地方BtoB企業に共通するWeb活用の課題とジレンマ。
お客様とのWeb活用支援を重ねる中で、地方BtoB企業の共通の営業課題を発見しました。首都圏の大手企業より、長野県のような地方BtoB企業だからこその課題のようです。しかも、その課題には気づいているけれど、「なかなか手をつけられない」「解決しづらい」といったジレンマも発生しているようです。
このページではその課題とジレンマについて説明いたします。
見込み客の分解
まず、BtoB企業の「見込み客」を2種類に分けます。
それは「そのうち客」と「いますぐ客」に分かれます。
そのうち客
コールドリスト(休眠客、失注客)も該当する
情報収集しているユーザー(製品やサービスが今すぐ必要ではない)
Webでのアクション
Webで資料ダウンロード
Webセミナーに参加
営業活動のステップとゴール
芽出し →接触 →課題把握 →案件化
いますぐ客
課題解決を望んでいるユーザー(新規、既存)
Webでのアクション
提案を要望
見積もりを要望
デモ機貸し出し、サンプル依頼など
営業活動のステップとゴール
提案 →見積もり →受注 →顧客化
営業活動の骨格
業種・業態の違いはありますが、芽出しから案件化への第一段階を経て、受注・顧客化を目指すことが営業活動の骨格になります。
「そのうち客」と「いますぐ客」の違い
「今すぐ客」
・直近の売上に繋がる
・営業スタッフの優先度が高い
・現場での緊急性が高い
「そのうち客」
・1年後の経営の種になる
・安定受注に関係するため管理職・経営者の課題
・現場での緊急性は低い
地方BtoB企業に共通するジレンマ
先ほど分解した営業活動を「マーケティング」と「セールス」に区分してみると、ジレンマの原因が見えてきます。
「そのうち客」はマーケティングに該当し、「いますぐ客」がセールスに該当します。2つのフェイズを橋渡ししているのが「案件化」です。
営業スタッフの優先度が高いのは「いますぐ客」です。緊急性が高いので。「そのうち客」が重要なことも熟知されていますが、「時間がない」「人手が足りない」などの理由から、手をつけられていないことが往々にしてあります。「重要性は高いが、緊急性が低い課題は後回しにされる」の典型です。
地方BtoB企業のジレンマ
多くの地方BtoB企業がこのジレンマを解決する必要があります。
マーケティングは営業活動であるという指摘
ほとんどの地方BtoB企業にはマーケティングセクションがありません。「営業部がマーケもセールスも担っている」という現状が、「そのうち客」を放置する要因のひとつにもなっています。
これについて、 「当然だ。これら全てが営業活動である」 という経営層からご指摘をいただくこともあります。 もちろん、間違いではありません。
しかし、デジタル化により社会は大きく変わりました。 商談前に勝負が半分決まっているという有名なデータがあります。
購買プロセスの57%は営業担当者に会う前に終わっている
購買プロセスの57%は営業担当者に会う前に終わっているというデータです。 営業活動の川上はWebの領域が非常に重要になっています。
57%の領域を全て営業部が請け負うのは正直難しいのが、今のほとんどの地方BtoB企業の現状なはずです。 そして、この57%がWebマーケティングの領域です。
実は誰もやる人がいない「インサイドセールス」
上記の図のように、芽出しから案件化までをつなぐ領域に「インサイドセールス」があります。その役割は多々ありますが、製造業にとってのインサイドセールスは「見込み客の課題を把握し、案件化に向けて活動する」と捉えるのが一番実践的です。
製造業のインサイドセールス例
資料ダウンロードした見込み客に対しての活動例です。
営業部の方だったら、上記の流れを見れば「まあ、そうだよな」と思っていただける当たり前の営業活動です。問題は「それをやる人がいない(自分の職務ではない)」「分かっているが手が足りない」ということです。
HubSpotなどのMAツールを入れ、Webをリニューアルし、Web活用に本腰を入れたのだけど、なかなか成果が出ない…という地方製造業は日本国内に星の数ほどあると思いますが、「インサイドセールスを放置している問題」がその要員のひとつになっていると思います。これは組織設計の話なので、現場の方が現場力で解決するのは難しいテーマです。経営層が自分のマターとして真剣に取り組む必要があると思っています。
地方製造業の注意点
Web活用におけるインサイドセールスといった際に、「とにかく電話をかけまくってアポを取る」というイメージが湧きやすいですが、それは電話をかけるリストが豊富にある企業のやり方です。
地方製造業の場合、そもそもリストが潤沢ではありませんし、「電話アポ→即面談」といった文化が根付いていないケースが往々にしてあります。
まずは「自分たちのインサイドセールスはどんな形が向いていそうか?」の把握と試行錯誤から始めることをお薦めします。その際、「ヒアリングして顧客課題を把握する」がポイントなので、製品・技術・業界への知識と営業スキルが必要です。
「とにかく電話してアポを取りまくれ」という形から入って、顧客知識や製品知識、業界知識のない人を電話要員にすえて施策を回してもおそらくそんなに有効な成果に繋がらないと思います。たぶん長続きしません。お気をつけください。
案件化に役立つ 「ドアノック製品・サービス」
インサイドセールスは案件化を目的としていますが、事情や背景にばらつきのある見込み客の案件化はかなりのスキルが必要です。かといって、社員さん皆にスター選手になってもらうのも現実的ではありません。
その際に役立つのがドアノックの性質をもつ製品やサービスです。
案件化のひとつ手前のゴールを用意しておくと、インサイドセールスの共通目的として活動しやすくなりますし、提案機会の場作りとしても活用できます。
