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生成AIアイデアソン 〜生成AIと教科書を活用した新しい学びを考えよう〜を開催しました。

こんにちは。合同会社andstepの中井健太です。

私たちがファシリテーターを担当した「生成AIアイデアソン 〜生成AIと教科書を活用した新しい学びを考えよう〜」について報告させていただきます。

この記事ではファシリテーター目線での、アイデアソンの全体像をお届けします!


生成AIアイデアソンについて

このイベントは、教育に関心のある学生(例:教職課程履修生、塾でのアルバイト経験がある学生、TA(Teaching Assistant)・ES(Educational Supporter)の経験がある学生、まなび@Rに登録している学生等)が対象のプログラムです。

立命館大学山中司先生の研究グループが中心となり、東京書籍株式会社に協力いただき、立命館大学の大学生・立命館守山高校の高校生の皆さんに参加いただくことで実現しました。

今回は、生成AIと教科書を活用した新しい学び方のアイデアを生み出すだけでなく、アイデアを生み出す中でのディスカッションやこれまでの経験から、東京書籍株式会社が開発する「NewE×AI」の改善点を考えることも目的としました。

イベントの様子

本イベントは2024年11月16日(土)10:00~17:00で立命館大学びわこ・くさつキャンパス(BKC)アクロスウイング1Fで実施され、大学生8人、高校生10人の合計18名に参加していただきました。

イベントの説明と山中先生の挨拶

まず、オープニングではイベントの趣旨説明が行われました。その後、本イベントの講師である山中先生より、挨拶をいただきました。

「生成AIの教育利用について、なぜ高校生や大学生の考えが重要なのか」

このことについて、現状の教育における生成AI利用の課題感や教育に携わった経験のある大学生だからこその考え、今、授業を受けている生徒だからこその考えの重要さについて、説明をいただきました。

その後、軽く参加者全体の自己紹介を行い、イベントがスタートしました。

今までの「学び方」ワーク

はじめのワークが「これまでの人生で記憶に残っている学び」をチームで50個以上書き出していくこと

本イベントのコンセプトとして「エフェクチュエーション」を意識した考え方を取り入れることが挙げられます。

エフェクチュエーションとは、成功を収めてきた起業家に見られる、従来とは異なる思考プロセスや行動のパターンを体系化した意思決定理論のこと。バージニア大学ビジネススクールのサラス・サラスバシー教授が2008年に提唱した。従来、戦略上の意思決定は、市場環境の大きな変化を想定せず、未来を予測し目標を立ててバックキャスティング的に行われる「コーゼーション」と呼ばれるアプローチが一般的であった。これに対し、エフェクチュエーションは、未来は予測不能であるという前提のもと、所与の資源や手段を用いて、結果を創り出していくことに重きを置くアプローチである。(グロービス経営大学院 MBA用語集より)

https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-20914.html

その中でも、 「手中の鳥」の原則 (The Bird in Hand Principle) について、意識したワークとなっています。つまり「目的を達成するために新しいアイデアを考えたり新たな能力を身につける」のではなく、参加者の生徒・学生が「いま持っている経験やアイデア、能力」を用いてできることを考える仕組みになっています。

これまでのよくあるアクティブラーニング型のワークショップでは「目的は?問題は?課題は?」と聞かれて答えることが当たり前の中、参加者の方々は最初、困惑していました。

しかし、だんだんと模造紙に印刷された街の図を見ながら、小学生の時の習いごとや高校生のときの総合的な探究の時間、地域の祭りやアルバイト、それぞれの経験や体験を通してアイデアを付箋に書き出して行くことができました

最終的には50個の意見に留まらず、多い人では100件近く考えをアウトプットすることができました。

東京書籍「NewE×AI」レクチャー・体験

前述のワークが終わったところで、再度レクチャーを挟みました。ここでは東京書籍株式会社の「NewE」の概要、そして体験する「NewE×AI」の活用事例について、ご紹介いただきました。

レクチャー終了後、実際にデバイスを用いて、中学校2年生の比較級と最上級の英語学習を体験しました。具体的には「文法」や「単語」などの学習や教科書の本文の内容などから、わからない部分の問題作成や単語テストができる機能を体験しました。

特定のデバイスが必要ではなく、すぐに体験できるような仕組みについて、参加者からは好感触な意見が出ていました。さらに「AIに聞いたことは解決できるけど、そこから広がりがあるような仕組みにして欲しい」「アバターによって意外と教わっている感じが変わるんだ」と自然と様々な意見も出てきました。

