本当に素晴らしかったです。
重い色も、ポップさも、朝の光も、夜のだらしなさも全部あって。

カラフルな才能。脱帽です。
ぼくらと同時代を生きる映画監督だと思えてとても嬉しかったです。

*   *   *

ぼくは映画を観る前にあまり情報を入れない方なので、今回も「車椅子の人が主人公のドキュメンタリーなんだろうな…」くらいな気分で劇場に足を運んだら、全然そんなじゃなくて。

映画を観ている間、「車椅子の人が出る映画」と思うことが一度もなく、観ながらずーっと「何だよこの映画!最高じゃん!」と思いながら夢中で観て、最後までその通りの映画でした。

もちろん、この映画では「車椅子で生活すること」「障害者の方がこの社会で暮らすこと」は十二分に描かれています。
日本の窮屈さや目線のなさもきちんと観客に伝わってきます。 

その上で、この映画を語るときに「車椅子の主人公が」ではなく、「ユマって子がいて…」と言いたくなる映画でした。 

ぼくは「車椅子の主人公」を観ていたのではなく、「ユマ」が笑ったり怒ったり羽目を外すところを観ていて。(この子がクシャって笑う顔、超かわいいですよね!)

主人公が超キュートで、ぼくたちと同じようにバカで、羽目を外して、親と喧嘩して、ぐじぐじして、突破したくて。

つまり、すげーいい青春映画だし、すげーいい家族映画だし、すげーいいロードムービーだという感想になるのです。 

この文章を読んでくれている人に伝わるといいのだけど。

未だにぼくの中であの登場人物たちが賑やかにワイワイしていて、気分がほわんほわんしています。

映画に出てくる人物がただの「役」としてではなく、こういう風に「誰かに会った」と思える映画はぼくにとって文句なく最高な映画なのです。
最高でした。

*   *   *

『37seconds』の感想を一言で表すと、「観れてよかった」となります。

この時期にこの映画を観れたことは、ぼくにとってとても大きい。

コロナ・パンデミックを受けてのドイツ連邦文化大臣のメッセージを「いいなあ…」と遠く仰ぎ見るように羨ましく思っていたぼくでしたが、

いい映画を観ることは生きる糧になるんだ。大げさじゃなくて。

と、改めて実感できました。ぼくの大切なこととして。

年度末で忙しい上に、コロナ対応で行動も制限され、いろいろ気持ちがふさぐ状況ですが、こんなときこそ、本当に素晴らしい作品を体験することは大きいと実感しました。

仕事を調整して、感染対策もしっかりして、ぜひ足を運んでみてください。

例え、この映画じゃなかったとしても、絵画でも演劇でも音楽でも。
自分にとって大切な作品に、今こそ出会うことが必要なんだろうな。と思いました。

ぼくたちには胸を打つ作品が必要です。
食事や、マスクや、消毒液と同じくらい。
生きる糧として。


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