Webマーケティングから受注までの流れ
Webマーケティングの流れにそって、人的リソースと役割を分解することが重要です。 (特にインサイドセールスを誰が担うか)
そして、それには正解がありません。 方法論は企業によってそれぞれです。
何かを始める際に「Why(なぜ)What(何を)」が重視されますし、もちろん重要なのですが、「How(どうやって)Do(やる)」は自社の最適解を見つけていく必要があります。
正解は用意されていないので、Web活用を進めながら、手を動かして、顧客理解を深めて、仮説を立てて、実践して、検証していく必要があります。
地方BtoB企業に大切なこと
Webマーケティング活動に重要なのは「社内体制を整えること」です。
それは「自社の最適解を見つけること」と同義です。
社員様や現場のスタッフが「腹落ちしていない」「向いていない」状態で見た目だけ進めても鈍重な活動になります。Webマーケティングにおいて 鈍重な活動からは成果は生まれません。
「1年後の案件化のタネを確保するためにWebマーケティングを始める」なら、社内体制の準備が必須です。
Web活用の目的と正体
Webサイトを作るということは 「企業活動・営業活動の場を作る」ということです。
もし、あなたの会社が「事業のためにWeb活用を進めたい」と思っているのなら、考えるべきことは 「どんなWebサイトを作るか?」ではなく、「どんな企業活動がいま必要か?」です。
Webサイトはあなたの会社が活動するための「場」となります。また、HubSpotなどのMAツールは活動をするために必要な「機能」です。この点を理解した上でWebサイトリニューアルを考える必要があります。
この視点がなく、「あの企業サイトみたいにしたい」「こんなデザインがいい」「もっとインパクトがほしい」といったオーダーはナンセンスです。
Webマーケティングの最大目的
「営業部に良質なパスを出し、営業活動に貢献すること」がWebマーケティングの最大の目的です。 Web活用では以下のプロセスを通じて、目的達成の施策を回す必要があります。
地方BtoB企業に大切なこと
Webサイトを作り
MAツールを導入し
Webマーケティングを実施する
これ自体は正しいのですが、多くの地方製造業様はうまくいきません もしくは長期間苦戦します。形だけ導入しても成果は生まれないはずです。
「MA 導入 失敗」で検索するとずらりと記事が出てきます。
どの記事もほぼ同じ問題点を挙げています
つまり、Web活用が機能しておらず、Webを運用できていない。流行りのMAツールを入れても運用できないと何も生まれません。野球場を作っても、そこで野球がプレイされなかったら何も生まれないのと一緒です。観客も集まってきません。
Web活用に必要な7項目
運用するために何が必要でしょうか。
先ほどの「MA導入失敗の共通点」を反転させればよいはずです。
最初のハードルは集客力
特に最初のハードルは「集客力」です。
Webサイトに集客力がないとほぼ手が打てません。「Webマーケティングをやれば何とかなる」ということもありません。
現サイトに集客する力がないとしたら、最優先課題は「集客力」です。次に「顧客情報を集める力」です。 その順番を無視してMAツールを導入してもほぼ何も起きません。ご注意ください。
外部支援はぜったい必要
「MAを導入したけれど上手くいかなかった」というのが地方BtoB企業のほとんどが、先ほど提示した「Web活用に必要な7項目」を無視しているのではないでしょうか。または事前に用意することなくただツールを導入してしまったと思われます。
HubSpotのようなMAツールをただ導入しても、成果を生むことなくプロジェクトが頓挫してしまいます。 頓挫しないためにも外部支援が必須です。
余談:地方の特徴
余談ですが、長野県の機器メーカー様のWebマーケティング支援を始めるにあたって、営業本部長、海外営業部長がお揃いのオンラインMTGで、「今後の営業活動を◯◯のように変えていただきたいのです」と説明する場がありました。すごく怖かったです。それはそうですよね。人様の会社がこれまで培ってきた営業活動を変えてくれと言っているのですから。でもやるしかない...
地方の制作会社が「Webマーケティング支援できます」と言うならば、こういったハードルを乗り越える必要があります。個人的な実感ですが、これを避けている ようでは本丸の「Webマーケティング支援」にまで辿り着けないのが地方の特徴だと思っています。
まとめ
目的は「事業につながる成果」
今後、MA導入やWebマーケティングを検討されるのであれば、信頼できる外部パートナーを見つけることをおすすめします。地方BtoB企業のWeb活用に「MA導入とWeb活用」は必須だとぼく自身は考えています。でも、MAもWeb制作もWeb活用も手段にすぎません。目的はあなたの会社の事業につながる成果です。 ぜひ、成果につながる導入を進めてください。
事例
Web活用支援を担当している株式会社ハーモ様とMarkezine の取材をご一緒させていただきました。地方BtoB企業様のWeb活用の事例としてわかりやすいかもしれません。よかったらご覧ください。
想定の3倍を超える売上貢献を実現!老舗メーカー・ハーモのHubSpotを使ったWebマーケ実践
関連note
BtoB企業のWeb活用では第一段階に3年はかかると思っています。「立ち上げ初年度は社内の環境整備の時間」くらいに捉えて、3年かけて成果を安定させていくのが地方BtoBの場合、無理のないスケジュールです。詳細は下記noteにまとめていますのでご覧ください。
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