【代表インタビュー】イミュー創業までの裏側
株式会社イミューでは「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行っています。代表の黒田康平さんにご経歴から創業までの裏側、現在の事業内容と展望について聞きました。
前編:イミュー創業までの裏側
後編:事業内容と今後の展望
◆ものづくり現場での経験
-まずは黒田さんのこれまでを伺いながら、イミュー創業にいたるまでの裏側を紐解いていきたいです。これまでどんなお仕事をされてきたのかも気になります。ご経歴を教えてください。
兵庫県出身で、大学の時は具体的な夢や目標を持たないまま過ごしているごく普通の学生でした。就活の頃になって「海外生活がしたい」「都会のキラキラした所で働きたい」という動機で東京の専門商社に就職しました。けれど、配属されたのは東京から離れた地方の工場。広い工場があるくらいなので周りには何もなくて、最初は「あれ?」みたいな笑
ー工場ではどんなお仕事をされていたんですか?
現場の作業員をまとめながら、特殊鋼の溶解から鍛造、機械加工、検査出荷までの一貫工場で、生産管理という現場の方々の製造順番や進行をフォローし納期管理をする仕事でした。現場は3交代で24時間稼働に対し、生産管理は1直のみと気合と根性で乗り切る状態。特殊鋼という非常に難易度の高い商材を扱っている背景もあって、常に工数不足で月150時間以上残業することもあったと記憶しています。現場で無理なお願いをしなければいけないことも多く、ベテラン作業員の罵声を浴びながら毎日お祭りのような環境で働いていました。
ー月150!それは過酷ですね
はい。でも工場の仕事のおかげでものづくりの裏側を知ることもできました。品質の規格が通らなくて、作業が0に立ち戻ることも珍しくありません。そのたびに知恵を出し合い、汗をかいている人がいるんです。世の中に溢れている製品だけを見ると気がつかないけれど、ものづくりの裏側にはこうして頑張っている人がいる、という当たり前の事実を身をもって感じることができました。
工場研修を経て晴れて営業の仕事となりましたが、私は自社がシェア100%の商材担当となりました。既に発注が見込まれているルート営業的な業務がほとんど。会社の仕事としてはすごく健全な状態ですが、学んだものが活きていないと感じ転職を決めました。
◆日本とメキシコを繋ぎながら考える、日本の一次産業とその課題
ーそこからものづくりに関係した仕事に進むのですか?
いやいや、当時そんなに建設的な考え方はできてないです笑 せっかくなら好きなことをという気持ちで建築を勉強して図面を書いたり、独学でHPやロゴ制作を始めてしばらくフリーランスで働いていました。
その時、渋谷でバーを作ろうとしていた友人が「図面を描いてほしい」と声をかけてくれたんです。最初は自分にできるホームページ制作と建築設計の所から、徐々に店づくりに深く関わらせてもらうようになりました。
渋谷店の月商は100万円程度と小規模でしたが、ひょんなことから2号店をメキシコに作ることになりました。また日本とメキシコに店舗を持っているという話が拡大解釈されて羽田空港にお店を持たないか、というお話をいただき出店するに至りました。
ーその事実だけでも当時の勢いを感じますね。
日本・日本の玄関・メキシコという特徴的な場所に拠点があったので、自然な流れで日本の良いもの、具体的に言うと酒や味噌などの食料品をメキシコに届ける事業を始めることになりました。お店作りの中で培った知見も上手く作用するのではないかと思ったんですよね。近隣のホテルに卸したり、日本の官公庁と手を組んでフードショーに出展したりしていました。
私たちのいたメキシコ、グアナファト州と姉妹都市である広島県や私の繋がりがあった大分県など、2-3週間滞在しながら、現地で生産者さんと会話したり、学生たちと一緒にメキシコのフードショーに出店する商品開発を行ったりしていました。日本のものづくりの現場を見れたことは重要な学びになっていると感じます。
ーイミューの事業内容については後編で触れますが、今されていることに近いですよね。日本の一次産業の課題を意識して、何とかしたいという気持ちが芽生えたのもこの頃なのでしょうか
そうですね。いろいろな生産者の方を訪ねてみてわかるのが、みなさん自分たちのつくる製品が素晴らしいと信じていて、手間暇を惜しまずピュアに「ものづくり」に取り組まれていることです。だから、商品について熱く語ることはできるけど「どんな人に届けたいのですか?」という質問には答えられないことが多い。ビジネス的な用語にしてしまうと「顧客設定」ができていないまま頑張り続けている生産者さんが大勢いて、そのせいで頑張った分の反応を十分受けられてない状況を知りました。
ー日本のものづくりは「技術はあるのに売り方がヘタ」という声を聞いたことがあります。製造業に限った話ではなさそうです。
この時の経験で、「日本の一次産業を元気に」という自分がやりたいことが少しずつ形作られていった気がします。
飲食店やメキシコへの日本酒卸事業に携わっていた時はマーケティングやメディア運営のポジションで経営に入っていたのですが、マーケティングをまかせてもらいながらも、芯を捉えられているかわからなくて。もう少し専門的に学ぶためマーケティング会社で働いたり、他にも他業種に転職して経験を積みました。
渋谷のIT会社でウェブマーケティングを学んでいたときの業態は通販でした。主に化粧品や健食のサプリメントがメインの商材で、商品開発というよりはコミュニケーション開発でした。ニーズをうまく掴めばとにかくよく売れる。売れるんですが、商品が出た途端に類似製品がでてきて、じゃあ次の商品をピックアップして・・・といういたちごっこのような状態に陥ってしまいました。そうなると自分たちの努力が資産になりづらく、活動が再現性のあるものになりにくい、つまり投資ができないんですよね。
新しいコミュニケーションを考え続ける楽しさはあるのですが、事業活動としても世の中を豊かにする、誰かを幸せにするといった本質的なものにリソースを向けづらいと感じていました。
商品を売るにはいろいろな方法がありますが、ものづくりを頑張る生産者を支えるためにはリサーチや広告などコミュニケーションだけ頑張るのではなく、商品そのものの価値を高める必要があると感じていました。また商品とコミュニケーションは双方で相乗効果を出していけるものなので、通販業態での経験は商品そのものの価値を高めるという文脈でも非常に活かせるという自負がありました。そういう流れの中で、飲食店時代からの仲間だった田中と一緒にイミューを立ち上げることになりました。
イミューの事業内容について。後編へ
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