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記事コメ:難病・潰瘍性大腸炎が”国の指定”から外される危機

今日は下記の記事を見掛けたのでコメントしておきたい。

記事では潰瘍性大腸炎について、指定難病から外されるのではないかという憶測がなされている現状を紹介している。記事でもある通り、潰瘍性大腸炎は免疫系の過剰な反応が原因である自己免疫疾患の一種であり、自己免疫疾患であるが故に根治療法はなく、免疫抑制剤による対症療法が主である。また、高額な医療費についての言及があるが、これは近年自己免疫疾患領域で盛んに用いられている生物学的製剤、いわゆる抗体製剤の事である。

潰瘍性大腸炎やクローン病はT細胞の中でもTh1細胞やTh17細胞がその病態形成に重要な働きをしていると考えられている。そこで、そのT細胞の分化や機能に関わるサイトカインを特異的にブロックする抗体を治療に用いるという研究が長く続いてきた。そして、最近になってIL-23というサイトカインに対する抗体が炎症性腸疾患の治療によく効くという事で承認されているのだ。また、記事のコメント欄では過去に難病指定から外されたリウマチについての言及もある。リウマチに関しても同様に、IL-6という炎症性サイトカインに対する抗体が承認され、幅広く用いられている。

これらの様に、自己免疫疾患では新しい薬として抗体医薬品が用いられるケースが増えている。これは免疫疾患治療の難しさに起因する特徴であるが、今までの低分子医薬品による免疫抑制療法だと免疫反応全般が抑えられるため感染症などのリスクが高いのだ。抗体医薬品を用いることで、炎症に関する特定のサイトカインシグナルだけを抑えれば、その副作用を抑えることが出来るだろうというのが開発のコンセプトの1つである。一方で、抗体医薬品というのは低分子医薬品に比べると価格が物凄く高い。その為、医療費の削減という観点から考えれば、患者数が多い疾患については難病指定を外して医療費を削減したいというのが行政の考えにあるだろう。

医療補助という観点での難病指定というのは色んな問題があるため難しい議論なのだろうが、科学的に言えば決して根治する事の無い自己免疫疾患が難病ではないと言われるのは不条理だと思う。一度指定難病の一覧を見てもらえると分かるのだが、実際問題として、難病と言われる疾患の殆どは「神経系」に関する病気と「免疫系」に関する病気が非常に多い。これは神経系と免疫系が、人間に残された最後の2大ブラックボックスである証左でもある。同時に、神経系については一度死んだ神経細胞は修復されないという事実、免疫系については一度成立した自己免疫反応は消えないという事実が、それぞれの関連疾患の不可逆性の原因となっており、自己免疫疾患や神経疾患の苦しみは肉体的なものだけではなく、根治療法が無いという心理的な側面も大きく、指定難病から外される事による医療財政的な負担増は患者にとって深刻な問題であろう。

余談だが、神経系と免疫系が何よりも謎であるという事実は、新型コロナウイルスパンデミックにおいて非常に大きな問題を提示している。いつも言っている事だが、新型コロナウイルス最大の問題は神経系感染・神経症状であり、不可逆の神経系異常を避けるためには感染対策の徹底以外に方法が無いのだ。同時に、核酸ワクチンの使用は免疫系の強過ぎる活性化を引き起こし、自己免疫反応成立・自己免疫疾患発症を導くリスク要因となる。核酸ワクチンで発症した潰瘍性大腸炎についてはサイトカイン産生のプロファイルが通常と異なるとの報告もあり(下記)、治療法がより複雑になる可能性もある。総合的に言って、まともな医学的知識があれば新型コロナウイルスと核酸ワクチンは共に忌避すべき存在なのである。難病と呼ばれる疾患の理由と本質、発症後の治療の難しさと予防・回避する事の重要性、リスク要因の把握とその回避、現状の把握と最善の対応、あらゆることを科学的に考察し、正しい判断を続けていくことが重要である。

(参考)


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