物語の余白の魅力 ー瀧川鯉八師匠のこと
落語家の真打昇進披露興行、それは特別な高揚感と祝福に包まれたイベントだ。
落語や漫才が並ぶ寄席のプログラムの半ば、お中入りの後に高座の袖から「東西東西!」と声がかかり、するすると幕が開く。そこには昇進したばかりの新真打とその師匠、そして新真打と関わりの深い師匠方が黒紋付きでずらりと居並んでいる。入門時のエピソード、修業時代の失敗談、楽屋での日常のこと。じっと手をついて控える新真打を横に、師匠方が愛情と笑いのあふれる口上を順々に述べていく。そして口上の最後は会場も一体となって三