生成AIアイデアソン

「NewE×AI」の体験後、昼食を挟み、再度ワークに入りました。今回のワークでは、生成AIと教科書を活用した新しい具体的なアイデアを考えるワークを実施しました。

そこでは最初のワークで張り出した「記憶に残っている学び方」を用いながら、各自3つずつ「生成AI×教科書×英語」のアイデアを考えました。

実際の場面を想定しながら、「自分ならどのタイミングで活用したいか」「どこを生成AIに助けて欲しいか」などを考え、実際にChatGPTと対話しながら考えている参加者もいました。

アイデアショートプレゼン

それぞれのアイデアが出揃った後、立命館大学の山中先生、東京書籍の皆さん、そして実際に授業で生成AIを活用している立命館守山中学校・高等学校の英語教諭 山内先生を審査員にお招きし、参加者がショートプレゼンを実施しました。

そこでは自分が考えた3つのアイデアの中から、1つを選んで全員発表を行いました。作成したワークシートを見せながら、アイデアの目的や利用するターゲット、必要なリソースなどを発表しました。

チーム内でのアイデアの評価

ショートプレゼンでは、自分が良いと思ったアイデアを1つのみ、紹介しました。しかし、その他のアイデアに実は良いアイデアが含まれているかもしれません。そこで、全てのワークシートを集め、各グループ内でディスカッションを行い、アイデアの順位をつける作業を行いました。

ここでは、エフェクチュエーションの 「クレイジーキルト」の原則 (Crazy-Quilt Principle)を意識しています。これは、競合分析を行って競合に勝つことを目指すのではなく、競合も含めた多様なステークホルダーと交渉しながら価値を生み出すという方法に基づいたワークです。

具体的には、自分たちのグループ以外の発表内容を見て、評価を行い、より良いものや考え方を取り入れることで、自分たちのアイデアや考え方をアップデートする機会としました。

実際にグループ内での順位は、作成者が選んだものとは異なるワークシートが良いアイデアだと評価されていることも多く見られました。

考えた・学んだことを活かした「NewE×AI」のブラッシュアップ

アイデアソンの終了後、今回のイベントで考えたこと、学んだこと、体験したことから、KPT法を用いて、「NewE×AI」の活用について、ブラッシュアップや振り返りを行いました。

KPT法は「ケーピーティ法」または「ケプト法」と呼ばれるフレームワークです。課題の洗い出しをしたり、改善のためのアクションを明確化したりすることが得意です。KPT法は以下の3つの要素から成り立っています。
Keep:継続すべき良かった点
Problem:改善すべき課題や問題点
Try:解決のためにこれから実施すること
シンプルで汎用性があるため、様々な業界で取り入れられている手法です。
(キーエンス・ものづくりの現場より)

https://www.keyence.co.jp/ss/general/manufacture-tips/kpt.jsp

参加者からは「問題の多さや個人の能力に合わせてくれること、キャラ設定があるところが良い」などが挙げられました。一方、改善点としては「文章がワンパターンなこと、操作性や個人の学習スピードで差がつく」などがありました。さらに工夫点として「間違えた問題を復習できる機能、AIを含めたグループ活動機能、学習のペース配分を決めてくれる機能」などが挙げられました。

表彰式

イベントの最後に、ショートプレゼンの表彰式を行いました。

結果、東京書籍株式会社 教育DX局DX事業創出本部 田中貴裕 様、立命館守山中学校・高等学校 英語教諭 山内優馬 先生、立命館大学 生命科学部 山中司 先生より、優れたアイデアを提案した3名の参加者への表彰が行われました。

東京書籍 NewE AI 賞
立命館大学 角田さん「英語を使って他教科も」

立命館守山中学校・高等学校 山内先生賞
立命館守山高校 廣瀬さん「困っているAIを助けよう」

立命館大学生命科学部山中先生賞
立命館守山高校 田中さん「AIで英語プレゼンの準備から評価まで」

最後に

イベントの締めくくりの挨拶として、山中先生からは「できることなら全部のアイデアを実現したい!ただし、『何かを削減できる、何かをしなくても良い』といった発想だけでなく、今回のアイデアの中でも出た『AIを活用してあんなことやこんなこともできる』と、より良い方向へ発想を行って欲しい。」とおっしゃられました。

また「アイデアソンは世界中の学生たちがやっている。みなさんの発想の柔軟さに驚かされ、これからもAIを活用して、よりよく教育に関わって欲しい」と総評をいただき、盛況のうちにイベントは終了しました。

本イベントでは、これからAIが当たり前になる世代の高校生や大学生に考えてもらうことで、さらなる活用のアイデアが生まれました。参加学生の中には、実際に塾講師としてアルバイトしている人や将来先生を目指している人もおります。

これからの教育のスタンダードになるであろう、生成AIの活用を実際に体験できたこと、そしてその未来を考えるワーク、とても良い機会を創出できたと感じました。


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